苦戦を強いられた第4クォーター、突如として真価を発揮
2021年4月に左膝前十字靭帯断裂の大ケガを負い、昨シーズンを棒に振ったナゲッツのジャマール・マレーは、ここまでルーキーシーズン以来の低調なスタッツとなる15.3得点、フィールドゴール成功率41.6%とブランクを感じさせるプレーが続いています。2年連続でシーズンMVPに輝いたニコラ・ヨキッチに強力な相棒が戻ったからには、ナゲッツはリーグトップを狙えるチームになるはずですが、5勝3敗はマレーがいなくても残せそうな成績です。
11月3日に行われたサンダーとの試合でのマレーは、キャッチミスやドリブルミスを繰り返しターンオーバーを喫することもあれば、ダブルクラッチに行ったもののジャンプが足りず放り投げるだけのシュートになったりと、試合序盤からミスのオンパレードでした。
それ以上に酷かったのがポイントガードとしての判断力で、相棒ヨキッチとのツーメンゲームが綺麗に成立したにもかかわらずパスのタイミングを逸することもあれば、ディフェンスを自分に引き寄せたのにパスコースを見つけられずに袋小路に迷い込むプレーもありました。
ブランクによって身体のキレが戻ってないことは想定されていたものの、ここまでプレー判断が悪くなっているとは想像もできませんでした。このレベルであれば、マレーとヨキッチでプレーシェアするよりも、すべてをヨキッチに託したほうが効率が良いほどです。実際に前半はヨキッチのパスが冴えわたり、サンダーのディフェンスの逆を取り続けての8アシストを記録。ナゲッツはヨキッチを起点としたオフェンスで71得点を挙げ、大量14点リードを奪いました。
しかし、第3クォーターになるとハードにパスに食らい付くサンダーのディフェンスにヨキッチが捕まり始め、反撃を浴びます。このクォーターだけでヨキッチが7つものターンオーバーを喫してしまったように、やはり1人でのプレーメークには限界があり、ナゲッツはあっという間に逆転を許しました。
流れは完全にサンダーにある中、ヨキッチをベンチで休ませている第4クォーター序盤、マレーはそれまでのプレーが嘘のように、かつての姿を取り戻します。ゆっくりとハーフコートオフェンスをセットし、スペースを作ってからスクリーナーを呼ぶと、急加速からのスピンでディフェンダーを引き離してフェイダウェイを難なく決めると、次はスピードで抜き切ってヘルプに来たディフェンダーにコンタクトしながらのリバースダンクでバスケット・カウントをもぎ取ります。さらにアイソレーションの形に持っていくと、ゆっくりしたモーションから突然のステップバックで3ポイントシュートを決めて、リードを奪い返しました。
キレのあるスピン、相手を抜き切るスピード、ファウルを受けながらダンクを決めるジャンプ力、相手の虚をつく緩急。かつてのマレーを思い起こさせる突然の復活劇は、サンダーに傾いていた流れを一気にひっくり返しました。その後、マレーがベンチに下がってもリズムを取り戻したナゲッツはリードを広げ、そして残り3分にヨキッチのキックアウトを受けたマレーの3ポイントシュートで決着を付けました。
追い込まれたことで迷いがなくなり、タフショットでも関係なく決めていく姿は『プレーオフでのジャマール・マレー』を思い出させるものでした。前半のプレーを見る限り完全復活にはまだ時間がかかりそうですが、緊迫した場面になるほどステップアップしていく強いメンタリティは色あせていません。