杉浦佑成

文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

指揮官も称賛「とても素晴らしい仕事をした」

昨夜行われたサンロッカーズ渋谷とシーホース三河の一戦は、トランジションオフェンスで流れをつかんだSR渋谷が逆転勝利を収めた。

最終クォーターに12得点を固め、ディフェンスでも奮闘した杉浦佑成は紛れもなく勝利の立役者だった。4点ビハインドで迎えた最終クォーターにミドルシュートで勢いを与えると、残り7分30秒には同点に追いつく3ポイントシュートも沈めた。またプレッシャーがかかる試合の最終盤には、4本のフリースローをすべて成功させ、ファウルゲームを乗り切り勝利を決定づけた。

それでも試合後の杉浦は「金丸(晃輔)さんにやられないようにしようということだけを考えてやっていて、チャンスが来て思い切り打てたのは良かった」と、勝利に直結するオフェンスでの貢献よりもディフェンスを語った。

「ノーヘルプくらいので勢いでもいいと言われていたので、とにかく離れないこと」を意識するも「スクリーンがバンバン来るので、ぶつかって、走って、考えて、かなりキツかったです」とディフェンスの苦労を明かす。

結果的に金丸には17得点を許したが、勝負どころの第4クォーターでは無得点に封じた。また終盤には1試合平均20得点を超える三河のスコアラー、ジェームズ・サザランドのマークも務めた。伊佐勉ヘッドコーチは相手のオフェンスを重たくする狙いで、あえて杉浦にマッチアップさせた。「ちょっとレベルが違うので守れるとは正直思わなかった。でも僕が想定していたファウルの使い方、ファウルのタイミング、ファウルをしない守り方というのは、とても素晴らしい仕事をした」と、不利を承知のマッチアップでも堂々と戦った杉浦のプレーを高く評価した。

杉浦自身も「まだファウルをしてなかったので2、3回はファウルできるという意識がありました。早い段階で2個使ったという気はしますが、イージーにやらせなかった点で悪くなかったです」と、この部分には手応えを得た様子。ファウルをせずにしぶとく守ることで、逆にサザランドからテクニカルファウルを誘発したことも、杉浦のディフェンスが良かった証明だ。

杉浦佑成

「チャンスがくるまでコートにいることができた」

三河の鈴木貴美一ヘッドコーチからすれば、杉浦は甥となる。ただ、鈴木ヘッドコーチはそうした関係を抜きにして、杉浦をこんな表現で評価する。「彼は若くて、大学時代に実績がある。ああやって使っていけば若い選手はうまくなるし、使われなければうまくなっていかない。そういった意味では成長したと思うし、結果を出した」

ここで言う「結果を出した」はシーズンハイの12得点というスタッツが大きいはず。それでも杉浦自身がディフェンスでの働きを強調するのは、SR渋谷がディフェンスを大事にするからに他ならない。「ディフェンスがやれなかったらすぐに代えられていたと思います。結果的にチャンスが来るまでコートにいることができたのは、ディフェンスが良かったからかなと」

杉浦の12得点はすべて最終クォーターに記録したもの。ディフェンスが良かったからこそ最終クォーターの勝負どころを任され、巡って来た得点の機会をモノにすることができた。この結果に杉浦も「ディフェンスマインドで入ったら自分自身が落ち着けると分かったので、そこは良い勉強になりました」と笑顔を見せた。

大学バスケ界のスター選手であるため、彼に寄せられる期待は大きい。昨シーズンは思うような結果を残せず、今シーズンに懸ける思いは強かったが、なかなか活躍できない日々が続いた。ようやく昨日、目に見える結果を残せたのは彼にとって大きなステップのはずだが、「これを続けることが一番大事なので一喜一憂してられないです。試合はすぐにやってくるので」と杉浦は表情を崩さない。

そこに『期待のルーキー』の面影はなく、『プロ』としての表情があった。覚醒の時は近い。