「イニシアチブを取り、内容的にはすごく良かった」
第3節までアウェーでの戦いが続いた宇都宮ブレックスは、4節目にしてホーム開幕戦を迎えた。ブレックスアリーナに駆けつけたファンは満員御礼の4,415人を数えた。対戦相手は同じ東地区で、3勝3敗で並ぶアルバルク東京。田中大貴がコンディション不良で欠場ということもあり、宇都宮にとって負けられない条件が揃った試合ではあったが、惜しくも75-77で敗れた。
今シーズンから指揮を執る佐々宜央ヘッドコーチが「今までの試合の中では手応えあった試合だった。だからこそ、今日は勝ちたかった」と振り返ったように、序盤からリードを奪い12-4にしたところで、A東京にタイムアウトを取らせた。
第1クォーターでビハインドを背負うこともあった今シーズンのこれまでの戦いぶりと比較すれば良い入りだった。比江島慎も「良い入りでイニシアチブを取りつつ、内容的にはすごく良かった」と、佐々ヘッドコーチ同様に出だしの良さに手応えを感じていた。
第2クォーター開始直後、同点に追いつかれた宇都宮はタイムアウトを取り、比江島をコートに送り込んだ。そこから2連続アシストに加えて3点プレーとなるバスケット・カウントを記録し起用に応えたが、最終的に僅差でA東京が勝利した。
A東京の指揮官デイニアス・アドマイティスはこの一戦に向け、比江島対策を準備してきたことを明かした。「宇都宮のメインのオフェンスに対して、ディフェンスを確認し準備をしてきた。比江島を自由にプレーさせてしまったことが反省点。練習の中で比江島をいかに抑えるかを突き詰めてきたが、得点を取られてしまった」
比江島も対策されていることを実感していた。「今シーズンは昨シーズンよりも相手に対策されていて、シーズン当初は自分自身も戸惑うところがあった。どうやって回避していったらいいかというところも、チームと連動してやっています。相手がやってくることを分かっている中で、しっかり準備してきているので、今日は上手くできました」
最終的に比江島は5本中3本の3ポイントシュート成功を含む15得点に加え、6アシスト1スティール1ブロックショットを記録。終盤には、ライアン・ロシターをブロックした直後に3ポイントシュート沈め、会場を大きく沸かせた。
スタイル的に「他のチームよりもどうしても時間がかかってしまう」
もともと饒舌なタイプではないが、会見会場に現れた比江島は言葉少なく笑顔もなかった。試合の中では、チームとして評価できる部分も多々あり、個人の活躍だけを切り取れば悪くない試合ではあったが、やはり勝てなかったという悔しさがすべてであろう。
「久々のホームコート開催で、ブレックスアリーナは選手にとって特別な場所。優勝セレモニーも素晴らしかった。勝ってファンの皆さんに喜んでもらいたかったです。また明日あるので、皆さんの力を借りてやっていきたい」と、ファンへの想いを語った。
これで宇都宮は3勝4敗と黒星が先行したが、ディフェンディングチャンピオンとしてのプレッシャーや焦りは、比江島にはない。「他のチームに比べ、全員が動いて全員でボール触ってというチームプレーが僕らの売りではあるので、他のチームよりもどうしても時間がかかってしまう。1試合1試合確実に、着実に成長できています。もちろん勝ち星を重ねていかないといけないですが、焦らずに成長し続けられれば良いと思っています」
確かに昨シーズンもワイルドカードからチャンピオンシップに進出し、無敗で年間チャンピオンまで駆け上がった。レギュラーシーズンの勝ち星一つで順位が変動することがあると理解した上で、昨シーズンの経験から、目先の勝敗よりもシーズンを通じた成長を優先すべきと分かっている。
さらに比江島は「特に昨シーズンと役割は変わらない」と言い、自分自身がやるべきことを明確に理解している。「点を取りにいかないといけないですし、ドライブをしないといけない。テーブス海がいないこととジュリアン・マブンガが加入したことで、僕らもアジャストしないといけないという違いはありますが、僕の役割は変わりません」
佐々ヘッドコーチはオフの間に代表活動があった比江島が「正直、コンディションは結構悪い」と明かしたが、「その中で、今シーズンの最初から気持ちを出してやってくれているのはすごい」と評価するとともに、「比江島の負担を減らすチーム作りをしていかなきゃいけない」と考えている。
比江島の言葉と、それを支える佐々ヘッドコーチの想いを聞けば、重要なホーム開幕戦を落としたという事実も、チームの成長に繋がる一つの過程だとプラスに感じさせられる。最後に勝つことを知っている王者の、シーズンを通じたチーム作りに期待せずにはいられない。