文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

前日の敗戦のショックを振り払う、チルドレスの大仕事

横浜ビー・コルセアーズと三遠ネオフェニックスの第2戦。土曜の初戦は横浜の完勝に終わったが、この試合は全く逆の展開となった。

前日の敗戦を受け、三遠はスタートから気持ちが入っていた。鈴木達也はこう振り返る。「試合前に『プライドを懸けて戦おう』とチームで話しました。最初のパスエントリーからスピード感のあるプレーを心掛けました」

ジョシュ・チルドレスという強烈な『個』の加入は、フィニッシュまで素早く持ち込む三遠のスピードを削ぐという弊害もある。チルドレスはまだ、どことなく遠慮してプレーしている印象。それでも前日とはキレが違うパスワークで横浜を振り回すと、チルドレスの『個』が炸裂する。

開始早々にトラベリングの笛を吹かれたチルドレスだが、すぐにアジャスト。3ポイントシュートで初得点を記録すると、無駄のない動きで横浜ディフェンスの間にスルリと割って入り、高確率でレイアップを沈めていく。鈴木の3ポイントシュートをアシストした直後、スティールからそのままダンクを決め、タイムアウトを挟んで再びスティールからのダンク。さらにはリバウンドを奪ってからの攻撃が田渡修人の3ポイントシュートにつながり、一気に10点差まで突き放した。

まだ合わせなどの連携が全くと言っていいほど見られない状態でも、存在感は十分。チルドレスは力強いプレーで前日の敗戦のショックを振り払い、チームに勢いをもたらす大仕事をやってのけた。

キャプテンの負傷退場がチームメートを奮い立たせた

第2クォーターに入ると、体調不良でスタメンから外れていた川村卓也がコートに入って横浜が本来の勢いを取り戻し、今度は三遠が受け身に回る。ジェフリー・パーマーとの連携を止められずに川村の得点を許し、10点のリードがあっという間になくなり29-29と追い付かれる。

第2クォーター半ばには、岡田慎吾がスティールから得点を狙ったプレーでディフェンスされ、ゴールの支柱に激突。そのままプレー続行不能となるアクシデントも。ただ、キャプテンの負傷退場がチームメートをさらに奮い立たせた。

42-36と三遠の6点リードで後半開始。大石慎之介、田渡が外から3ポイントシュートを決めれば、中ではロバート・ドジャーが強引なショットを次々と沈める。横浜も細谷将司が外、ファイ・パプ月瑠が中と得点するが、三遠のオフェンスを止められず差を詰められない。

第4クォーター、逆転を狙って川村にボールを集め、川村が期待に応えて得点を重ねていく横浜だが、三遠はチルドレスを休ませながらオルー・アシャオル、並里祐といったセカンドユニットが踏ん張り、2桁のリードを保って時計を進めていく。残り3分を切り、チーム11本目となる3ポイントシュートを田渡が沈め、85-68とリードを広げたところで勝敗はほぼ決した。

その後も三遠は攻め手を緩めず、鈴木と鹿野洵生も3ポイントシュートを決めて、最終スコア95-76で勝利した。

「今日はしっかり打てて、決めることができました」

三遠は26本の3ポイントシュートを放ち13本を沈め、実に成功率50%。第1クォーターに相手のターンオーバーから9点を奪う『足を生かした攻め』で主導権を握り、その後は高確率の3ポイントシュートを軸にしつつ、バランス良く得点を重ねた。得点95は今シーズン2番目の数字。ここからチルドレスを含むケミストリーが出来上がってくると考えると、末恐ろしいオフェンス能力を秘めていると言えよう。

鈴木はアップテンポな攻撃を演出しつつ、自らも4本の3ポイントシュートを含む20得点を記録。「いつも『コースが空いたら打つ』というのは意識しています。今日はしっかり打てて、決めることができました」と胸を張る。

三遠の藤田弘輝ヘッドコーチは「全体的にチームとしてのエナジーレベルが高く、自分たちのバスケットができたことに尽きます」と勝因を語る。「特に後半はエナジーレベルがあり、エモーショナルでもありました。岡田キャプテンのために勝つ、という試合でした」

その岡田は病院に運ばれて検査を受けたものの、大きな異常はないことが確認され、チーム関係者を一安心させた。

横浜の青木勇人ヘッドコーチは、スローペースでサイズを生かした横浜のバスケに相手を引きずり込んだ土曜とは対照的に、アップテンポに持ち込まれた試合展開を悔やむ。19得点を奪われたチルドレスについては「対策はしました。思い通りにいった部分もあり、上回られた部分もあります。あの手の長さがあって、あれだけのスピードで動かれると脅威です」と語る。

もっとも、収穫のある1勝1敗だった。体調に問題を抱えながらプレーした川村について青木ヘッドコーチは「ベンチスタートなので数字は出ていないが、キープレーヤーとして戦ってくれている」と心配していない。「追い付く部分もあったので、プライドを持って成長していきたい。まだまだウチはこれから。もっともっと良いチームになれると思っています」