ドレイモンド・グリーン

ウィギンズも契約延長、すでにサラリーキャップ大幅超過は確実

ジョーダン・プールにとっては目まぐるしい10日間だった。日本でのプレシーズンゲームから帰国して間もない10月5日の練習中にドレイモンド・グリーンに殴打され、その映像が流出したことで大騒動となった。グリーンは会見を開いて自らの行いを謝罪し、数日間の自主謹慎を経てチームに戻って来た。この間、プールはメディアの前に姿を見せず、沈黙を貫いている。

クラブがグリーンに科した処分は罰金のみ。背景に何があるにせよ一方的に殴られたプールとしては納得がいかないはずだが、ウォリアーズからプールには『報酬』が待っていた。『ESPN』によればウォリアーズはプールに4年1億4000万ドル(約200億円)の延長契約を提示し、近日中にサインするとのこと。またウォリアーズは27歳のアンドリュー・ウィギンズとも1億900万ドル(約150億円)で新契約を結ぶとされる。

プールは2019年のNBAドラフト1巡目28位指名の選手で、成功が約束されたタレントというわけではなかった。むしろドラフト時点での評価が高くなかったからこそ、スター選手の揃うウォリアーズでプレータイムを得て、結果を出した意義は大きい。ルーキーシーズンはウォリアーズが最下位に沈んだ年で、57試合に出場したもののインパクトは残せず、2年目はプレータイムを減らしてもいる。それでも3年目の昨シーズンは51試合に先発出場して18.5得点を記録。プレーオフではシックスマンとして活躍し、優勝に貢献して自身の価値を高めた。

ウォリアーズからすれば、ステフィン・カリーとクレイ・トンプソン、グリーンといった黄金期を築いた主力の後を継ぐプールの慰留はマストだが、サラリーキャップを大幅に超過する状況で大盤振る舞いはできず、どれだけの契約を提示するかが注目されていた。同じ2019年のNBAドラフト組では、ヒートで1年目から主力として活躍し続けるタイラー・ヒーローが今オフに4年1億3000万ドル(約180億円)で契約延長をしており、それより低い額に落ち着くと見られていたが、予想は覆された。

クレイ・トンプソンは今回のグリーンとプールのトラブルについて「時間が解決してくれる」とコメントした。サラリーキャップを大幅に超過する状況では、チーム内で年俸の奪い合いになりかねない。その緊張感が今回のトラブルの原因だとすれば、プールの契約延長が決まったことで万事解決となるのだろうか。

いや、そうはならないだろう。グリーンは謝罪会見で「僕は他の誰かのポケットにいくら入っているか詮索して妬むような人間じゃない」と話したが、人の感情はそれほど簡単ではない。プールは4年目だがグリーンはキャリア10年目で、ウォリアーズに黄金期を築いた実績があり、リーダーシップを発揮してきた自負もある。彼自身、強烈なプライドと反骨心を推進力にしてNBAで成功を勝ち取ってきた選手だ。

プールの年俸はまだルーキー契約の残る今シーズンこそ390万ドル(約5億4000万円)だが、来シーズンには3000万ドル(約42億円)以上に跳ね上がる。グリーンがプレーヤーオプションである来シーズンの契約を行使しても、その金額は2750万ドル(約38億円)でしかない。この状況をグリーンは我慢できるだろうか。本当の意味で納得できない限り、我慢は長いシーズンのどこかで限界を迎えるのではないだろうか。

用意周到なウォリアーズは、この問題への回答をすでに準備しているはずだ。今シーズンの時点でグリーンの役割を減らして若手への切り替えを進めること。ディフェンスの要、そしてチームを鼓舞するリーダーの役割はそう簡単には穴埋めできず、チームにとってリスクが大きいのは間違いない。

しかし、『Spotrac』の試算によれば、プールとウィギンズの新たな契約が始まる2023-24シーズンのウォリアーズの年俸総額はおよそ2億1600万ドル(約300億円)で、ラグジュアリータックスを加えた総額は4億8000万ドル(約670億円)となる。かつてボブ・マイヤーズGMが語ったウォリアーズが出せる最大予算の4億ドルを大幅に超過し、グリーンが契約最終年を行使すればさらに金額は膨らむ。来年オフには33歳になるグリーンに、彼のプライドを納得させる契約を提示するのは不可能だ。

殴打事件がなくても、ウォリアーズはいずれこの決断を下さなければならなかったのかもしれない。それでも、決断を踏み切る決め手になったであろうことは想像に難くない。