昨シーズンの弱点を補い、カニングハムの負担軽減へ

2021年ドラフト1位のケイド・カニングハムがスタッツ以上に大きな影響力を発揮し、個々のマッチアップが中心だったピストンズに、適切な状況判断で攻守に連動性をもたらし、昨シーズンはチームをカルチャーごと入れ替えてしまった印象すらありました。そして、今オフは『カニングハムを中心としたチーム構成』を追い求める補強になりました。

状況判断に優れたプレーメークでカニングハムがチャンスを作っても、ゴール下のフィニッシュが極めて弱いことが最大の課題でしたが、そこにドラフト13位のジェイレン・デューレンをトレードで獲得して強化しました。また、攻守でカニングハムに負担が集中していたポイントガードには、ドラフト5位でディフェンス力と得点力に優れたジェイデン・アイビーを指名したことで、プレーメーク以外の仕事を分担できるようになりました。ただし、いずれも素材型の選手であり、即戦力というよりは『将来の相棒』というイメージが強く、計算できる戦力となるには時間がかかるでしょう。

その一方で得点源のジェレミー・グラントを放出し、新たにボーヤン・ボグダノビッチを加えました。ともに1対1で仕掛けられるウイングですが、ボグダノビッチは優れたシューターでもあり、コーナーからの3ポイントシュートアテンプトはリーグで2番目に多い本数を記録しました。チームとしてリーグ29位だった3ポイントシュート成功率の向上が期待できるだけでなく、コーナーまで広く使ってスペーシングに優れたオフェンスへと変化しそうです。

トランジションでカニングハムとの相性の良さを示したマービン・バグリー三世と契約延長したウイングには、サディック・ベイ、ハミドゥ・ディアロ、アイザイア・リバース、ケビン・ノックスと若手が多く揃い、最も競争が激しいポジションになりました。ボールを持たずともハードワークで貢献できる選手をチョイスしている印象があり、ディフェンスと運動量でカニングハムを支え、プレーの選択肢を増やすことが求められます。

ピストンズは高い『バスケIQ』が特徴のカニングハムの周囲を、フィニッシュ力やハードワークに強みを持つ選手で固めてきました。それはカニングハムのゲームメーク能力が止められてしまうと、すべての機能が止まってしまうような構成でもあります。絶対的な信頼に応え、チームを進化させることができるのか、カニングハムにとって自分自身の価値を証明する2年目のシーズンになります。