エースとして強烈な存在感を見せるビクター・オラディポとペイサーズの小さな改革

2018/11/05
NBA&海外
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ビクター・オラディポ

文=神高尚 写真=Getty Images

チームワークとエースの個人技から、その一歩先へ

開幕10試合を7勝3敗と順調なスタートをきったペイサーズ。昨シーズン同様にディフェンスの強さを発揮し、ここまでリーグ4位の平均102.7失点はベンチメンバー含めた全員でハードワークするチームカラーを継続しています。8人が20分以上のプレータイムで負担を分け合うチームワークこそが最大の武器のチームは、昨シーズンとほとんど変わらないメンバーでより高い勝率を残すために、小さな改革を始めました。

それは弱かったオフェンス面の変化で、これまで多かったミドルシュートを減らしてイージーシュートを増やす取り組み。カットプレーやミスマッチを利用したポストアップなどに積極的にチャレンジしています。昨シーズンと比較するとミドルシュートのアテンプトが1.7本減り、ペイント内のアテンプトが2.2本増えました。これらは劇的な改善には繋がっていないものの、ペイント内得点を4.5点増やすなど、少しずつ成果を出しています。

ディフェンスが武器のチームが取り組むオフェンス改革は、劇的な変化を求めてはいないだけにもう少し様子を見ていく必要がありますが、注目度が低い中でプレーオフに進んだ昨シーズン同様に、虎視眈々と東カンファレンスの覇権を握るための準備を整えています。

昨シーズンはオールスターにも選ばれ、MIPを受賞するなど、エースとしてチームを牽引したビクター・オラディポは、チームのオフェンス改革を実現するためか、こちらも少しプレースタイルを変更しています。インサイドを効果的に攻めようとするチームメートにパスを回すことを優先し、逆に自分自身は3ポイントシュートを増やしてアウトサイドから簡単に打っていきます。またオフェンス優先のためにシューターやガードの選手が多いラインナップになるとリバウンドに積極的に飛び込み、ガードとしてはリーグで3番目に多い7.3リバウンドを奪っています。

チームワークが武器のペイサーズだけに、エースでありながらチームメートを支える仕事をしっかりとこなすオラディポ。その傾向は平均10.5点のうち3ポイントシュートで3.3点、速攻で3.8点を奪う試合の前半に強く出ており、リバウンドも4.5本を奪います。そして試合の後半になると「エースとしての仕事」を始めるのです。それは接戦になるほど色濃く出てきます。

11月3日に迎えた東カンファレンスの優勝候補セルティックスとの一戦。お互いが守り合う大熱戦の中で、リーグ屈指のエースストッパーであるマーカス・スマート相手にオラディポの勝負強さが存分に発揮される終盤の展開になりました。

2点ビハインドの第4クォーター残り3分でペイサーズのオフェンスはオラディポのためにパスを出す選手と、オラディポのためにスクリーンをかける選手という構成に。マークを振りほどいてシュートを打ち3ポイントシュートを決めるも、同じく勝負強さで知られるカイリー・アービングに決め返される、エース同士のクラッチタイムの戦いが幕を開けます。

残り52秒1点ビハインドからステップバックのロング2ポイントシュートを決めて1点差にするも、再びアーヴィングに3ポイントシュートを決められ4点差にされます。1回のオフェンス失敗も許されない状況の中で、アイソレーションからドライブでフリースローを得て2点差に。セルティックスがタイムアウトをとって狙い通りのオフェンスを構築したものの、アーヴィングのゴール下シュートがわずかに外れるとオラディポがディフェンスリバウンドをもぎ取ります。

残っていたタイムアウトをコールせず、そのまま自分でフロントコートへボールを運ぶと、アービングをスピードで簡単に振り切り、迷わず3ポイントシュートを決め、残り3.4秒でペイサーズの1点リードになります。それまでセルティックスはディフェンスになるとアービングをベンチに下げていただけに、交代の機会を与えなかった判断もキーポイントでした。

タイムアウトを取ったセルティックスは、最後のオフェンスでジェイソン・テイタムのゴール下を狙いますが、このスローインをスティールしたのもオラディポ。ペイサーズが終盤に奪った13点はオラディポの10点と1つのアシストから生み出され、さらにディフェンス面でも勝負を決定づけるエースの大仕事をやってのけました。

この最後の勝負どころまでのオラディポは、リーグ最少失点のセルティックスに抑えられフィールドゴール14本中3本成功と大ブレーキになっていました。それでもチームは持ち味のディフェンス力と改革中のチームオフェンスで互角の展開に持ち込んだのです。

オラディポが欠場した7試合すべてで負けた昨シーズンを受け、オラディポに頼らないオフェンスの構築に取りかかっており、オラディポもチームメートを支える仕事を献身的にこなし、その成果は少しずつ出てきています。もう一歩上を目指すペイサーズとエースの貫禄を増すオラディポが目立った試合となりました。