文=大島和人 写真=B.LEAGUE

準備万端ではなくても『凄味』を見せたチルドレス

三遠ネオフェニックスは第8節を終えて10勝6敗と好調で、中地区2位につけている。富山グラウジーズは2勝14敗と中地区の最下位だが、20日の横浜ビー・コルセアーズ戦で『13』に及んだ連敗を止めたばかりだった。

外国籍選手オン・ザ・コートは三遠[2-1-1-2]、富山[1-2-1-2]で試合がスタートした。

三遠は、10分間で11ポイントを挙げたロバート・ドジャーの活躍もあり、順調に得点を重ねて24-15で第1クォーターを終える。NBAで通算391試合のキャリアを誇るジョシュ・チルドレスは先発から外れていたが、第1クォーターの残り3分10秒で登場。

藤田弘輝ヘッドコーチは「木曜に来日して、金曜はチームの約束事を説明するくらいの軽い練習しかやっていない。先週末の渋谷戦は出られずに見学して、今週の月曜は(チーム練習が)休み。火曜の練習でウォークスル-と、今日の朝のシューティングだけ」と彼のここまでの調整を説明する。

週末2試合がBリーグのフォーマットだが、23日は祝日ということもあって水曜日の開催。中2日の消耗があり、チルドレスの来日後はまだコンタクトを伴うメニューや、5対5のような実戦形式のメニューをしていなかった。ただ彼はそのような状態でもリバウンド、ドライブと『凄味』を垣間見せる。

ただ第2クォーターに入ると富山は山崎稜が3ポイントシュートを立て続けに決めるなどして追い上げる。残り2分10秒でビッグマンのアール・バロンまで3ポイントシュートを決め、残り1分39秒には水戸健史がジャンプショット。三遠は1点差まで詰められた。

しかし三遠は再びリードを拡げて、39-34でハーフタイムを迎える。田渡修人が『スリーポイント・ブザービート』を決め、悪い流れに区切りを打った。富山のボブ・ナッシュヘッドコーチが「ファウルをすればいいところでせずに、ビッグショットを決められた」と悔いる場面だった。

田渡はこの試合、4本の3ポイントシュートをすべて成功させている。

三遠を勝利に導いたのは『フリースローの差』

ポイントガードの鈴木達也は「悪い流れがあまり長くならなかった。自分たちでもう一回流れをつかんで立て直したところが、自分たちの今日の勝利につながった。悪い時間帯は我慢するしかない。しっかり一つひとつのプレーをやった」と展開を振り返る。そしてこう続ける。「勝負どころは第3クォーターだったと思う。そこで一気に突き放せたのは、しっかりとしたチームの力」

第3クォーターはビッグマン太田敦也の8得点の活躍もあり、三遠が59-46と再び点差を拡げた。

「第3クォーターの出足で、オン・ザ・コート1の時にしっかり自分が仕事をできて、点数を離せた。最後は少しグダって良くなかったんですけど、それでもしっかり点差を離せたことは良かった」と太田は振り返る。

太田が「少しグダって」と振り返るように、最後の1分強で25点差を16点差まで追い上げられる緩みはあったが、既に大勢は決していた。84-68で、ホームの三遠が富山を下している。

強いて言うなら三遠は試合の締めに加えて、宇都直輝、城宝匡史といった相手ガード陣に対するディフェンスにも課題が残った。三遠は鈴木達也、大石慎之介、並里祐と小柄なガードが多く、ポジションが同じでも身長面でミスマッチが起きやすい。

「ローポスト(ゴール下)で相手にミスマッチを突かれた。(Bリーグには)身長の高いガード陣がいるチームもある。ダブルチームだったり、任せてカバーで(インサイドが)少し顔を見せたり、手はあると思います」と太田は改善策も含めて説明する。

もちろん試合を通してみれば三遠が上回っていた。

富山のナッシュHCは「フェニックスが良い仕事をしたと思います。相手はフリースローを多くもらい、そこをしっかり沈めた。自分たちは半分以下しかもらっていない。それがこの試合の点差に影響した」と試合を分析する。三遠はチルドレス、太田らが富山のファウルを誘い、この試合だけで30本のフリースローを得ている。富山の14本に比べて2倍以上だった。

チルドレスは21分49秒の出場時間で、10得点13リバウンド(オフェンスリバウンド3本、ディフェンスリバウンド10本)を記録。跳躍力を生かして2つのブロックショットを決めるなど、魅せるプレーもあった。藤田ヘッドコーチも「ジョシュの日本で最初の試合を、チーム一丸となって勝って飾れてよかった」と総括する、三遠の快勝だった。