「自分が決めにいく気持ちでプレーしていた」
琉球ゴールデンキングスは、11月2日、3日と敵地でアルバルク東京と対戦。昨シーズンのBリーグ王者を相手に価値ある連勝を達成した。第1クォーターで26-10と突き放した勢いのまま押し切った67-53の第1戦に対し、昨日の第2戦は終盤までもつれる激闘となったがここでチームを75-69の勝利に導いたのが岸本隆一だった。
残り2分42秒で65-65の同点の場面、琉球はこの試合で12得点8アシスト4リバウンドを活躍するも直前に安易なターンオーバーを喫した並里成をベンチに下げ、代わりにこの勝負どころの攻撃の舵取りを岸本に託した。
その岸本は残り1分52秒にスクリーンを使ってのキャッチ&シュートで3ポイントシュートを沈めると、A東京にシュートを決め返され1点リードとなった残り39秒にはアイラ・ブラウンとのコンビプレーから再びの3ポイントシュートを成功させる。これが事実上の決勝弾となった。残り2分の時点まで、岸本はわずか2得点と存在感が薄かったのだが、最後の相手のファウルゲームに対するフリースローを含めた8得点を土壇場で荒稼ぎする千両役者ぶりだった。
この2本の3ポイントシュートについて、岸本は次のように振り返る。「フルさん(古川孝敏)やジェフ(エアーズ)とシュートが当たっている選手に繋げられたらとも思っていましたが、前が空いていたので決めに行きました。いろいろな選択肢があってどういう状況なのかを把握するより、自分が決めにいく気持ちでプレーしていたのが結果に繋がって良かったです」
「ちょっと自信を失いかけていたところがありました」
琉球はオフシーズンに並里、橋本竜馬と即戦力の司令塔を2人獲得。その結果として、これまで先発ポイントガードを務めていた岸本は、並里との併用による2番ポジションでの先発起用で開幕を迎えた。しかし、この新たなチャレンジにうまく適応できない面があり、途中から先発を外れるなど好調なチームにあって苦戦していた側面は否めなかった。
だからこそ、1番ポジションでの起用が主となるマイナーチェンジを経ての今節の活躍に「相手がA東京ですし、うれしいです。どこかでチームに貢献できていないという思いもあったので、安堵感も強いです」と胸をなで下ろす。
「ちょっと自信を失いかけていたところがありました。そこで今まで自分が何を積み上げてきたのか、もう一度、A東京戦に向けて自分なりに準備してきて、それが結果になりました。まだまだ詰めないといけないところはありますが、自分の感覚が間違ってなかったと思える2日間になりました」
「変に背負いすぎず自分らしくプレーできたらいい」
岸本における『今まで積み上げてきたもの』の代名詞は、3ポイントラインの数メートル後方から決める、文字通りの長距離砲。この持ち味をここ一番で発揮できたのは、彼にとって何よりも大きな意味を持っているのは想像に難くない。
今節は1番での起用法が目立った岸本だが、状況によっては引き続き2番ポジションでプレーすることもあり得る。「2番はサイズのミスマッチを突かれるのが課題ですが、やるしかないです。ディフェンスというより、オフェンスでどの部分で主導権を取るかが大事。ただ、もっとフィジカルにやっていく必要があります」と、2番で意識すべき部分を考えている。
振り返ればこの5シーズンほど、岸本はエースガードとして常にチームを引っ張っていくことを求められる立場にあった。だが、大型補強により今はベンチスタートとなり、「自分がダメな時には成、竜馬さん、石崎(巧)さんがいるので変に背負いすぎず自分らしくプレーできたらいい。そこは昨シーズンから大きく変わった部分だと思います」と意識は変わっている。
ただその中でも、「表現はあっていないと思いますが、悪い流れの時に出ることに喜びを感じるタイプなので、もっとそういう場面で仕事をしていきたいです」と、要所でチームを救える存在になりたいと強調する。チームに大きな弾みをつける必殺の長距離3ポイントシュートを武器に、ここ一番で仕事をする『ジョーカー』として岸本がすごみを増せば、琉球はチームとしてもさらに1ランク上にステップアップできる。それを実証した今回の2連戦だった。
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