前田怜緒

移籍1年目となった昨シーズンから攻守にわたって躍動した前田怜緒。しかし、周囲の印象とは裏腹に、本人にとっては様々な後悔が残るシーズンとなったという。長年の課題である「メンタルの浮き沈み」を克服し、チームをさらなる高みへと導ける存在になれるか。最大の挑戦が始まる。

「ターンオーバーは最低2、3回に抑えたい」

――2月にはアジア競技大会の日本代表候補合宿にも選出されました。どのような手応えを得ましたか?

やはり世界的に見ると日本は身長が低くて、高さで負けています。それを補うための走力もそうですけど、3ポイントシュートをトム(ホーバス)さんがすごく意識していて、3ポイントシュートを決められないと代表には呼ばれないんだろうとは思っています。そこは参加したことであらためてすごく大切なことだと思いました。

――開幕に向けて、特に力を入れて取り組んでいることはありますか?

3ポイントを中心としたシュートの決定力です。あとは、球際のところ。昨シーズンは僕のターンオーバーで本来の得点チャンスを取りこぼしてしまうことがありました。球際の強さや安定感、内外問わずに得点する力が必要ですね。

――前田選手がプレーする上で大切にしている数字や指標があれば教えて下さい。

スタッツは結構気にしていて、特に3ポイントシュートの確率とターンオーバーは意識しています。3ポイントシュートは1試合平均2、3本以上は少なくとも決めていかないと得点面では貢献できないと思いますし、ターンオーバーは最低2、3回に抑えたいです。いや、これでも多いと思うので絶対にしてはいけないという意識でいます。あとはフリースローですね。シーズンを通して90%以上を目指しています。

――直近2シーズンのフリースロー決定率は、ともに64.9%でした。

そうですね。これもメンタルが原因です(苦笑)。

――メンタル向上のために工夫していることはありますか?

精神的な安定を求めるというよりは、練習の取り組み方を変えていきたいです。例えば、自分の1つのミスで下を向かないことや、全体のミスが増えても縮こまらずに周りに気を配るというようなことを日ごろからやっていれば、試合でもその習慣が自然と出るというアドバイスをいただいているので、そこは練習中から気を付けています。

前田怜緒

「負けた時にファンのみなさんに何を伝えられるか」

――新加入のサイモン拓海選手と生原秀将選手はどのような選手ですか?

拓海はバカですね。バカというか……おもしろいです(笑)。去年はヤン・ジェミン(現宇都宮)と仲が良かったんですけど、拓海は元気だし、僕と年齢が近いので気が合うし、何を話してもすごくおもしい。日本語もだいぶしゃべれるのでいつも仲良くさせてもらっています。秀さん(生原)は長野の山とか自然が好きで、(熊谷)航さんを交えてオフの日にも一緒に過ごしたりするんです。まだ合流から2、3カ月くらいしか経ってないですけど、なんでもしゃべれるし、本当に尊敬できる先輩です。

――前田選手はアウトドア系の趣味があるとうかがっています。自然豊かな長野で過ごすオフは楽しそうですね。

長野、好きです!めちゃくちゃおもしろいです!

――今シーズンの信州が目指すバスケについて教えて下さい。

もちろん昨シーズンより、強い信州を目指します。ただ、プロとしてプレーする以上勝ちにこだわることも大切ですが、負けた時にファンのみなさんに何を伝えられるかというのは僕自身すごく大切にしています。敗戦後に「ダメだったね」と思われるのはイヤ。負けても「あの選手頑張っていたよね」とか「あの選手からすごく気合を感じたな」とファンに思ってもらえるようなチームになろうという気持ちは、選手全員が持っていると思います。

――目標を成し遂げるために、前田選手は何をしたいですか?

プレー自体は昨シーズンとあまり変わらないと思います。僕がコーチから求められていることはメンタルの部分であったり、周りに与える影響を考えながらプレーすることです。チームメートに良い影響を与えられるようになった先に、チームがファミリーと言えるような形になるといいと思います。強いチームは一体感があるし、どんな時でも全員で目標に迎えるチームが上位クラブなんだということは、昨シーズン実感しました。僕たちもそれができるようにならなければ、チャンピオンシップ出場も日本一にも全然届かないと思うので、自分もチームも、まずはそういうところから意識していきたいです。