篠山竜青

前節に連敗を止め「ホッとしました」

川崎ブレイブサンダースにとって開幕からの1カ月は、まさに波乱万丈の期間だった。B1の先出し開催となった千葉ジェッツとの第1節は、大黒柱ニック・ファジーカスが欠場しながら連勝。特に2試合目は途中で20点差以上のリードを許しながらもひっくり返す劇的な勝利だった。

だが、ここからチームは予想外の低空飛行を強いられた。戦列復帰を果たしたがコンディションは万全でないファジーカスがベンチスタートとなり、とにかく点が取れない。10月21日のアルバルク東京戦ではわずか46得点、26日の琉球ゴールデンキングス戦に敗れて4連敗となった。

27日の琉球との第2戦、チームを苦境から救ったのは、シーズン初先発となったファジーカスだった。エースが28得点を挙げる活躍で75-72と競り勝った。ようやくの連敗ストップを果たした直後、チームリーダーの篠山竜青は「ホッとしました」とまずは安堵した。

「単純に、みんな苦しんでいたと思います。チーム全体としてもシュートが入っていない状況、過密スケジュールで練習する時間が思うように取れませんでした。映像を見て話しながらやっていくしかない状態だったので、そこがすごくしんどかった。勝てて良かったです」

篠山竜青

「苦しい時こそ本性が出る」でチームの一体感を確認

川崎はファジーカスと辻直人の2枚看板を軸に、リーグ随一の攻撃力を誇るチームだ。それがこの連敗中の得点は67点、46点、56点、60点と、自分たちの強みであるオフェンスの沈黙が続いた。この状況を篠山は次のように振り返る。

「長い目で見れば、ここから良くなることは間違いないです、そこは本当に自信を失っちゃいけないところでした。まだ連携が足りていない状況で、シェーン(エドワーズ)もバーノン(マクリン)もいろいろなことができるので、それをみんなで生かそうとの考えが空回りしてしまう。その結果、誰の持ち味も出せない状態が長く続きました。焦っていなかったと言えば嘘になります。とにかく早く1勝が欲しいという気持ちの中で得点が伸びないというのはもどかしく、苦しいところもすごくありました」

苦しい1カ月だったが、収穫もあったと篠山は感じている。この苦境にあってもチームの誰一人として後ろ向きにならず、チームの一体感が損なわれなかったことだ。

「雰囲気が暗くなることは全然なかったです。とにかく話をしながらやっていこうという前向きな姿勢を、みんな変わらずに持ってくれたのは、キャプテンとして心強かったです。苦しい時こそ人間の本性が出るじゃないですけど、そういう意味ではみんなたくましいと、あらためて思います。とにかく選手同士で話をしながら、一つずつ解決する姿勢をチーム全体として失わずに持ち続けられました。その部分で僕自身としては大丈夫だろうという手応えはありました」

篠山竜青

「苦しんだ分、11月でバンと飛躍できるように」

ファジーカスがいつもの先発に復帰した一方、篠山は開幕から続くシュートスランプが考慮され、27日の試合ではベンチスタートとなった。「もし自分がヘッドコーチだったらと考えると、もっと早い段階で先発ポイントガードを変えていたと思います。今のパフォーマンスだったら、本当に先発で出る資格はないと思うので、そこは受け入れられます」と語る。

もちろん、一刻も早く自身の調子を上げて、復調気配のチームに足並みを揃えなければならない。「全部、自分がコントロールしなきゃいけないとか、考えすぎている部分はあるんじゃないかという思いはあります。シーズンの中で1回か2回は、こういうあがいてもあがいても光が見えない状態はあるので、それをしっかり受け止めることです」

「チームはこれから良くなっていくと思うので、それに自分が取り残されないよう、しっかりプレーに集中して、もう一回いろいろな面で取り戻せるように一つひとつやっていくだけです。(藤井)祐眞の負担が増えてしまって申し訳ないですけど、しっかり自分と向き合ってやっていきたい」

5勝5敗で終えた10月を篠山は「苦しみ抜いた10月でした」と言う。「だからこそ、苦しんだ分、11月でバンと飛躍できるようにする。1日1日の練習がどれだけ大事かというのは皆、痛感したと思うので、良い11月にできるようにしっかりやっていきたいなと思います」

11月の平日開催は一度だけで、チームでの練習を重ねることができる。アルバルク東京、栃木ブレックスとそれぞれ2試合と厳しいスケジュールが続くが、そこで川崎がどこまで勝ち星を重ねられるか。当然、そこには篠山自身の復活も大事となってくる。