Bリーグ開幕2年目、3年目と連覇を達成したアルバルク東京だが、昨シーズンはチャンピオンシップクォーターファイナルで敗退すると、5シーズンに渡ってチームを率いてきたルカ・パヴィチェヴィッチが退任。今オフには元リトアニア代表ヘッドコーチであるデイニアス・アドマイティスを招聘して新たなスタートをきった。新体制で様々な変化が起こるA東京だが、その中でも変わらないのはチームの絶対的な中心選手である田中大貴の存在だ。攻守ともにハイレベルなBリーグ屈指のオールラウンダーである彼に、王座奪還の意気込みを聞いた。
「自分にガッカリした。もっとうまく自分ができたらという悔しさが大きかった」
――まず、昨シーズンの振り返りをお願いします。クォーターファイナルで島根スサノオマジックに第3戦までもつれて敗れた時はどんな気持ちでしたか。
シーズン終盤にケガ人が出てしまい、なかなか自分たちの思ったような形で進められなかったところはあります。試合後の会見でも言いましたが、1勝1敗になり第3戦で個人的にうまくプレーできなかった思いが強かったので、チームがどうとかシーズンが早く終わってしまったという感情より、自分にガッカリした。もっとうまく自分ができたらという悔しさの方が大きかったです。
――その後、ルカヘッドコーチの退任を聞いた時の心境を教えてください。
ヘッドコーチに限ったことではなく選手もそうですが、プロスポーツの世界にいる以上やっぱり結果が出なければこういうことは起こりうるものです。どちらかと言うと、そこに大きくとらわれないように個人的には考えてはいます。それでもルカと過ごした期間は自分にとってすごく大きな意味を持つ時間で、感謝しています。だからこそ結果論ですけど、彼との最後の試合があの第3戦になってしまったことで自分への失望感が大きかったです。もっとしっかり良いプレーをしたかったし、すごく残念という思いはあります。
──新体制となりますが、その中で継承しないといけない部分はどんなところになると思いますか。
今回、体制が変わる中でもガラッと変わるわけではないです。多くのスタッフ陣は残りますし、今まで自分たちが築き上げたものにプラスアルファで付け加えることができるのが、アドマイティスヘッドコーチだと思います。ハードワーク、ディフェンスの部分など、ルカが今まで植えつけてきてくれた大事な部分をそのまま継承しつつ、新しいものを取り入れていこうとなっています。そういうところは、ヘッドコーチが代わったからといって、根本から大きく変える必要はないと思っています。
──アドマイティス新ヘッドコーチは、どんな人物という印象ですか。
すごく選手にも気軽に話しかけてくれます。自分たちから何か伝えたいことがあったら、いつでもウェルカムな状況を作ってくれていて、すごく優しいというか柔軟な考え方を持っているヘッドコーチだと思います。
──同じガードとしてコンビを組む新戦力のジャスティン・コブス選手、藤永佳昭選手との連携はどのように手応えを感じていますか。
藤永選手は東海大の後輩でもともと知っているので、彼がどういうプレースタイルか分かっています。ただ、自分もそうですけど彼も新しいヘッドコーチの下でのプレーとなり、いろいろと個人でもどうプレーしたらいいのか模索していると思います。それはコブス選手についても同じです。ただ、頭の良い選手で新しいチームに適応する能力は高いと思います。これからもお互いにコミュニケーションを取ってうまくやってきたいです。
――A東京においても期待の若手である吉井裕鷹選手は、今夏に日本代表でも主力の一人として活躍していました。彼の代表でのプレーをどのように見ていましたか。
全ての試合を見ることが出来たわけではありませんが、もともと代表で活躍できる力は持っている選手です。自分の経験で言うと、代表はBリーグと違って独特な雰囲気があり、代表だからこその難しさはあります。それを経験し、日本のトップ選手たちが集まったチームで夏の期間を過ごせたことは彼にとってすごく大きかったと思います。渡邊雄太選手、馬場雄大選手などからも学べることはあったでしょうし、バスケットボールはやっぱり経験のスポーツだと思うので、代表での経験は彼をかなり成長させてくれるものではないでしょうか。
「1試合平均で10得点くらいの選手は他のチームにもたくさんいる」
──東京五輪後、代表引退を表明した田中選手にとって、オフシーズンは久しぶりに試合のない時期を長く過ごしました。コンディション面での影響はありますか。
代表に行っていたらトレーニングをできないわけではないですが、どうしても試合があるのでそれに合わせたものになってしまいます。このオフはしっかりと追い込んだトレーニングをして、身体をもう一度作り直したいという意味で良い期間を過ごせました。
代表に行っていれば試合の感覚を失わずに夏を過ごせますが、メリット、デメリットはそれぞれあります。ただ、自分は大学生の頃から代表に呼んでいただいていたので、精神的にも肉体的にも見えないところでの蓄積疲労はあったと思います。そこで一度リフレッシュ、リセットできたのは良かったです。
――今シーズン、個人的に意識したい数字はありますか。
得点は伸ばしたいですね。具体的な目安という数字はないですが、もっとシュート本数を増やしたい。自分はバランスを取りながらその時々に応じて状況判断をするタイプの選手ですが、それでもシュート本数にもこだわって常にアタックモードで行ける試合をどんどん増やしていかないといけない。長いシーズンの間、どれだけそれを保ち続けられるのかを一つ自分の新しいチャレンジとして意識しながらやろうかなと思います。
──アタックをよりする必要があると感じたきっかけは何でしょうか。
別にきっかけとかはなく、昨シーズンを振り返った時にちょっと少ないなと思ったからです。もちろんプレータイムが長い試合もあれば、短い試合もある。そこは相手によってバラバラだと思いますが、その中でも自分のリズムは大事にしないといけない。今シーズンに関しては多少、強引にでも自分がそういう姿勢をどんどん見せていく。結果としてそれを数字に反映させることができればいいのかなと考えています。
1試合平均で10得点くらいの選手は他のチームにもたくさんいると思います。そこから、もう1段階は頭を抜けられるくらいのイメージを持ちながら、どこまでやれるか分からないですけど根気強くそこを上げていければいいかなと思います。
「新しい変化が起こって自分たちにとってチャレンジするシーズンになる」
──今シーズンからホームが代々木第一体育館に変わりました。そしてお台場地区青海の新アリーナの計画も発表がありました。その辺りは何か意識することはありますか。
自分の考え方はあまり変わらなくて、試合を見に来ていただいているファンの皆さんに質の高いパフォーマンスを見せることが一番の仕事だと思います。ただ、自分たちはプロ選手としてプレーを見せることでお金をもらっているので、それは当たり前でもあります。
だから、こうやってホームの場所が移ったりする中でチームをもっと認知してもらえるように何をするべきか考えながらやっていくことも選手の責任で、自分たちはバスケットボールをやっていけばいいわけではない。最も優先するのはコートでしっかりしたプレーを見せることですが、フロントスタッフの皆さんがいろいろな仕掛けやアクションを起こしているので、そこで選手たちもやれることがあれば協力していかないといけないです。
──代々木第一体育館は満員で1万人が集まります。この大きなホーム会場をお客さんで埋めていくには、どういう部分を高めていかないといけないでしょうか。
まず、強いチームでありたいなと常に思います。ファンの皆さんに自分たちが応援しているアルバルク東京が日本で一番強いチームだと思ってもらえる存在であり続ける。そこはこだわらないといけない部分です。それに加えて今はSNSなどいろいろなメディアをうまく活用することで、多少なりとも初めて見に来てくださる人を増やせると思います。
そのためにはスタッフの方たちが考えてくれた企画を選手たちも手伝っていく。新アリーナ計画発表の会見でも言いましたが、アリーナができるまで3年間ある中で自分たちのバスケットのレベルも成長させないといけない。そしてクラブとしてのファンの皆さんの数などいろいろな面でも成長しないといけないです。
──ファンの皆さんにメッセージをお願いします。
ホームアリーナであったり、ヘッドコーチが代わったりと新しい変化が起こって自分たちにとってもチャレンジするシーズンになると思っています。そういう変化がある中でチームが順調に進んでいくのは、そう簡単なものではない。長いシーズン様々なことが起こると思いますが、その時その時でチームがバラバラにならずに同じ方向を向いて対処していく。そうして問題を解決していくことで最後に一番良いチームになっていきたいので、一緒に代々木で試合を盛り上げていただきたいです。そして昨シーズンまでと比べ会場の収容人数も大きく増すので、ファンの皆さんも友人や知り合いの方と一緒に試合観戦に来て楽しんでいただけたらと思います。