文・写真=鈴木栄一

先発復帰で28得点、琉球との第2戦を勝利に導く

10月27日、川崎ブレイブサンダースは75-72で琉球ゴールデンキングスに前日の雪辱を果たし、ようやく連敗を4で止めた。この窮地を救った一番の立役者は約32分の出場で28得点、9リバウンドのニック・ファジーカスだった。

8月に左足の手術を行い、チームに合流したのは開幕数週間前。コンディション不良から開幕節を欠場し、その後もベンチスタートが続いていたが、前日の試合で初めて30分以上のプレータイムを記録すると、この日はついにシーズン初の先発出場となった。

この試合でのファジーカスは第1クォーターで10得点、第3クォーターで12得点を挙げ、前後半のスタートに難があるチームの問題を解消。4クォーター中盤に2桁リードを追いつかれるも、そこから突き放す試合展開となったが、北卓也ヘッドコーチは「同点のところでドキドキしましたが、勝ち切れたのはセットプレーが有効で、良い判断で裏を突けたこと。そして、肝心なところでニックの絡みで得点を取れたことでした」とファジーカスの勝負強さを称えた。

開幕10試合目にしての初先発に、ファジーカスは「先発に戻れたことはエキサイティングだ。先発はベンチスタートより自分にとって居心地が良い」とご機嫌。「自分がベンチスタートの時はチームも苦戦していたので、このまま先発を続けていきたい。ここ3、4試合続けて第1クォーターはチームとして悪かった。だからこそ、先発で出て勢いを与えたかった」と語る。

「自分らしいプレーができて安心している」

また、連敗ストップに安堵したのかという問いに「ホッとしたのは試合に勝てたこともあるけど、それより自分のパフォーマンスについて、手術をする前の自分らしいプレーができたことに安心している」と語る。

開幕節を欠場した後、ベンチスタートで出場時間も制限され、これまでなら当然のように記録していた20得点が出せない。「この1カ月はキャリアで最も苦しいとまではいかないけど、かなり大変な1カ月だった。手術から復帰した後は、とても不安定な状態で、感触が良いと思っていたら、次の日には痛みが出ていることもあった。11月にはもっと状態が良くなることを望んでいる」と、ファジーカスは苦難の10月を振り返る。

調子が上向かないことに「もどかしさはあった」と語るファジーカスだが、一方で周囲の助言により冷静でいられたと感謝してもいる。「フラストレーションは、みんなが同じ方向を向いていることで軽減される。みんな僕にシーズン全体のことを考えるよう言ってくれた。三河戦では1得点だったし、滋賀戦、A東京戦でも良いプレーができなかったけど、それはシーズンの最後には誰も覚えていないだろう。先を考えることが大事で、シーズンにはアップダウンがあるものだ。これからをアップの時期にしていきたい」

だからこそ11月は、巻き返しの月にしなければならないと意気込む。「シーズンが始まってから十分に練習する時間がなく、自分の身体を絞ることができなかった。今週は平日開催がなく練習がしっかりできる。走り込みとトレーニングによってコンディションを上げていきたい」

これから川崎が貯金を増やしていけるのか、その最大の鍵は慣れ親しんだ先発復帰で早速、通常運転に戻ったファジーカスがこの調子をキープできるかだ。