ジョシュ・ダンカン

昨シーズンまで激闘を繰り広げたチームへの移籍「自分と家族にとって良い選択」

琉球ゴールデンキングスは9月10日、11日と仙台89ERS相手にプレシーズンゲームを行った。この2日間は今オフに加入した新戦力のお披露目となり、ジョシュ・ダンカンは攻守に渡って流石の堅実なプレーを見せ連勝に貢献した。

今オフ、琉球はチームの要だったドウェイン・エヴァンスが広島ドラゴンフライズへ移籍した一方で、昨シーズンまでリーグ屈指の強豪、千葉ジェッツの中心選手だったダンカンが加入した。ともに多彩な能力を持っているが、スピードに長けたエヴァンス、パワーに優れたダンカンとタイプが違うため、単純な比較をすることはできない。ただ、昨シーズンのファイナル敗退を乗り越え琉球がリーグチャンピオンになるためには、ダンカンがチームにしっかりフィットし本来の力を発揮できる状況にしなければいけないのは確かだ。

振り返れば琉球はチャンピオンシップのセミファイナル、天皇杯の準決勝など何度も大一番で千葉に煮え湯を飲まされてきた。中でもダンカンは、勝負強いプレーで琉球を苦しめてきた天敵と言える存在だった。プロスポーツの世界ではそこまで珍しいことでもないが、まさに『昨日の敵は今日の友』となる今回の移籍についてダンカンは語る。「自分と家族にとって琉球に入るのが良い選択でした。昨シーズン、ファイナルに進んだ良いシーズンを過ごしたチームに自分が入ることで、プラスをもたらしたいと思います」

そして、今回のデビュー戦について「これまでずっと対戦してきたので最初は少し変な感じで緊張した部分はありましたが、楽しんでプレーできました」と振り返ると、自身の役割をこう続けた。「インサイドだけでなく、アウトサイドでもプレーすることができ、チームメートとケミストリーを作っていける。自分はバランスを保っていける潤滑油のような存在だと思います。例えばインサイドで一緒にプレーするジャック(クーリー)とAD(アレン・ダーラム)との連携は良い学びができていて、これを続けていきたいです」

ジョシュ・ダンカン

強調するチームファーストの姿勢「チームの良い部分にフィットしていきたい」

桶谷大ヘッドコーチは、ダンカンについて同じ新加入の松脇圭志とともに「共通するのは外のシュートで、相手にとって脅威を与えてくれます」と期待を寄せている。「相手がインサイドアタックのヘルプに行けば彼らが空きます。ヘルプに行かなかったらジャック、AD、コー(フリッピン)がインサイドでシュートに行ける場面が出てくる。特に5対5になった時、相手にとって守りにくい選手というのが感じられました」

また、琉球の強みであるインサイド陣の起用法に厚みを与えてくれると語る。「ジャックがインサイドの選手をずっと守り続けるのは難しいですし、その意味でバックアップをこなせる選手がいるのは大きいです。彼はジャック、ダーラムの2人と組めるのでプレーの幅を広げてくれますし、それによってチームのバランスを保てます」

ダンカンはハイパフォーマンスを長年継続してきたリーグ屈指のビッグマンだ。自分がプレーしやすくなるよう周囲にアジャストを要求できるだけの実績を残してきたが、彼にそういったエゴはない。「自分は新たに加入する選手なので、すでにチームが持っている良い部分にフィットしていきたいです」と、自分がチームメートに合わせるのが当然と考える。

余談ではあるが、ダンカンといえば試合中には粛々と仕事を遂行していく冷静沈着な仕事人のイメージが強い。だが、9月頭に自身のインスタグラムでそのイメージを良い意味で裏切るダンス動画を投稿し、ファンを沸かせた。「新しいものを公開するかは、明かすことができないので待っていてください。皆さんを驚かすかもしれないです」と笑顔で語るが、次回作を期待せずにはいられない。

「今は選手、スタッフとのケミストリーを高めていくことにフォーカスしています。毎日、ハードワークをしてお互いを高め合っており、それを楽しんでいます」

開幕に向けての心境をこう語るダンカンは、日本人選手がハンドラーとして試合を作って攻めていく琉球のチームバスケットを一つ上の次元に高める貴重なピースとなる。そして新天地でも変わらずの高値安定のプレーを見せてくれると感じさせる今回のプレーシーズンだった。