バスケ強豪校の中でも文武両道で知られる福岡大学付属大濠で2016年にキャプテンを務めた鍵冨太雅は、卒業後に『スラムダンク奨学金』でアメリカへと渡り、ディビジョン3の大学でプレー。卒業後の進路は就職と決まっていたが、土壇場でプロバスケットボール選手を選択した。就職するつもりなのを承知で練習に招いてくれた茨城ロボッツが、彼の新たな挑戦の場となる。大濠の同級生だった西田優大、1学年下の井上宋一郎はすでに日本代表で活躍中で、U19ワールドカップで一緒にプレーした八村塁はNBAプレーヤーだ。鍵冨はプロ入りこそ遅れたが、アメリカで得た多くの経験を生かしてBリーグに挑む。
「バスケに全集中できる環境で自分を試したい」
──大学でのプレーで自信が持てたことで「もっとバスケがしたい」という気持ちが出て、それが今こうしてロボッツの一員になることに繋がりました。決め手は何でしたか?
バスケをやりたい気持ちはあっても、内定をいただいていたのでその会社に就職するつもりでした。その会社との面談する中で、バスケをしながら働く提案もいただいていたんですけど、「本気で働くなら、就職1年目にバスケをやるのは違うんじゃないか」と感じて、そこから「バスケをやるなら真剣にやりたい、そうなったら仕事はしてられない」とも思うようになりました。
そんな時にリッチ(リチャード・グレスマン、茨城ヘッドコーチ)が直接連絡をくれて、「興味があれば練習に来ないか」と誘ってくれたんです。それがきっかけになりました。
──この練習参加がきっかけで、プロ選手へと気持ちが傾いたんですね。
最初は就職することも伝えて練習に参加していたんですけど、何度か話をするうちに「バスケに全集中できる環境で自分を試したい」という思いが出てきて、最終的にチームのトライアウトを受けてロボッツの一員になりました。
──かつて日本リーグでプレーした選手だったお父さんには相談しましたか?
親からは「好きなことをすればいいよ」と言われる反面、「プロの世界でやっていけるのか」とか「活躍できなかったりケガをしたらすぐ選手生命は終わりだぞ」と言われてきました。でも、この夏のワークアウトをやっていた時に父が、僕の大学4年間で培ってきた技術を見て「上手くなったな。2年前だったらBリーグに行ってほしくないと思っていたけど、今だったら行ってもいいんじゃないか」と言ってくれました。
「やらずに後悔するよりも、やって後悔した方がいい」
──自分の心境としてはどうでしたか?
「仕事は引退してからでもできる」というのは、親だけじゃなく相談したいろんな人から言われました。そうするうちに「やらずに後悔するよりも、やって後悔した方がいい」と思うようになって、ロボッツに入ることを決めました。
──まだ開幕は少し先ですが、プロチームで練習してみて手応えはいかがですか。
初めてのプロを経験するので大変ですね。今まではチームで一番キャリアがあって上手い方だと自分では思っていましたけど、ここではプロで10年やっている選手やアメリカで実績のある選手と一緒にプレーするので、今までは無意識に力を抜いても上手く対処できていたことができなくなります。自分のムーブメントすべてを100%でやらなければいけないのがチャレンジだし、それが自分の成長に繋がると思ってやっています。
──福岡大学付属大濠を卒業してアメリカに行く年にBリーグができました。スタートして7年目のシーズンに、Bリーグに挑戦することになります。
そうですね。高校3年生の時に大濠の寮で開幕戦のアルバルク東京vs琉球ゴールデンキングスを見ていたのを覚えています。
──それからNBA選手が出てきて、ワールドカップやオリンピックもあって、日本のバスケのレベルは年々上がってきました。アメリカにいた鍵冨選手の目から見てどうですか?
アメリカに行く前と今を比べると、プロリーグに夢があると思います。昔はバスケは人気がないとか、トップ選手以外はあまり給料がもらえないとか、ネガティブなところが目立っていましたが、今ではかなり変わったと思います。
「人の意見を聞きながら自分で考え、判断して成長に繋げたい」
──Bリーグで対戦してみたい選手を一人挙げるなら誰ですか?
比江島慎選手ですね。テレビで見ていてもすごく上手いですし、なぜあれだけ上手いのかを直接見てみたいので、マッチアップする機会があれば是非やってみたいです。
──Bリーグでの挑戦がスタートしますが、現時点でのプレーヤーとしての自己評価は?
自分の強みは、点数も取れるし周囲のためにショットクリエイトもできるしリバウンドも取れる、オールラウンドに何でもできる総合力だと思っています。試合に出た時に、その時に必要とされるプレーを発揮できる選手になりたいです。
ただ現時点では、フィジカル、シュート力、ディフェンス力……すべてまだまだだと思ってます。入って1カ月も経っていないので慣れないことも多く、いろんな人の意見を聞きながら自分で考え、判断して成長に繋げたいと思っています。
先ほども話したように、相手が強くなればなるほど自分も成長できるチャンスがあると思っています。Bリーグに来ていきなり活躍できるとは全然思っていなくて、少しずつステップアップして今シーズン中には試合に出られるように頑張ります。
チームとしてはチャンピオンシップ進出を目指しているので、それに貢献できるように頑張ります。応援よろしくお願いします。