ニック・ファジーカス

シュートは不発だったがリバウンドやスティール、ナイスアシストで存在感を発揮

バスケットボール男子日本代表はワールドカップ予選Window4のカザフスタン戦を73-48で快勝した。この試合で一番の注目を集めていたのは、ワールドカップ2019以来の代表復帰となったニック・ファジーカスだった。大差がついた展開も影響しただろうが、21分40秒のプレータイムでフィールドゴール10本中3本成功の8得点に留まった。スコアラーの本領発揮とはならずに終わったが、ディフェンスでは8リバウンド3スティールと活躍していた。

ファジーカスは試合をこう振り返る。「前半はリズムが良くなくて、多くの3ポイントシュートを放つだけになっていました。ハーフタイムでもっとポストプレー、中に切れ込んでいくプレーをしようと話し合いました。そこから簡単にシュートを決めることができて、流れをつかむことができました。リバウンドを取ることでディフェンス面では、リズムに乗れていました。久しぶりの代表で勝つことができてうれしいです」

8月中旬にアメリカから日本に戻ってきたばかりでコンディション、ゲーム勘ともに万全ではない。さらに「チームは3カ月一緒に活動してきて、僕は合流してから2日だけ」という状況では、他の選手たちとの連携が中々しっくりこなかったのも致し方ない部分はある。ただ、それでも本人が言及したように、後半になるとインサイドアタックを増やすなど百戦錬磨のベテランらしく、しっかりとアジャストする修正力の高さを見せつけた。

「シュートを決めることができれば良い気分だった」と語ったように得意のシュートは不発に終わったが、西田優大にノールックの弾丸パスを通すなどスタッツ以上の存在感を示したファジーカスは今回の短い期間であっても旧知の仲であるボーバスの下でのプレーには居心地の良さを感じている。それは活動期間が単発的かつ短い代表チームでは簡単に得られないものだ。

「NBAにいた時、コーチとは気さくに話せるような関係ではなかったです。その後はずっと、アメリカを離れてプレーしているので同じバックグラウンドのコーチの下でプレーすることはなかった。僕たちにはたくさんの共通点があるのでやりやすいです。トム、コーリー(ゲインズ)、ジェフ(ジェフリー勝久)と一緒に話していると、自分がコーチングスタッフの一員になったような感じだった(笑)。トムと一緒のチームは、エキサイティングなことだし、プレーしていて楽しい。僕たちは、バスケの試合についてよく理解しており、これからもっと良くなっていける」

ニック・ファジーカス

「ニックがもう一回代表のユニホームを着たのは日本のバスケットにとって良いこと」

そしてホーバスヘッドコーチは、ファジーカスとの関係をこう補足する。「僕たちは同じコロラド出身で、高校時代の背番号は同じ22です。僕は高校時代に州のプレイヤー・オブ・ザ・イヤーに選ばれ、18年後にニックも同じく選出されています。僕は東芝でプレーしたことがあり、彼は今、(前身が東芝の)川崎ブレイブサンダースでプレーしている。ニックは僕の後をついてきているんです(笑)」。さらにホーバスが「僕たちの見た目が似ていると言う人たちもいます」と言うと、ファジーカスが「同じ髪型だからね(笑)とすぐに返す軽快なやりとりも見られた。

今回のプレーで、ファジーカスが帰化選手のファーストオプションになったのか。当然だがホーバスは「この短い間ではまだわからないです」と語る。ただ、ファジーカス仕様の戦術を導入するなど、重要なピースと考えていることは確実だ。ホーバスはこう語る。

「ニックがオフェンスで特別な選手なのは間違いない。今日はあまり入らなかったけど、このオフェンスはニックにピタリと合うと思います。ディフェンスは今日、ニックのオンボールディフェンスと他の選手のオンボールはちょっと変わりました。今日初めてそういうディフェンスをやったので、ちょっと迷っている部分はありました」

まだ、ワールドカップ本大会まで約1年あり、帰化枠についてもまだまだ試行錯誤の段階ではある。ただ、「とりあえずニックが一緒にもう一回ジャパンのユニホームを着たのは日本のバスケットにとって良いことです」というホーバスの意見には完全に同意する。そして日本代表に頼もしい選択肢が増えたことは間違いない。