ドノバン・ミッチェル

写真=Getty Images

リラード「2年目は可愛い弟のような扱いはされなくなる」

昨シーズンのジャズ躍進に貢献し、新人王争いを盛り上げたドノバン・ミッチェルが、『2年目の壁』に直面している。

今シーズンのミッチェルは、3試合に出場して平均19.0得点を記録。スタッツ自体は上々だが、昨シーズン残したインパクトを考えれば、少し物足りなさを感じなくもない。本人も、1年目の昨シーズンとは対戦チームの反応の違いを実感している。10月19日のウォリアーズ戦後、ミッチェルは「間違いなく違いはあるね。昨シーズンよりマッチアップする相手のフィジカルの部分が強くなって、イージーなシュートを打ちにくくなった。今は、よりタフなシュートを決めないといけない」と語っている。

キングスとの開幕戦でこそ24得点をマークしたが、ウォリアーズ戦ではクレイ・トンプソンの厳しい守備に苦しめられ、フィールドゴール23本中7本成功(成功率30.4%)の19得点に抑えられ、22日のグリズリーズ戦でもフィールドゴール17本中6本成功(成功率35.3%)の14得点と苦しんだ。ルーキーだった1年前と大きく異なるのは、相手のディフェンスの力強さだけではない。各チームのスカウトたちが1年分のデータを基に、十分にミッチェル対策を練ってきているからこそ、イージーなシュートを打つ機会が減っているのだ。

2008年に新人王を受賞したケビン・デュラントは、ミッチェルが直面している壁について、「ドノバンは、1年目からベテランのようなプレーを見せたけれど、彼は今も学んでいる最中なんだ。活躍した翌シーズンは、かなり期待される。でも彼は、スター選手になる道を歩んでいると思うよ」と、『Deseret News』に語った。「今シーズンはMVPになれないかもしれないし、オールスターにも選出されないかもしれない。でも、このまま努力を続けて、成長し続ければ、きっとその位置にたどり着ける」

今でこそリーグを代表するスター選手のデュラントであるが、プロ2年目の環境は今のミッチェルとは大きく異なる。2007年のドラフト全体2位でデュラントを指名したスーパーソニックスは低迷期にあり、彼にとっての2年目は本拠地をオクラホマシティに移転しての1年目で、周囲はプレーオフ進出を期待していなかった。走り始めたばかりのサンダーの若きエースが受けた重圧と、1年目から西カンファレンスで48勝34敗をあげ、プレーオフでもカンファレンス・セミファイナルにチームを導いた大黒柱のミッチェルが感じているプレッシャーには雲泥の差があって当然だ。

最近の選手でミッチェルに近い経験をしたのは、トレイルブレイザーズのデイミアン・リラードだろう。2013年に史上4例目となる満場一致で新人王に輝いたリラードは、2年目からエースの座に就いた。1年目は33勝49敗でプレーオフを逃したものの、2年目は54勝28敗を記録した原動力となり、チームをプレーオフに導いたリラードは、1年目と2年目の違いについて、『Deseret News』に次のように語っている。

「1年目の選手はリーグにとってサプライズのようなもので、周りは自分の力をリスペクトしてくれる。でも、それが続くとは限らないんだ」

「自分の場合、1年目には毎試合でミッドレンジからのプルアップを決められた。いつでもオープンな状態でシュートを打てたよ。でも2年目からは相手のスカウティングリポートのおかげで、自分に対する守備がタイトになった。相手チームのトップ選手が自分をマークするようになる。2年目からは可愛い弟のような扱いはされなくなる。相手は、自分を打ち負かしにくるし、守備の対象として優先されるようになる。そういう違いに対応しないといけないんだ」

期待される選手なら誰もが経験する道だが、スター選手への階段を昇れないケースもある。だがミッチェルには、支えてくれる仲間がいる。ミッチェルにとっての『兄貴分』であり、NBA5年目のジョー・イングルズは、その一人だ。彼は「ドノバンはチームにとって大事な存在。彼がボールを持つたびに、自分だけでシュートまでもっていかないといけない状況を作らせるのではなくて、周りにいる自分たちが良い仕事をする必要がある」と、サポートを約束している。

「まだ22歳なんだから、問題ないよ。これからも俺たちが彼を支える。昨シーズンもそうだった。昨シーズンに比べれば、相手からもさらに研究されるだろうけれど、彼なら問題ないさ」

1年目の大成功により高いハードルを越えなければならなくなったミッチェル。2年目の壁とどう向き合い、それを克服していくか、若きエースの挑戦は続く。