ブレイク・グリフィン

写真=Getty Images

「より多くのパンチを受けても耐えたチームが勝つ」

ピストンズはセブンティシクサーズとのオーバータイムにもつれる大接戦を制して開幕3連勝と好スタートを切った。中でも特筆すべきはエース、ブレイク・グリフィンのパフォーマンスだ。

昨シーズン途中にクリッパーズからトレードされたグリフィンは、シーズン後半戦の起爆剤になると期待されたがケガで十分なプレーができず、チームはプレーオフ進出を逃す結果に。仕切り直しとなる今シーズン、新ヘッドコーチに就任したドウェイン・ケーシーは、グリフィンをチームリーダーに指名するだけでなく、これまで以上にオールラウンドな働きを求めた。

ピストンズには不動のセンター、アンドレ・ドラモンドがいる。インサイドプレーに固執するのではなく、グリフィンのハンドリング能力と視野の広さを生かした『ポイント・パワーフォワード』としてのプレーを求めたのだ。

このシクサーズ戦、大きな点差は付かないがほとんどの時間帯で相手のリードを許す状況で、グリフィンはチームメートに声を掛けて鼓舞しながら、プレーでチームを引っ張った。第4クォーター残り3分、ジョエル・エンビードとダリオ・シャリッチの2人を引き付けてドラモンドのイージーダンクをアシストすると、今度は自らアタックしてシャリッチをかわし、カバーに来たエンビードからファウルを誘い、このフリースローを決めて111-110と逆転に成功する。

なおもクロスゲームが続き、残り1分を切って、因縁のあるエンビードと衝突したドラモンドが2つ目のテクニカルファウルで退場となり、118-120とリードを許す。しかし、シクサーズはこのテクニカルで得たフリースローを決められず、グリフィンはこのミスを見逃さなかった。ボールを託されたグリフィンはエンビードとの1on1を力で押し切り、120-120で試合は延長戦へと突入した。

オーバータイムに入って最初の得点はグリフィンの3ポイントシュート。相手ディフェンスはグリフィンのパスとアタックを警戒するため、どうしても外は甘くなる。この時もシャリッチがついていたが、距離は近くても打ってくるとは予想していないためシュートチェックが届かない。続いてはグリフィンがディフェンスリバウンドを拾い、そのままプッシュしてイシュ・スミスのトランジションスリーをアシストする。

ただ、シクサーズも優勝を狙うチームだけに簡単には勝負をあきらめない。JJ・レディックがドライブで切り込んでのバスケット・カウント、エンビードのスクリーンを使っての3ポイントシュートを沈めて猛追する。128-130で迎えた残り5.6秒には、3ポイントシュートだけは打たせないというピストンズの徹底した警戒を上回り、超タフショットとなる3ポイントシュートを決め、さらにはファウルも誘う4点プレーで、132-130と土壇場で再びリードを奪う。

それでも今日のゲームの主役はやはりグリフィンだった。ラストプレー、外でパスを受けたグリフィンは、味方にハンドオフでボールを渡すフェイクからリムに突進。相手のコンタクトを受けて体勢を崩しながらも片腕でのシュートをねじ込んだ。これで132-132の同点。バスケット・カウントのボーナススローも、ここまで10本中4本成功とフリースローの苦戦を回収する形で決めて、ピストンズが大混戦を制した。

グリフィンはキャリアハイの50得点を記録。このところ取り組んでいる3ポイントシュートはセレクション良く放ち10本中5本を決めており、さらに14リバウンド6アシストとフル回転の活躍だった。50得点という数字は並大抵のものではないが、それ以上にボールハンドラーとしてオフェンスを組み立て、自分で決める『コート上の支配力』は特筆すべきもの。試合終盤、ゆっくりとしたドリブルで上がるグリフィンに、地元ファンが立ち上がって歓声を送るシーンが見られた。チームメートだけでなく観客も、グリフィンは掌握しようとしている。

試合後のグリフィンは「戦い続けたよ」と語る。「今日はより多くのパンチを当てたチームじゃなく、より多くのパンチを受けても耐えたチームが勝つとみんなに話していたんだ。コーチ・ケーシーは素晴らしいプレーをセットしてくれて、シュートを打てと言ってくれた」

ただ、先はまだ長い。ピストンズは昨シーズンも開幕ロケットスタートを決めながら失速した。全盛期のパフォーマンスを取り戻したグリフィンを中心にチームとしてどう成長していけるかが重要だ。うまくハマれば、東の強豪へと一気にジャンプアップできるかもしれない。