トム・ホーバス

「ファンに自分たちが何をできるかを見せることができました」

男子日本代表はWindow3のチャイニーズ・タイペイ戦に89-49と圧勝した。相手は若手が主体かつ帰化選手も不在と、日本と同等、もしくはそれ以上にベストメンバーではなかったと言えるが、それでもオーストラリアに52-98と完膚なきまでに打ちのめされたチームにとって、大きな意味を持つ勝利となった。

会見で指揮官のトム・ホーバスはホッとした表情で試合を総括した。「私たちが何をできるかを日本のファンに本当に見せたいと思っていて、それが今日はできました。最初からディフェンスのプランをしっかり遂行し、ファストブレイクに繋げていけました。第2クォーターに少し流れが悪かったですが、最初から最後まで良かったです。試合終了直前にレイアップを決められらたことを除けばですね(笑)」

オーストラリア戦との違いについて、ホーバスコーチはまずコンディション面を挙げた。「オーストラリア戦、選手たちは精神面で入れ込みすぎていたと思います。最初の3分が終わった段階でもう息が切れていました。Bリーグでプレーオフに行っていない選手たちは4週間のオフがありました。ベストコンディションで合宿に来られない選手もいましたし、一度も練習試合をできずに今回の試合に臨みました」

オーストラリアという強度の激しい相手との実戦を一つこなしたことで、今日の試合は心身ともにより準備ができていた。また、ホーバスが称えたディフェンス面については、次の変更が効果的だった。

「オーストラリア戦ではテンポを上げようとフルコートのプレスを仕掛け相手のリズムを乱そうとしましたが、うまくいかなかったです。そして相手に一気にボールプッシュをされ、そこからオープンで3ポイントシュートを決められてしまいました。今日はトラップなどをやらず基本のポジションを維持するハーフコートのディフェンスをしました。それがとても効果的でした。オーストラリア戦のゲームプランは間違っていたかもしれないですが、これも学びです」

渡邊雄太

アジアカップ出場を明かした渡邊は「日本代表のために100%を捧げてくれます」

今回のWindow3、日本にとって目立つ収穫となったのがフル代表デビューを果たした若手の躍動だった。オーストラリア戦で18得点を挙げた富永啓生はこの試合でもチームトップの17得点を記録した。「多くの選手がフル代表デビューを果たしました。富永はオーストラリア戦で素晴らしいプレーを見せ、この試合でもインパクトを与えました。河村(勇輝)は5スティールを奪い、吉井(裕鷹)は3ポイントシュートを決め、テーブス(海)も良かったです。彼ら若い選手たちが経験を積んだことは、私たちにとって大きな進歩です」と、ホーバスコーチも新戦力の台頭に好感触を得ている。

次の代表ゲームは、7月12日に開幕するアジアカップ2022となる。大きな注目ポイントとなるのは、先日に自身のSNSで大会出場を明言した渡邊雄太だ。東京五輪以降では初めての代表合流となる日本の大黒柱についてホーバスはこう語る。「彼とはよく連絡を取っていますし、彼のような実力を持った選手は大きな助けになります。チームに自信をもたらし、勢いを加えてくれます。ここから日本に帰り、アジアカップまであまり時間はないですが、彼が合流してチームとして戦うためのゲームプラン、マインドセットを作っていきたいです」

今の渡邉はラプターズとの契約が切れてフリーエージェントと、新シーズンの去就は不透明な状況。その中で、ケガのリスクも当然のようにあり、各国が己のプライドををかけて戦う真剣勝負の場に参加してくれる渡邉について、指揮官は代表へのコミットメントを含めて全幅の信頼を寄せている。「彼は日本代表のために100%を捧げてくれます。100%の集中で自身ができることを何でもやってくれる選手です。彼と一緒にプレーできるのを本当に楽しみにしています」

そして「今の日本は世界ランキング38位でたくさんの若い選手がチームにいます。すべての対戦は私たちにとってチャレンジです」と、大会に向けて続けた。この中で勝ち進んでいくための大きな鍵は、やはり精神面だと指揮官は考える。だからこそ「今日の勝利は大きい」と強調する。

「もっとメンタルタフネスをつけないといけない。自分たちは良いチームになれる、自分たちのプレーができれば勝てると自信を持たないといけないです。今日は個人、そしてチームとしての強さを信じるための大きなステップとなりました」

今回の教訓を成長の糧とし、渡邊というリーダーの下、アジアカップでは心身ともによりたくましくなった日本代表を見せてもらいたい。