「誰かがいなくても補えるチームだと思っています」
10月17日、アルバルク東京は栃木ブレックス戦に敗れ、開幕からの連勝が4で止まった。
シュートアテンプト数が少ないこともあるが、菊地祥平は開幕からの4試合で4得点と奮っていなかった。それでも延長戦にもつれる激闘となったこの試合では10得点を挙げている。ただ菊地の強みは得点ではなくフィジカル色の強いディフェンスや、IQの高いプレーだ。
マッチアップした栃木の栗原貴宏をファウルトラブルに追いやり、得点が止まったシーンでは自ら仕掛けてファウルを誘発し、フリースローでつないだ。随所に好プレーを見せていた菊地だが、「要所でターンオーバーをしてしまったり、栃木さんの強みであるオフェンスリバウンドに対しての絡みというのが、もうちょっとやれていれば結果も変わっていたと思う。反省点のほうが多いです」とネガティブな言葉が多かった。
結果を別とすれば、田中大貴と小島元基が欠場する苦しい布陣でも栃木と互角以上に渡り合ったことは、A東京の強さをあらためて証明したとも言える。だが菊地は誰かか欠けた時こそ、勝たなければいけないと言う。
「田中と小島がいない中でも勝ち切らなきゃいけないと話していました。昨シーズン同様に、誰かがいなくても補えるチームだと思っています。そういう時こそ、勝ってチームのレベルを上げられるチャンスでもあるので、そういった意味からしても反省のほうが大きいです」
勝負の世界で『たられば』を言っても仕様がないが、同点で迎えたラスト1.7秒の、馬場雄大のフリースローが1本でも入っていれば……と考えた人も多いはずだ。
だが菊地はベテランらしい考え方と言葉で馬場を擁護した。「雄大が自分で1on1を仕掛けて、ファウルをもらってフリースローを得るということ自体、良い経験です。2本外して延長に入って負けるという結果もあいつをレベルアップさせる工程の一つだと思います。これを糧に雄大が2ステップくらいうまくなってくれれば、今日の負けは必要なものになってくると思う」
必要に応じて自分を鎮めるのも「チームプレー」
昨シーズンのルール改正によって、アンスポーツマンライクファウルに該当する項目が増えた。それに伴いアンスポーツマンライクファウルがコールされることが以前より格段に多くなった。接戦になればなるほどそのダメージは増し、時と場合によっては試合を壊すことになる。オーバータイム残り13秒、1点を追う状況でファウルゲームを仕掛けた菊地がアンスポーツマンライクファウルをコールされる。渡邉裕規にフリースローを2本とも決められ熱戦に終止符が打たれた。「アンスポじゃないつもりでファウルをしたんですけど、ビデオ判定してみた結果なので、こちらから言うことは何もないです」と菊地は多くを語らない。
納得していたはずもないが、冷静にコールを受け止める姿が印象的だった。「あそこで言ってもテクニカルを吹かれるだけ。それで吹かれたら今週末の試合に出れなくなるので」と被害を最小限にとどめた結果だと説明した。
「出場停止になって、田中だったりザックだったり雄大だったりに負担を大きくするほうがチームにマイナスだと思ったので。ベテランとしてチームファーストで考えなきゃいけないので、自分の中でセーブしました」
自分の感情をコントロールできない選手は決して少なくない。特に闘志を前面に押し出すプレーヤーであれば、それが悪い方向に出てしまいがちだ。だが菊地はそうした極限状況の中でも冷静に自分を鎮めていた。「チームプレー」と言葉で言うのは簡単だが、あそこで自制するのはそう簡単ではないはず。その姿に菊地の強さを見た気がした。