千葉での「ディフェンスだけのイメージ」からの脱却
阿部友和はキャリア11年目を富山グラウジーズで迎えた。まだ開幕から4試合を終えただけではあるが、約15分間のプレータイムで平均6.5得点を記録する上々のスタートを切った。彼自身も「自分の色をもっと出せる自由さがこのチームにはあると思っています。ノビノビやらしてもらっています」と手応えを感じている。
千葉では富樫勇樹、西村文男に続くポイントガードの3番手という立場。2人が攻撃で光るものを持つ選手である分、阿部はディフェンスから立て直したい時の選択肢となり、その仕事ぶりは十分にリスペクトされていたが、プレータイムは年々減少していた。「千葉ではディフェンスだけのイメージがあったと思います」と阿部は言う。「オフェンスも行けるイメージがもともとはあったはずなので、それを復活させたい。チャレンジですね」
阿部を含め、今シーズンの富山は8人の選手が入れ替わった。またドナルド・ベックが新たなヘッドコーチとなり、昨シーズンとは全く違うチームへと変貌を遂げた。
指揮官ベックが阿部に求めるのはゲームコントロールだ。「試合を落ち着かせて、僕が出ている時はみんなを同じページに立たせたい」と阿部は言う。『同じページ』とはチームケミストリーのことを指す。新外国籍選手のジョシュア・スミスやレオ・ライオンズ、日本人エースの宇都直輝など、実力も個性もあるメンバーたちを、同じ方向に向けさせるのが阿部の役割だ。
まだ4試合だが、3ポイントシュートや切れ味鋭くフィジカル負けしないドライブなど、すでにオフェンス面での強みは披露している。「僕のドライブはコントロールの中に入っている」と阿部が言うように、ただパサーに徹するのではなく、自ら仕掛けることで相手の的を絞らせないようにして、試合を支配しようとしている。
強豪になるために必要なエナジーの安定感
開幕節の横浜ビー・コルセアーズ戦に連勝と、幸先の良いスタートを切った富山だが、先週末の栃木ブレックス戦では連敗を喫した。それでも第1戦では大敗を喫するも、第2戦では終盤に逆転するなど、チームが持つポテンシャルは示した試合だった。
100点ゲームで敗れた第1戦に比べ、特にディフェンス面に進歩があり、「ディフェンスのエナジーが違った」と阿部は言う。だがそれに続いて「接戦になり、勝てそうな試合だからエナジーが上がっているようじゃ強いチームにはなれない」と、勝ちに慣れた千葉にいたからこその言葉が出てきた。
事実、強豪チームは総じてディフェンスが安定している。シュートは水物でありタッチに左右されるが、ディフェンスに調子の良し悪しは存在しない。どんな試合でも40分間、集中力を切らさずにエナジーを保つことは簡単ではないが、その波をいかに減らすかが今後の課題となる。
富山は連携面やディフェンスに問題を残しながらも、栃木を最後まで追い詰めた。スミスのインサイドやライオンズの1on1、宇都のトランジションや万能性。今はまだそれぞれが孤立しているかもしれないが、これが一つの形を成した時の破壊力はリーグ屈指のものになるはず。阿部も「これからハマってくれば、本当に僕たちを止めるのは不可能になると思います」とチームが持つポテンシャルに自信を見せた。
水を得た魚のように、ノビノビとプレーする阿部。「このチームをもう1ランク上げたい。シーズンが終わった後の結果で見せたい」というチャレンジの推移に注目したい。
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