本橋菜子

文=鈴木健一郎 写真=バスケット・カウント編集部、©WJBL

今夏、ワールドカップを戦った女子日本代表におけるサプライズと呼ぶべき存在が本橋菜子だ。代表初選出ながら先発ポイントガードに抜擢され、鋭いドライブと思い切りの良いシュートで世界の強豪チームのディフェンスを切り裂いた。今週末に開幕するWリーグでは、東京羽田ヴィッキーズに戻り、キャプテンとして代表での経験をチームに還元する役割を担う。昨シーズンはプレーオフ進出を逃したチームを一気にジャンプアップさせるべく、本橋菜子は燃えている。

「日本代表で成長した姿を見せたいです」

──日本代表での活躍もあり、注目度が増してシーズン開幕を迎えます。こうして注目されることをプレーヤーとしてどう感じていますか?

素直にうれしいです。今回、私が日本代表に選ばれてワールドカップに出場したことを、チームの地元の人たちもすごく喜んでくれました。これまでかかわってくれた人たちも、より一層応援してくれると思うので、その期待を裏切らないよう、日本代表で成長した姿を見せたいです。

──4月からつい先日まで、長い代表活動がありました。本橋選手は代表合宿への参加も初で、サプライズの存在でした。それは自分にとってもサプライズだったのか、もともと実力があったところで代表に引き上げられたのか、どちらだと感じていますか?

両方だと思います。これまでずっと積み上げてきた部分、自分の置かれた環境でやってきたものが評価されて代表合宿に呼ばれました。また4月からの代表合宿で積み上げた練習が自分の成長になってもいます。この半年間もそうですし、ワールドカップの大会を通しても課題はたくさん見付かったのですが、それだけ自分がまだ成長できるということだと思っています。でも自分の強みであるドライブでは、世界の大きい選手にも通用しました。そこは間違いなく自信になっています。

──日本代表合宿ではメンバーに生き残るための争いがあり、そこからは文字通りの『世界への挑戦』がありました。ドライブで切っていく選手として、190cmを超える選手を相手にする苦労はどんなものでしたか?

実際は国内でプレーするよりも、世界の大きい選手のほうが足がないので、スピードで勝てることが分かりました。抜いて行った先のゴール下でブロックされることに戸惑った部分があったんですけど、半年間それに対応するシュートのシチュエーション、技術を積み上げて、それで試合でもブロックされずにバックシュートに持っていったり、練習したことが試合に繋がったのは良かったです。

そのドライブフィニッシュは昨シーズンまでの自分との一番大きな違いだと思います。180cm、190cmを超える相手でも持っていける自信を持てるようになりました。

本橋菜子

「自分がどれだけやれるか、楽しみながら戦いたい」

──昨シーズンとは違う本橋選手がWリーグで見られそうですが、東京羽田はいかがですか?

昨シーズンからヘッドコーチが代わり、メンバーもまた新たに新人選手が4人入って大きく変わりましたが、私自身は代表でのバスケットとヴィッキーズが目指すバスケットはすごく似ていると思っています。私のプレースタイルは代表と変わらず、速いトランジションバスケットをやっていきたいです。チームとしても2年目で目指すバスケットが浸透していると感じるので、そういった部分を見せたいです。

2年前はプレーオフに進出して、初めてベスト8を経験して、そこを最低限のラインとしてステップアップしていこうと話していたのに、昨シーズンは10位に終わってしまいました。そこはすごく悔しい思いをしています。でもチーム体制が新しくなり、今までやってきたバスケットと大きく変わったので、そこに戸惑う部分も正直なところありました。それでも、やっていく中でベスト8に行った時よりもチーム作りは良くなっていると感じています。1年目は波がありましたが、この2年目は精度を高めてやっていきたいと思います。

──代表で一緒にやってきた選手たちと今度は戦うことになります。

ワクワクします。楽しみです。同じポジションでやってきた町田さん、藤岡さん、三好さんとは代表合宿中にもずっとマッチアップしてきました。負けたくないというか、勝負を楽しみたいです。所属するチームによって役割も違ってきますが、そこで自分がどれだけやれるか、楽しみながら戦いたいです。

──2020年の東京オリンピックに出場する可能性も高くなってきました。まだ先は長いですが、あっという間の2年だとも思います。自国開催のオリンピックに向けた抱負はいかがですか?

今回のワールドカップでそういう舞台を初めて経験させてもらって、自分はそのスタートラインに立てたと思います。でも、あと2年しかないという思いです。それを見据えて、自分の所属チームでこれから先も成長していけるよう、努力を続けていきたいです。

──最後にファンの皆さんへのメッセージをお願いします。

今シーズンは試合数が22と少なくなっているので、1試合1試合を大切にして戦っていきます。見ている人に楽しんでもらえるようなバスケットを一緒に作っていきたいと思っているので、応援よろしくお願いします。