桶谷大ヘッドコーチ

今シーズン、琉球ゴールデンキングスはリーグ新記録の20連勝をマークすると、最終的にリーグ最高勝率と見事な成績でレギュラーシーズンを終えた。コロナ禍でシーズン途中で打ち切りとなった2019-20シーズンを挟み3シーズン連続でセミファイナル敗退に終わっている琉球だが、今回こそファイナル進出と周囲の期待はかつてない程に大きくなっている。だが、チームはレギュラーシーズンとチャンピオンシップは全くの別物であると強調し、クォーターファイナル初戦に向けて危機感を強めている。9年ぶりの琉球復帰で結果を残した桶谷大ヘッドコーチにレギュラーシーズンの振り返り、チャンピオンシップへの意気込みを聞いた。

シーズン最高勝率のリーグ記録達成も「どの試合も簡単ものではなかった」

――まず、レギュラーシーズンの振り返りをお願いします。

今までキングスを強くしてくれてきたコーチ、スタッフ、選手、フロントの方たちがいて、まず西地区1位は絶対に成し遂げないといけないものでした。地区優勝を達成できたことはホッとしています。そして、常に自分たちがチャレンジ精神を持って成長するためのプロセスをしっかり踏めたのが良かったです。

――レギュラーシーズンの戦いぶりをどのように評価していますか。地区優勝の連続記録を途切れさせてはいけないプレッシャーはありませんでしたか。

広い視野で見るのを怠るとチームは強くならないです。目の前の結果ですべてが処理されるのは良くない。僕がキングスのフロントに求められたのはそれだけでなく、チームを強くしていくためのしっかりした文化を作る。幹の強い集団にしていくのが求められた仕事で、目の前の試合に勝つだけでなく、選手、スタッフともにやりがいのある集団にしていかないといけない。そこのプレッシャーの方が大きかったです。この仕事をやってほしいとフロントからも言われ、勝ち負けの結果と比べるとちゃんとできているのか判断が難しい中、それを継続してできるかが最も大変なところでした。

――振り返れば開幕前、難敵との対戦が続く序盤戦は負けが重なっても仕方ないというスタンスでした。しかし、実際は序盤から順調に勝利を重ねていきました。

どんな試合も簡単なものではなかったです。最初に(アルバルク)東京さん、(シーホース)三河さん、川崎(ブレイブサンダース)さんと続き、ここで6連敗することもありえると思っていました。4勝2敗でスタートを切れたらベストと見ていましたが、本当に4勝2敗でできました。また、今季初黒星となった三河さんに負けた試合は本当に内容が悪いもので、しっかり成長していこうとなりました。

タイミング的に見ても常に自分たちが成長できる試合が多かった。成長しやすいタイミングで負けたというのはありました。ケガ人が多く、コロナ禍とずっと戦っていることで万全のローテーションがなかなか組めない。選手たちが疲労困憊にもなりつつ成長しながら勝っていけたのは運もあったと率直に思います。

琉球ゴールデンキングス

「チャンピオンシップ1試合目を勝つのがどれだけ大事なのか、ずっと話をしてきた」

――経験豊富な桶谷ヘッドコーチですが、B1では初めてのチャンピオンシップになります。そこは気になる部分ですか。

この16年間に渡って勝ちも負け、酸いも甘いもいろいろな経験をしてきました。どんな舞台でも、コーチとしてやることは一緒だと思います。そして試合前、選手が迷いなくプレーできるような準備をするのが何よりも大事だと思います。

――チャンピオンシップは2戦先勝方式ですが、それでもチームとして初戦、特にクォーターファイナルの初戦でどれだけ良い入りができるのかを最も重視しています。その理由を教えてください。

レギュラーシーズンの勝率だけ見たら楽勝ではないか、と思われる方がいるかもしれないですが、そんなことは絶対にないです。いろいろな不確定要素があるので初戦が一番難しい。かなり準備して入らないといけないです。ここで良い入りができれば、その後もうまく行きやすいです。だからこそホーム開催権を勝ち取りたかったです。沖縄アリーナの応援を受けてプレーできることが大きな力となるのは、5月4日の千葉さんに勝った試合が示してくれています。

チャンピオンシップ1試合目を勝つのがどれだけ大事なのか、それはレギュラーシーズンを通してずっと話をしてきました。その中で天皇杯準決勝、一発勝負の千葉戦で負けた時、どうしたら負けるのかたくさん分かった部分がありました。これでチャンピオンシップ初戦への準備がしやすくなったところもありました。

――ヘッドコーチは去年、仙台89ERSでB2プレーオフを戦い、クォーターファイナルで西宮ストークス相手にアップセットを達成しています。その時の経験は、下位シードのチームが何を仕掛けてくるのかの対策で役に立ちますか。

一発勝負で相手が何をしたいのかは分かりやすいです。僕らもやられると思いますが、この選手にはやられてはいけないという作戦をより強調する。また、誰をファウルトラブルにさせてコートから追い出すとか、そういうメンタルゲームがかなりあると思います。そこは相手がやってきて当たり前だと冷静に対処することが大事です。

去年の経験でいうと相手の外国人選手が初戦で退場し、2戦目に出られなかったのが勝ち抜けた大きな要因となりました。そういうことがチャンピオンシップでは起こりえます。レギュラーシーズンと全く環境が違う中でいかに冷静にプレーできるのか。そこについてはずっと取り組んできました。今がその成果を発揮するタイミングです。

琉球ゴールデンキングス

勝ち抜く肝は「自分たちがコントロールできることをやり続けることです」

――あらためて間近に迫ったチャンピオンシップに向けて今、どんな心境でいますか。

チャンピオンシップは、レギュラーシーズンと全くの別物なので新しいシーズンという気持ちはあります。ただ、ここまでの経験をしっかりとチームに上乗せできている。こっちのシュートが全く入らない中、相手は入り続ける展開でも勝てる可能性が高いゲームにいかに持っていけるのか、そういうところは大分できていると感じています。4月30日の名古屋(ダイヤモンドドルフィンズ)戦で負けた時は、そこが疎かになっていました。ただ、今はここまで自分たちがコントロールできることをしっかりやれば勝てるという部分が見えてきています。

――これからのよりプレッシャーのかかるタフな試合を勝ち抜いていくための肝はどんな部分になるでしょうか。

自分たちがコントロールできることをやり続けることです。試合中にアジャストしたことをオフェンス、ディフェンスともチーム全員が同じ方向を向いて継続していく。そこで冷静さを失って混乱していくのが負けるチームの特徴なので、それを自分たちがやらないことです。

――自分たちのやるべき事を最後までやり切る。これが、できていたからこそレギュラーシーズンで多くの接戦をモノにしてきたと思います。そこに自信はありますか。

今のチームは、ブレない選手が多いです。特に岸本(隆一)はその意味で本当にすごいです。(ドウェイン)エバンス、(アレン)ダーラム、今村(佳太)にしてもやり切ってくれています。そこがしっかりしているので最後まで冷静に対処できる。また、相手の冷静さを奪ってくれる(コー)フリッピンみたいな選手もいるのは強みです。それこそ開幕前のキックオフミーティングから優勝するために必要なことをずっと話してきて、それをやり切るためのレギュラーシーズンだったと言っても過言ではないです。だからこそ、チャンピオンシップでもやり切りたいですし、それができなかったらもったいないです。

――ファンへのメッセージをお願いします。

ファンの皆さんの力が間違いなくチームの力になります。僕たちはファンの皆さんを含めた総合力を信じているので是非、会場に足を運んで欲しいですし、来られない方はテレビや配信で見て欲しいです。日本一になるため一戦一戦が大事なので初戦からキングスの応援をよろしくお願いします。