川嶋勇人

連敗を脱出し、久しぶりの感覚「今日はボールのフローも良かった」

秋田ノーザンハピネッツは京都ハンナリーズとの第1戦に79-58で勝利した。連敗を6で止めるとともに、クラブとして初めてB1で勝ち越しを決めた勝利となり、前田顕蔵ヘッドコーチも「全員で勝ち取れたというのは大きな意味がある」と語る、価値のある1勝だった。

この試合でMVPを受賞した川嶋勇人も「チャンピオンシップに向けて絶対に負けられない試合だったし、6連敗していてどうしても勝ちたかった試合だったので、率直に勝てて良かった」と安堵の表情を浮かべた。

川嶋は久しぶりにプレータイムが20分を超え、9得点5アシスト2スティールを記録。要所で3ポイントシュートを沈め、プレーメーカーとしての役割を全うし、インパクトを残した。ただ、突出した数字ではなかったため、初のMVP受賞は意外だったと言う。「田口(成浩)に『今日お前MVPあるんちゃう?』と言われて、ないやろと思っていたので。初めてでうれしいですけど、ああいうところでしゃべるのは苦手なので、極力選ばれたくなかったと思ってました(笑)」

川嶋がMVP受賞を予期できなかったの無理はない。この日の秋田はジョーダン・グリンがチームトップの20得点を挙げ、長谷川暢が13得点、田口が11得点と続き、得点だけを見れば川嶋よりも存在感を示した選手はいた。また、得点こそなかったものの、大浦颯太は13分の出場でチームトップの8アシストを記録した。

だからこそ、影のMVPを問われた川嶋は多くの選手の名前を挙げ、最終的に全員と答えた。「一緒に出ていた時間の長い暢とか、スタッツを見る限り颯太も良い流れを持ってきてるなって印象的です。僕的にはシュートを決めてくれるシューターの田口とフルさん(古川孝敏)がありがたかったです。でも、みんなです、スクリーンをかけてくれるアレックス(デイビス)もそうですし、絞れません」

前田ヘッドコーチは日本人選手の得点が伸びなければ勝てないとずっと言ってきた。今回のように多くの選手が活躍することが理想的な勝ち方であり、川嶋の発言はそれができていたことを暗に示していた。実際に連敗中とは違う感覚があったと川嶋は言う。「ディフェンスのコミュニケーションがすごく取れていましたし、自分たちが調子悪い時はオフェンスが止まってしまって、それがディフェンスに響いてしまうんですけど、今日はボールのフローも良かったです」

理想の勝ち方で連敗を脱出した秋田だが、チャンピオンシップに進出するためには一つも負けられない状況が続く。前節の茨城ロボッツ戦を落とした際には全体的に落胆を隠せなかったという。ただ、川嶋自身は「常に勝ちたいと思っているし、もちろん悔しいですけど、負けて落ちこんでも結果は変わらないので切り替えるしかない」と、一定のメンタルを保ち続けている。

反省は大切だが、敗戦をいつまでも引きずっていても良いことはない。そういう意味では、川嶋のようなメンタルでプレーできる選手の存在は心強い。「秋田らしい激しいディフェンス。あとは僕がクリエイトして、どんどん味方にシュートを打ってもらう。この状況を楽しみたいと思います」。秋田がチャンピオンシップ最後の1枠を勝ち取るには、川嶋のように逆境を楽しめる心の余裕が必要なのかもしれない。