ライアン・ケリー

文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

「守る側としては嫌なタイプじゃないかな」

アルバルク東京とサンロッカーズ渋谷の開幕戦は、終盤に逆転を繰り返す接戦となったが、73-71とわずかにA東京が上回った。SR渋谷にとっては惜しい敗戦となったが、この試合で最も輝いていたのは、新戦力のライアン・ケリーだ。3本の3ポイントシュートを含むゲームハイの28得点を記録し、前年王者A東京を相手に激闘を演出する立役者となった。

ケリーは「2週間前に娘が生まれて帰国したんだ。その遅れを取り戻そうと練習してきたから、1試合目にしては良い感触だったよ。勝てなくてガッカリはしているけど、ファンのみんなに追い上げる姿を見せられたのは良い経験になった」と試合を振り返った。

ケリーは211cmの長身ながら、3ポイントシュートを打てる広いシュートレンジを持ち、ポストアップからのフェイダウェイシュートなど、得点パターンが豊富なオールラウンドプレーヤーだ。「自分の技術や身長がアドバンテージになることは分かっていた。実際やってみて分かったし、これからはもっと多彩なプレーでチームに貢献できると思うよ」と自信をのぞかせた。

2ブロックショットを記録したディフェンス力も魅力だが、32分間の出場で2ファウルにとどめるバスケIQの高さも、チームとしては心強い。「コーチから角度、タイミング、スピードなど細かい指示を受けていて、自分はそれを体現する自信がある」とケリーは言う。

「自分の一番の武器は何でもできること。ただボールをもらうだけじゃなくて、自分が動くことによってスペースも空くし、そういう駆け引きもできる。守る側としては嫌なタイプじゃないかな」とケリーはその万能性を一番のストロングポイントに挙げた。

ケリーについて、「中も外もオールラウンドにできる選手。オフェンス面ではチームが必要としている得点源の役割を果たしてくれる」とコメントした、勝久ジェフリーヘッドコーチの期待に違わぬ活躍だった。

ライアン・ケリー

接戦を落とし「チームとしてカムバックしたい」

ケリーはデューク大学1年時にNCAAトーナメントに出場し、全米制覇を成し遂げた。その後はレイカーズから指名されNBA入りを果たした。初年度には59試合中25試合に先発し平均8得点を記録。翌シーズンは52試合中34試合で先発し平均6.4得点を挙げるなど結果を残してきた。BリーグでもNBA経験を持つ外国籍選手は珍しくなくなったが、ケリーの実績はその中でもトップクラスと言える。

またチームメイトのロバート・サクレはレイカーズ時代のチームメートでもある。昨日の試合では何度かサクレとのピック&ロールを披露した。「レイカーズの時から一緒にプレーしていたので、心地良くプレーできる自信はあった。うまくいったよ。シーズンが進むにつれてもっと良くなっていくと思うし、もっとプレーの幅を広げていきたいね」

デビュー戦にして、自身が持つ強みを存分に発揮したケリー。だが勝利はわずかに届かなかった。「勝負どころでのターンオーバーだったり、ボックスアウトをせずに馬場(雄大)選手にオフェンスリバウンドを取られたシーンだったり、細かいところでやられてしまった。それは個人ではなく、チームとしてのミスだ」とケリーは敗戦理由を分析した。

そしてケリーはこのように続けた。「勘違いしてほしくないのは、最後の場面だけにフォーカスするのではないということ。いろいろな場面で細かいミスがあったので、そこを少しずつ良くすることが重要だ。チームとしてカムバックしたいね」

Bリーグデビュー戦で自身の強みを存分に発揮しただけに、今後は他チームからのマークが厳しくなることが予想される。だがそれ以上に、ケリーとの連携面が高まった場合のSR渋谷の伸びしろに期待したい。過去2年は期待に応えられたとは言いづらいSR渋谷だが、飛躍の時は訪れた。