アルバルク東京

文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

ケリーがA東京の勢いを断ち切り、拮抗した展開に

3年目のBリーグ開幕戦、アルバルク東京は、ホームコートのアリーナ立川立飛にサンロッカーズ渋谷を迎えた。昨年のBリーグを制したA東京の完成度の高いバスケットと、新戦力が噛み合ったSR渋谷の一戦は、最後までもつれる激闘となった。

序盤は互いに持ち味の堅いディフェンスが機能し、守り合いの展開となった。だが13-14とA東京が1点ビハインドで迎えた第2クォーターに試合が動く。広瀬健太が早々に2つ目のファウルを犯しベンチに下がると、田中大貴がベンドラメ礼生とのミスマッチを執拗に突き、アレックス・カークとのピックでズレを作り、優位な状況を作り出す。田中はこのクォーターだけで8得点3アシストを記録し、A東京がこの試合で最大となる7点のリードを奪った。

それでも、A東京の勢いをSR渋谷の新戦力、ライアン・ケリーが断ち切る。211cmの長身ながら、内外どこからでも得点できるシュートレンジを持つケリーは、ファウルを受けながら3ポイントシュートを沈める4点プレーをまず披露すると、次にはトランジションからアウトナンバーを作り出して清水太志郎の3ポイントシュートを演出するなどリズムを作り出した。ケリーはその後もフェイダウェイなど難しいシュートを次々と沈め、このクォーターで11得点の荒稼ぎを見せた。

後半に入ると、互いにタイムシェアをすることで、常にフィジカルなディフェンス合戦となり、序盤のような守り合いが続いた。ロバート・サクレとケリーを中心とした攻めに手を焼くが、チームバスケットから6選手が得点したA東京が、13-11とわずかに上回り、52-49とわずかにリードして最終クォーターを迎えた。
ライアン・ケリー

安定したチームプレーでA東京に軍配

第2クォーター以降、常に5点差以内で試合は推移してきた。それでも最終クォーターに安藤誓哉と馬場雄大が連続でバスケット・カウントを獲得し、残り5分の場面でA東京が6点のリードを奪う。このままA東京が突き放すかに見えたが、SR渋谷はまたもケリーの活躍で逆襲する。合わせの中からケリーがフィニッシャーとなり、連続でフリースローを獲得してつなぐと、オフェンスリバウンドからゴール下のシュートを成功させる6連続得点で同点に追いついた。

そして残り1分25秒、ケリーにマークが寄った瞬間を見逃さず、ベンドラメが3ポイントシュートを沈め逆転に成功し、A東京はたまらずタイムアウトを要請した。

完全に勢いはSR渋谷だったが、ここで崩れないのが王者の強さだ。タイムアウト明け、A東京の強みであるピック&ロールから、フリーとなったカークがミドルシュートを沈め逆転。ベンドラメにタフショットを決め返されるも、田中のドライブに合わせたカークが3点プレーとなるバスケット・カウントを誘発し、残り24秒で2点のリードを奪った。

残り12秒、SR渋谷のエンドからのリスタートの場面。ケリーにボールを託すことができず、広瀬が3ポイントシュートを狙うがこれが外れ万事休す。最後まで粘られるも、ファウルゲームを乗り切ったA東京が73-71で激戦を制した。

アレックス・カーク

主力が変わらない強み「土台ができている」

勝利した指揮官のルカ・パヴィチェヴィッチは「6日間で5試合というハードなスケジュールだったアジアチャンピオンズカップから帰ってきて、タフなスケジュールの中で勝ち切った選手たちを誇りに思う」とコメント。アジアチャンピオンズカップに出場したことで、コンディションは万全ではなかったが、苦しみながらも手にした勝利に安堵していた。チームの完成度については「まだまだ40%くらい」と辛口評価だったが、「昨シーズンの経験があり土台ができているので、どうにかしのいでこれから上げていきたい」と先行きに不安はないようだ。

一方、敗れた勝久ジェフリーヘッドコーチは「インテンシティのあるゲームだった。サイズを生かしたプレーもあり、その連携を練習や試合を重ねることでスムーズにしていきたい」と語る。ファイ・サンバやケリーの加入でビッグラインナップが可能になったことでチームの引き出しは増えた。それでも「第2、第3クォーターは機能しない時間帯があった。もっとフィットする組み合わせを勉強していかないといけない」と今後の課題を挙げた。

拮抗した試合であればあるほど、一つのミスや細かいプレーが勝敗を分ける。最終クォーター残り1分の場面で馬場が見せたオフェンスリバウンドや、残り12秒のディフェンスでケリーにボールを入れさせないディフェンスなど、A東京の勝負どころでの集中力が光った試合だった。