文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

秋田の積極性に押され、14のターンオーバーを犯した栃木

バスケの聖地、能代で開催された秋田ノーザンハピネッツvs栃木ブレックス。能代工出身の田臥勇太の『凱旋試合』として注目された一戦は、最後の最後までどちらに転ぶか分からない接戦の末、試合巧者の栃木が競り勝った。

立ち上がりは高さで優位に立つ栃木のペース。田口成浩の3ポイントシュートで一時は逆転される-も、ベンチから投入されたジェフ・ギブスの連続得点もあり、第1クォーターを20-14と終える。しかし第2クォーター、外国人オンザコートが互いに「2」になり、高さの優位がなくなると失速。ライアン・ロシターとギブスがディショーン・スティーブンスにゴール下で抑えられ、運動量と積極性の差で後手に回ってしまう。ケビン・パルマーに2本の3ポイントシュートを決められたこともあり、30-31と逆転されて前半を折り返した。

前半に目立ったのは秋田の攻守にわたる積極性だった。果敢なディフェンスにリズムを狂わされた栃木は、前半だけで14のターンオーバーを犯して得点を伸ばせなかった。

それでも、後半の栃木は気持ちを引き締め直し、素晴らしいパフォーマンスを披露する。両チームともオンザコート「1」の第3クォーター、秋田の日本人ビッグマン、谷口大智に効率良く得点を重ねられるが、スコット・モリソンやスティーブンスにはきっちり対応して仕事をさせず。前半は思い切りよく打たれていた3ポイントシュートも激しい寄せで打つ機会を与えない。攻めに転じては田臥に統率されて、エースのロシターに依存することなくバランス良く得点を奪い、試合の流れを引き寄せる。

逆転された直後のタイムアウトで気持ちを切り替えた栃木

49-45と栃木リードで迎えた第4クォーター、秋田が猛攻に出る。スティーブンスとパルマーを軸にインサイドを攻略しつつ、ミドルレンジからも積極的にシュートを狙い、さらには再三のオフェンスリバウンド奪取で連続攻撃を繰り出す。受け身に回った栃木は、残り4分のところで田臥のパスがパルマーにスティールされ、独走からのダンクで55-56と逆転を許してしまう。

激しいぶつかり合いが続くも得点がなかなか伸びないロースコアの展開で、チームリーダーの田臥が犯した痛恨のミス。『クレイジーピンク』の後押しを受けた秋田の勢いはすさまじく、このまま飲み込まれてもおかしくはない雰囲気だった。だが、ここで取ったタイムアウトの間に、栃木の選手たちは頭を冷やし、改めてゲームに集中した。この冷静なメンタル、試合巧者ぶりが、最終的に栃木に勝利を呼び込んだと言っていい。

第3クォーターからリスクのある強攻を続けていた秋田の動きをあらためてしっかりと見極めることでミスを誘発し、攻めに転じては幅広いプレーで相手に的を絞らせない。ギブスのフリースローで再びリードを奪うと、須田侑太郎、遠藤祐亮と田臥がパスを散らして得点を演出。こぼれ球にアタックする意欲も、それまでずっと秋田の独壇場だったが、最終盤になって栃木も負けじと身体を投げ出してボールに食らい付いた。

勝利を決定付けたのは残り21秒での遠藤の3ポイントシュート。最終的に68-61で栃木が勝利している。

闘志みなぎる戦いを見せた秋田にとっては悔しい敗戦に

秋田のパルマーがゲームハイの18得点を記録。対する栃木は遠藤の15点を筆頭に、ギブス14点、ロシター10点、竹内公輔が9点、熊谷尚也が8点とバランス良く点を取った。注目の田臥は4得点3アシスト。決定打となった遠藤の3ポイントシュート、その前の須田の得点と、クラッチタイムにきっちりアシストを記録するところはスターの所以だろう。

また栃木はこの試合を前に古川孝敏の故障離脱を発表している。ここまで10試合すべてでスターターを務めた彼の離脱は痛いが、須田がその穴を埋めた。ここはプレータイムをシェアし、個人ではなくチームとしての戦いを徹底してきたヘッドコーチ、トーマス・ウィスマンのマネージメント力の勝利とも言える。

敗れた秋田はこれで3連敗。持てる力すべてを出し切りながら勝利に手が届かなかった悔しい敗戦となった。それでも、首位と最下位の対戦とは思えぬ、どちらに転んでもおかしくない試合展開。明日の試合開始までに闘志を充填し、今日以上の強い気持ちで栃木に食らい付くことが求められる。