同じ2人と違うバスケット、苦難の1年を経たブラッドリー・ビールがもたらす変化

2018/10/06
NBA&海外
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ウィザーズ

文=神高尚 写真=Getty Images

ウォールとビール、2枚看板が欠けた昨シーズンの苦難

ジョン・ウォールとブラッドリー・ビールという2人のオールスター選手を擁し、躍進が期待された昨シーズンのウィザーズは、東カンファレンス8位でプレーオフに進むもファーストラウンドで姿を消しました。その大きな要因となったのはウォールがシーズンの半分を欠場したこと。中心選手の不在によって最後までオフェンスリズムをつかむことができませんでした。

しかし、エースの不在は時として他の選手たちの成長にも繋がります。ウォールの代役となったトーマス・サトランスキーは高いシュート成功率とパスファーストのゲームメークで、ケリー・ウーブレイJr.はディフェンダーとして相手エースを追い込んで評価を勝ち取りました。ビールもまた、新たな役割に取り組むことで大きく成長したのです。

ウィザーズは強力なドライブを持つウォールのピック&ロールを中心にしながら、シューター系スコアラーであるビールがボールがない逆サイドでスクリーンを使ってフリーになり、ウォールのパスをキャッチ&シュートで決める形が武器です。オフボールでの崩しで有利な状況を作ってボールを受け取り、隙ができればドライブする効果的な得点の取り方です。相手からするとウォールを警戒しているところに逆サイドからビールがアタックしていくので、止めることが難しいチームオフェンスとなっていました。

ところが、ウォールの欠場でこの形が作れなくなります。2016-17シーズンにはビールの全シュートアテンプトのうち56%がウォールのパスから生まれていましたが、これが昨シーズンは24%まで下がりました。フリーで打てるキャッチ&シュートが減ったことで、3ポイントシュートの成功率も40.4%から37.5%まで下がっています。

簡単なシュートを多く打っていた状態から、難しくても自分で決めきるエースとしての役割を強く求められたビールは、シュートの成功率こそ落ちましたが変わらぬ得点力を示し、ウォールがいなくても独力で得点する期待に応えました。

ウォールとはタイプが違うサトランスキーのゲームメイクはパスが良く回るものの、それまでウォールが担っていた個人での仕掛けはビールの担当になりました。その結果、アイソレーションで仕掛けた回数は133回から236回に、ピック&ロールは361回から510回まで増えました。

ウォールに比べるとクイックネスやハンドリングで劣るビールにとって、ディフェンスに警戒された中でビッグマンが立ち塞がるゴール下まで突破することは簡単ではなく、その一歩前でタイミングを外して打つシュートを好み、ミドルシュートが282本から415本まで増加しています。

その結果、48%と高確率だったビールのフィールドゴール成功率は46%とやや落ちましたが、難しいシュートを増やした割には高確率だったと言えます。

その一方でアシストはキャリアハイの4.5を記録。シュートアテンプト自体はそこまで増えず、大きくスペーシングするウィザーズのオフェンスをパスで機能させるウォールの役割も担ったのです。またリバウンド数、スティール、ブロックとディフェンス面でもキャリアハイを記録しており、ウォールがいない中で攻守にチームを支える存在へと成長しました。

これまでのビールはキャッチ&シュート中心のプレースタイルだっただけに、長くボールを持って仕掛ける形はあまり効果的なプレーには思えませんでした。しかも、自らのスピードでかき乱し、広い視野でパスを出すウォールに慣れていたチームメートは「パスを待つ」傾向が強く、オフボールで動いての合わせが苦手で、当初はビールのドライブから連動するプレーがなかなか成立しませんでした。

それでもシーズンの半分をウォール不在で戦う中で、お互いのプレーを理解し補い合い始めたことで、終わってみるとウィザーズの1試合あたりのパス本数は30本近く増え、一つのプレーに多くの選手が関与するプレーが形になりました。絶対的な中心選手の不在は、成績を落とす要因になったと同時に、チームに新たなスタイルをもたらしたのです。ちなみにリーグ屈指のアシスト力を誇るウォールを欠きながらも、チーム全体のアシスト数は増加しました。

NBAでも屈指のポイントガードであるウォールの欠場によって、期待していたような好成績を残せなかった昨シーズンのウィザーズ。苦難のシーズンにはなりましたが、まだ25歳のビールを始めとした若手に成長の機会を与えてもくれました。

個人で仕掛け、チームメートを生かし、ディフェンスでも存在感を強めた今のビールは、よりチームを引っ張る存在になりました。ウォールはプレーオフで戻って来たものの、新たなチームスタイルとの融合には時間が足りませんでした。それは今シーズンに持ち越すことになります。

苦難を糧として成長したビールは、再びウォールのパスからフリーでシュートを打つ機会が増え、本来の高精度のシュート力を発揮するでしょう。そこにビール自身を中心とした新しい形を融合させることが、ウィザーズ飛躍のキーポイントになります。