「トレーニングがしっかりできた」というケガの功名
故障者が相次ぎ、7人での戦いを余儀なくされたレバンガ北海道は前節、千葉ジェッツを相手に2連敗。2戦目には44点差という屈辱的な大敗(52-96)を喫した。もともと10人のロスターで開幕を迎えたが、序盤戦にしてケガ人が続出。千葉戦ではケガ人もベンチに入れたが、実際にプレーできる選手は7人しかいなかった。プレータイムをシェアするのが当然のバスケットボールにおいては『危機的』を通り越して『破滅的』状況と言っていい。
しかし、リーグ最年長のレジェンド、折茂武彦は決して悲観していない。台所事情の苦しいチームにあって、本来であれば切り札としてプレーするはずの折茂が、ここまで1試合平均21分とかなりのプレータイムを得ている。体力的には決して楽ではないはずだが、彼の口から出てくるのは個人的な調子の良さであり、プロフェッショナルとしてのあり方だ。
千葉との第2戦では、Bリーグで初めてスターターで起用され、前半だけで12得点を奪ってチームを牽引した。折茂は言う。「正直、得点しかできないので、そこで貢献するしかないのかな」
リーグ最年長の46歳。それでも今シーズンはよく身体が動いている。瞬時のキレ、そして美しいシュートフォームで、独特の存在感を放っている。「昨年ケガをして1年間のブランクがある中で、自分の弱かった部分やケガのケアだとか、トレーニングがしっかりできた」と好調の要因を明かす。「46歳でも30分くらいはいけるね」とおどける余裕さえある(千葉との第2戦、今シーズン初めてプレータイムが30分を超えた)。
それが敵地であれ「ファンのために」プレーする
栃木ブレックス、千葉ジェッツという旧NBL勢を相手に4連敗。コンディションの不利もあり、どの試合も大差での敗戦となった。だが、簡単に屈した試合は一つもない。折茂は言う。「そこがチームの特徴でもあり我々が目指しているところと言いますか、常に全力でプレーする、それが我々の今できることです」
「あきらめることは簡単ですけど、そういった姿を見せると応援してくださる方もガッカリするじゃないですか」
折茂の言葉の対象は北海道のブースターに限らない。もともと観客動員に優れた千葉が、ホームタウンである船橋の市民を招待するイベントを打ったこともあって、前節の船橋アリーナは土曜に4305人、日曜には5183人の観客を集める盛況ぶりだった。その大半が対戦相手を応援する状況であっても、折茂は「彼らのために」という意識でプレーしている。
「僕らはプロ選手なので。今日のようにたくさんの子供たちが見に来てくれるわけですから、このリーグでプレーしたい、千葉さんでプレーしたい、北海道でプレーしたいっていう子供たちを増やしていくことが僕らの責任だと思います」
Bリーグは始まったが、バスケットボール人気はまだこれから伸ばしていかなければならない状況にある。だからこそ、1試合たりとも無気力なプレーはできないと折茂は考えている。もっとも、プロとして全力プレーを見せることは最低限の仕事。その次には勝つことが求められる。
もちろん、連敗が続くこの状況をキャリア23年目のレジェンドが受け入れられるはずはない。「次は負けられないですよ」と、終始穏やかな口調で、それでいて力強く折茂が話す。「まだ序盤なんで、あきらめずにやっていきます」
第6節、北海道は日曜と月曜のホームゲーム開催。前節に連勝してトンネルから抜け出した仙台89ERSを北海きたえーるに迎える。
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