代表合宿参加は2017年以来「びっくりしたけど、同時にうれしい」
今月末のワールドカップ予選Window2に向けた男子日本代表の合宿が始まった。トム・ホーバスのヘッドコーチ就任で選手評価の基準が変わり、代表メンバーは様変わりしているが、『少なくとも現時点で世代交代に注力していない』ことは特徴の一つだ。今回の合宿参加メンバー21名の最年少は22歳の西田優大で、彼と同年代かそれ以下のタレントには声が掛からなかった。同時にWindow1で34歳のベテラン、古川孝敏が復帰したのに続き、今回は31歳の谷口大智が招集されている。
谷口は茨城ロボッツに所属する201cm105kgのビッグマン。『スラムダンク奨学金』でアメリカに挑戦した後、bjリーグのラストシーズンに秋田ノーザンハピネッツと契約を結んでプロデビューした。Bリーグの時代になって秋田、広島ドラゴンフライズでプレーしてきたが、日本人ビッグマンは外国籍選手との競争に晒され、プレータイムを確保するのが簡単ではない。
谷口も秋田での2年目となる初年度には、『オン1』の時間帯にコートに送り出される戦力としてプレータイムが1000分を超え、翌シーズンも920分プレーした。それでも外国籍選手の起用ルールが『常時オン2』に変わると、再び谷口の出番は限られたものに。その後の2シーズンは500分を切り、昨シーズンはグレゴリー・エチェニケを始め超強力な外国籍ビッグマンに加え、帰化選手としてトーマス・ケネディもいる中で、プレータイムがルーキーイヤーに次いで短い220分まで落ち込んだ。
もともと谷口は、恵まれた体格を持ちながらもサイズやパワーで外国籍選手と渡り合うのではなく、シュート力を生かしてコートを広く使うバスケの中で持ち味を発揮するタイプだ。
そのプレースタイルはアメリカで培ったもの。アメリカでは201cmが大きいとは見なされず、スモールフォワードとして、時にはシューティングガードでプレーした。「ゾーンディフェンスのトップで守ったこともあります」と彼は言う。そこで通用した部分が今の彼のスタイルへと繋がっている。
「ビッグマンだけど3ポイントシュートまで打てる、自信を持ってそう言いたい」
今シーズンは昇格組の茨城で、外国籍ビッグマンと競争、協力しながらプレーしている。シーズン半ばで未消化の試合もある中で、谷口のプレータイムは昨シーズンの数字に追い付きそうになっている。2.4得点、0.7リバウンドとスタッツは伸びていないが、3ポイントシュートは1.8本放って0.7本を決めており、成功率は一流の基準となる40%を超えている。
前回の代表合宿参加は、ルカ・パヴィチェヴィッチが暫定的に指導をしていた2017年1月までさかのぼる。当時から彼のスタイルは変わらず、「ビッグマンだけど3ポイントシュートまで打てる、自信を持ってそう言いたい」と信念を持って練習に取り組んでいた。そして今、走力を重視して全員に3ポイントシュートを求めるホーバスが指揮官になると、久々に代表に招集された。
「びっくりしたけど、同時にうれしい」と谷口は言う。「いろんな選手がいる中で、自分の色をどう出せるか。そこも楽しみながらやりたい。自分の得意な3ポイントシュートを高確率で決められるようアピールし、また、コミュニケーションをとって周りを巻き込む自分の良さを代表でも出していきたい」
ちなみに、比江島慎とは洛南の同級生。代表で長くエースを張ってきた比江島に対し、谷口にはなかなかチャンスが巡って来なかったが、ようやくチャンスが回ってきた。海外組が不在となると、今もなお代表のインサイドの層は厚いとは言えない。ここで谷口が代表に食い込むだけの存在感を発揮できるか、困難な道のりとなるが期待とともに注目したい。