文=鈴木健一郎 写真=©2016 KAWASAKI BRAVE THUNDERS

オンザコート「2」では首位の川崎を上回った富山

B1中地区の首位を快走する川崎ブレイブサンダースが、ホームのとどろきアリーナに迎えたのは、1勝7敗で最下位に沈む富山グラウジーズ。この状況だけで川崎の勝利という結末に至ったと考えるのであれば安直である。追いつ追われつのシーソーゲームで、両者の駆け引きと気迫が詰まった熱戦だった。なにしろ、試合終了の4秒前までは同点だったのだから。

立ち上がりに主導権を握ったのは激しいディフェンスから素早いトランジションを見せた富山だった。守備で後手に回る川崎は、人もボールも動かずリズムに乗れない。それでも、エースのニック・ファジーカスにボールを集めて個人技で反撃。そのファジーカスを一人でマークし、何とかしのいでいたサム・ウィラードが2ファウルでベンチに下がると、代わって入ったアール・バロンでは抑えられなくなる。

さらには川崎の外国人選手オンザコート「2」に対し富山は「1」で、197cmの日本人ビッグマン嶋田基志が健闘していたが、彼もヴィラードに続き2ファウルでベンチへ。これで決定的なミスマッチが生まれてしまい、その後はライアン・スパングラーに6得点1アシストの荒稼ぎを許してしまう。それでも城宝匡史のドライブ、宇都直輝の3ポイントシュートで食い下がる富山が、起用できる外国人選手が1人少ない立ち上がりの10分間を16-20と4点のビハインドでしのぐ。

続く第2クォーター、今度は川崎の「1」に対し富山が「2」と外国人選手の数で優位に立つ。川崎はプレータイムをシェアするが、セカンドチームもリズムはあまり良くない。富山は素早いトランジションで川崎を振り回し、開始3分ほどで川崎のチームファウルは5に到達。フリースローで着実に得点を重ね、ウィラードとバロンにダンクが飛び出して、残り1分56秒で31-30と逆転。

その後も岡田優のスティールからの速攻が飛び出し、最後は岡田が3ポイントシュートで締めて、36-32と逆転。この10分間、リズムの良い攻めが機能したのはもちろんだが、光ったのはディフェンス。リーグ最強の点取り屋であるファジーカスをウィラードががっちりと抑え、ほとんどシュート機会を与えることなく2得点に抑えた。

追い詰められた時こそ強い、川崎の本領発揮

両チームともオンザコート「1」の第3クォーター、帰化選手のいない富山は劣勢に立たされる。最初の得点は川崎の帰化選手、ジュフ磨々道。この磨々道が巧みな動きでファジーカスをサポートし、富山はインサイドで圧倒されてしまう。さらに今度は富山が残り5分以上残してチームファウルが5に到達。第2クォーターでは2得点だったファジーカスに13得点の荒稼ぎを許し、実に0-17のランを浴びて38-51まで突き放される。

とどろきアリーナに足を運んだ観客の大半が、これで勝負あったと感じただろう。だが、今日の富山はここから不屈の闘志を見せた。最後の1分は川崎の得点を許さず、連続攻撃で48-56とビハインドを1桁まで縮めて第3クォーターを終えたのだ。

迎えた第4クォーター、再びローテーションで若いメンバーをコートに送り出す川崎に対し、富山は個人ファウルが4に達しているウィラードを含む主力組に連敗脱出を託す。そして富山のギャンブル的な強攻が当たる。城宝が2本連続で3ポイントシュートを決めれば、決して当たっているとは言えないはずのバロンも、この試合で唯一放った3ポイントシュートを沈める。こうして強攻で追い上げ、この日絶好調の宇都がファストブレイクを決めて67-67と追い付き、残り2分25秒、岡田の3ポイントシュートで70-67とついに逆転。

その後は時計の針がなかなか進まない大接戦。ファジーカスが、ウィラードが、磨々道がインサイドで得点を挙げていく。残り1分13秒で72-71と富山が1点リード。しかしその後、プレーごとにタイムアウトを取る状況で、川崎が追い込まれた状況での勝負強さを発揮する。ファジーカスが2つのファウルを受け、フリースロー4本のうち3つを決めて逆転。富山は24秒バイオレーションで攻撃機会を一つ潰したのが痛かった。

ファジーカスがフリースローを決めて74-72とした時点で、残り時間は4秒。宇都が長距離から無理やり逆転シュートを狙うも決まらず、意地と意地がぶつかり合う熱戦を川崎が制した。

北ヘッドコーチ「明日、良い状態で準備をして臨みたい」

富山は宇都、城宝、ウィラードを中心に素晴らしい戦いを演じたが、連敗脱出には一歩届かず。ドリュー・ヴァイニーがケガで、外国人2人体制になっている状況が大きなマイナス要因となっている。さらに先週からは田中健介も欠場中。総力戦となり、12人がプレータイムをシェアする川崎との差が出てしまった。

それでもヘッドコーチのボブ・ナッシュは「チームのメンタルは成長している」と、選手たちの戦う姿勢には満足している様子。逆に勝った川崎の北卓也ヘッドコーチは「オフェンスリバウンドからのセカンドチャンス、イージーな得点、トランジション、ファストブレイクがもったいない」と反省しきり。「今日みたいにシュートが入らないこともありますから、そこを立て直すのはディフェンスだということを、試合に出ている5人、そしてチーム全体で共有しながら、明日、良い状態で準備をして臨みたいと思います」と語った。

明日は18時から、同じくとどろきアリーナにて第2戦が行われる。