渡嘉敷来夢

「ケガをしたことによってこの感情になれました」

ワールドカップ予選を戦っているバスケ女子日本代表は今日、ボスニア・ヘルツェゴビナ戦を迎える。FIBAランキングは日本の8位に対し、ボスニアが27位と上回っているが、平均19.4点、11.2リバウンドを記録して昨シーズンのWNBAでMVPを受賞したジョンクェル・ジョーンズを擁するボスニアは決して侮れない相手だ。ジョーンズは198cmの長身ながら内外から得点できる高いスキルを持ち、そのオールラウンダーぶりから『女性版ケビン・デュラント』と呼ばれるほどの選手だ。

日本の勝利はジョーンズをどれだけ抑えられるかにかかっている。そのジョーンズとのマッチアップが予想されるのが、193cmの高さと脚力を併せ持つ渡嘉敷来夢だ。代表復帰戦となったカナダ戦では12得点8リバウンド5アシストを記録し、劣勢の試合でペイントエリア内で踏ん張り、日本の反攻を呼び込むきっかけを作り出した。

渡嘉敷にとってこの試合は、2020年にベルギーで行われたオリンピック世界最終予選以来のFIBA国際試合だった。最後の試合は2月10日のカナダ戦で、奇しくも2年前と全く同じカードとなった。「ベルギーでの試合で、あの時は勝つことができなかったですけど、後半に追い上げるゲーム展開だったので、試合が終わった後にその当時のことを思い出しました」と渡嘉敷は言う。

そして、「無事に戻ってこれて良かった」と復帰した実感を噛みしめるとともに、新たな気持ちで代表活動を楽しんでいる。「女子日本代表が銀メダルを取ったのは本当にすごいと思います。その舞台に立てなかったのは悔しいですけど、逆にその悔しさがあるからもう一回自分が伸びることができます。ケガをして良かったとは言えないですけど、ケガをしたことによってこの感情になれました。またここから自分の新しいバスケット人生が始まっていくんだなって、フレッシュな気持ちでやっています」

渡嘉敷来夢

髙田とのツインタワー「高さで不安はない」

話はジョーンズに戻るが、以前にWNBAのシアトル・ストームに所属していた渡嘉敷には、彼女と対戦した経験がある。 渡嘉敷は、国際試合で海外の一流選手とマッチアップできることを楽しみにしており、特に今回の最終予選の組み合わせが分かった時点でジョーンズとやれるのを楽しみにしていた。そしてジョーンズは、渡嘉敷について「彼女がWNBAでプレーしていたのはよく覚えている。彼女は良いプレーヤー」と語った。

渡嘉敷は「彼女の中で認知されてるのはうれしいです」と笑顔を見せたが、「大したことないと思われないように、相手を苦しめたいと思います」と、すぐに勝負師の顔に戻った。

ただ、相手はキャリアの全盛期にある世界のトップスターで、渡嘉敷も「正直、一人で守ることは厳しい」と本音を明かす。それでもジョーンズを抑える画はすでにイメージできている。「まずはチーム全員でここを守ろうとしています。でも自分がついている時間はできる限り一人で守れればと思っています。彼女は本当に何でもできる選手なので、少しでもフラストレーションを溜めさせて良いプレーができないようにしたいです」

絶対的な選手が一人いてもそれだけでは勝てないのがバスケットであり、チーム力で逆境を覆すのもバスケットの魅力の一つだ。渡嘉敷一人でシャットアウトすることはできなくても、仲間と力を合わせればそれが可能となる。特に渡嘉敷は髙田真希との共闘に自信を持っている。

「国内ではライバルですが、そういった意味ではチームメートにいると心強いですね。今は出番が自分の後かもしれないですけど、一緒に出てる時もそうですし、お互いが別々で出てる時もそうですけど、高さで不安はないですね。髙田選手は多くの国際試合を経験していますし、海外選手とのマッチアップ多いので。お互いに話し合いながらコミュニケーションも取れるし、本当にやりやすいです」

カナダ戦後の会見でボスニア戦へのコメントを求められた恩塚亨ヘッドコーチは「ウチには渡嘉敷がいます」と言い放った。そう、日本には渡嘉敷がいるのだ。