「みんなでバトンを繋ぐのが今回のチームのテーマです」
宮崎早織は日本代表における存在感を急激に強めている。それまで代表でも実績はほとんどなかったが、ENEOSサンフラワーズでの活躍を持ち込むことでオリンピックイヤーに一気に台頭し、東京オリンピックに出場。ここでは町田瑠唯、本橋菜子に続く3番手だった宮崎だが、アジアカップでは先発を任された。そして、ベテランと若手が融合する今回のワールドカップ予選でも宮崎は先発を務めている。
先発メンバーに求められるのは試合のリズムを作ること。特にコート上の指揮官とも言われるポイントガードは、その役割が大きくのし掛かる。宮崎は「先発起用はすごくうれしいですが、その分、プレッシャーというか、結果も残さなきゃいけないというのはすごくあります」と語ったように、初戦となったカナダ戦では相手の高さとハードな守備を前に良いリズムを作ることができずに、山本麻衣へとバトンを繋ぐ形になった。
しかし、今の宮崎にとって自分が先発かどうかよりも大事にしていることがある。「自分の中で先発起用はあまり気にしていなくて、やっぱりみんなでバトンを繋ぐのが今回のチームのテーマです。自分が出たその何分間かで、どれだけ自分の仕事をちゃんとできるかが、すごくカギになってきます」
カナダ戦では18分の出場で7得点5アシストを記録したが、宮崎の最大の特徴であるスピードを生かし切ることができなかった。そのため次戦に向けては「ガードとしてコントロールを意識しなきゃいけないですが、考えすぎずに自分の持ち味やチームの良いところ、シューターがいて、アタックできる人がいて、中に強い人がいるとちゃんと理解した上でコートに入ってバスケットをしたいです」と語った。
「みんなでその選手を守って、日本らしいバスケットができたら」
日本は今日18時からボスニア・ヘルツェゴビナと対戦する。ボスニア・ヘルツェゴビナはWNBAのMVP選手、ジョンクェル・ジョーンズがいる。宮崎も「WNBAのMVP選手がいるので、対戦するのがすごく楽しみですし、みんなでその選手を守って、日本らしいバスケットができたら良いなと思います。個人的にはカナダ戦であまり良くなかったので、良い状態でバトンを繋げていけるように盛り上げていきたいです」と意気込む。
そして、宮崎個人としては別の『ワクワク』もある。東京オリンピックとアジアカップ後の取材で、一番思い出に残っていることについて宮崎は「一番はオリンピックのアメリカ戦で思いっきりブロックされたことです。あのブロックをかわしてシュートを打ちたい」と語っていた。
対戦相手は違えど、ジョーンズは同じWNBAで活躍する選手で、198cmと国内にはいないサイズだ。宮崎はジョーンズをかわしてレイアップシュートを「決めたいです」と言うが、笑顔でこう続けた。「でも、私のイメージ的には一発目は絶対に思いっきりブロックされるんじゃないかなと思っています(笑)。2回目はちゃんとかわして、気持ちよくダブルクラッチができたら良いなと思います。それだけの練習を(鈴木)良和さん(アシスタントコーチ)と一緒にしてきているので、その成果を出せたらと楽しみにしています」
コロナ禍の今、海外チームと対戦する機会が貴重であるからこそ、ワールドカップ本戦へ向けて緊迫感を持って挑む必要がある。それでも、どんな大舞台でも宮崎のように『楽しむ気持ち』は大切で、その心はプレー内容にも繋がるはずだ。その宮崎が今日のボスニア・ヘルツェゴビナ戦では良い状態でバトンを繋ぐことができるか。そしてジョーンズをかわしてシュートを決めることができるか注目だ。