山本麻衣

ベンチから12得点5アシスト、守備でも大役を担う

「最初は苦しい展開になりましたが、40分間自分たちのバスケをすることが日本のスタイルだったので、最後まであきらめずにみんなでバトンを繋いでできたのが本当に良かったと思います」

アジアカップに続き、5人制の代表の座を勝ち取った山本麻衣はカナダとの激闘を終えた後、このように試合を振り返った。日本はベンチメンバーの活躍が目立ったが、控え選手で唯一の2桁得点を挙げた山本の活躍を抜きにこの勝利は語れない。

山本は交代でコートに入るや否や積極的にアタックを開始。「自分の強みはシュートでもあるので、迷わず、自分の勘を信じてやったのが良い結果になった」と語り、ファーストプレーで得点する強心臓ぶりを見せた。また、ドライブからのロブパスで渡嘉敷来夢のタップをお膳立てするなど、チームハイの5アシストも記録。「良いところにダイブしてくれるので、自分は本当にパスを出すだけだった」と謙遜したが、カナダディフェンスを攻略するきっかけとなった。

前半はスクリーンが機能せず、相手のスイッチディフェンスによってズレが作れずにいた。山本も「重たいシチュエーションになってしまって、相手を動かすバスケがあまりできていなかった」と、17点のビハインドを背負った前半の苦労を語った。それでも「15点ぐらい離されていたんですけど、自分たちのバスケになってきている手応えがありました」と言うように、第3クォーター終盤から反撃を開始。「そこを信じてみんなで声をかけ続け、やり続けたのが最後の結果になりました」と劇的な逆転勝利への道筋を振り返り、笑顔を見せた。

山本の功績はオフェンス面だけではない。ポイントガードに激しくプレッシャーをかけて起点を潰し、トラップを仕掛ける際のきっかけともなった。その山本に引き寄せられるように日本のインテンシティは上がり、恩塚亨ヘッドコーチも山本のディフェンスをこのように称賛した。

「素晴らしかったです。フィジカルにプレーしていましたし、フィジカルにただ頑張るだけじゃなく、何が嫌かを考えながらフィジカルにプレーしてくれました。彼女がそこで戦ってくれた背中を他の4人も見て、ディフェンスの熱量を上げて行ってくれたんじゃないかと感謝しています」

山本も「プレッシャーをかけることができていた」と自身のパフォーマンスに一定の評価を与えたが、自分を含めたタイプの違う3人のポイントガードがいたからこそと、チームメートの存在を強調した。「ガードが3人いるので、3人でディフェンスをハードにやってバトンを繋いでいこうと話していました。全員でディフェンスできることを信じていたし、そこは本当に心強かったです」

自身のプレーよりもチーム全体にフォーカスを当てる山本。彼女は「バトンを繋ぐ」という言葉を多用したが、それは本当の意味でチームで戦っていることを暗に示していた。誰もが主役になれる力がありながら、チームファーストの精神が根付いている。山本の発言から、日本が強い理由が少し分かった気がする。