町田瑠唯

取材・写真=小永吉陽子 構成=鈴木健一郎

ケガ明けの大会「ここ3試合では一番自分らしい」

吉田亜沙美が代表を離れ、藤岡麻菜美は長期離脱明けで万全ではない状況、ワールドカップでメインのポイントガードを務めるのは町田瑠唯のはずだった。しかし、その町田は大会を控えたアメリカ遠征を前に左の足首を痛め、開幕には間に合ったものの万全ではない。

「大丈夫です。ケガのせいにしたくない」と町田は言う。「足がどうこうじゃなく、自分の調子が上がらなくて、逆に他のガードの選手が調子を上げてきたから今の状況になってるだけです」

ベンチスタートに回り、プレータイムも制限されるワールドカップ。その大会3試合目となった昨日のプエルトリコ戦で、町田は久々に本領を発揮した。第2クォーター残り7分を過ぎたところ、相手の3ポイントシュート攻勢でリードを失いかけたタイミングで投入された町田は、アップテンポなバスケを演出して次々とチャンスを作り出し、約7分で7アシストを記録した。

試合終盤にもう一度プエルトリコは盛り返すのだが、試合の一つのカギとなる時間帯を町田が支えたのは間違いない。それでも試合後、町田はそれを誇ろうとはせず、むしろ後半も好調を維持できなかったことを課題に挙げた。「ここ3試合では一番自分らしいかなとは思っています。でも後半の入り、ペースを作ってと言われた時にできなかった。後半の出だし、ちょっと重い感じになっていたから、そこでまた良いペースを自分が作れなかった」

町田瑠唯

「最初から最後まで日本らしいバスケットを」

日本代表を率いるトム・ホーバスは、開幕から先発を任せる本橋菜子を「得点が取れる」、2番手の藤岡を「ドライブとディフェンス」、そして町田を「パスでリズムを作る」という言葉で3人のポイントカードを表現している。この日の町田の働きに満足しているかと思いきや、町田本人と同じように「でも続かなかったでしょ」と、後半の不出来を指摘した。

ただ、これは期待の裏返しでもある。本当に3番手のポイントカードであれば、短い時間でゲームの流れを変えられれば十分。それ以上の仕事を期待しているからこそ、安定感を求めている。それは町田自身も感じており、結果を出してポジションを奪い返すしかないと感じている。

「まあ、やるしかないと言うか。セカンドだから違う仕事ではないし、スタートじゃないからモチベーションが上がらないとか、そういうのじゃないので。とにかく今は2番手だろうと3番手だろうとやることは一緒、自分のペースをちゃんとコートで作れるようにやっていくことがチームのためになると思っています」

グループリーグ突破は決めたが、まだまだ日本の戦いぶりは不安定。髙田真希が頼れる大黒柱で、宮澤夕貴がエースへと成長したが、もう一つ軸が欲しい。それをリオ五輪を経験している町田に求めるのは自然な流れとも言える。

町田の復調は日本にとって大きなプラスになる。このチームは12人全員にステップアップが期待されるが、町田に寄せられる期待はことのほか大きい。「今大会、自分たちのバスケットをしっかり40分間やれたという試合はなかったので、明日はしっかり最初から最後まで日本らしいバスケットができるように頑張って、勝ちたいです」と町田は言う。プエルトリコ戦の『数分間の復活』をきっかけとして完全復活を果たすことに期待したい。