張本天傑

張本天傑は史上最も激しい代表争いを勝ち抜き、東京オリンピックに出場した。自身をアンセルフィッシュなプレーヤーと称し、チームではシックスマンを受け入れるなど、個人よりもチームの勝利を優先する。しかし、東京オリンピックを経験したことで「それに見合った活躍をしなければいけない」と、以前よりも自身のパフォーマンスにフォーカスするようになった。ショーン・デニス氏を招聘して挑む名古屋ダイヤモンドドルフィンズでの新シーズン、張本はかつてない手応えを感じている。

熾烈を極めた代表争い「今までに感じたことがないプレッシャー」

──代表活動もあり、短いオフとなりましたが、どのように過ごしましたか? また、リフレッシュはできましたか?

チームメートとキャンプに行きましたが、台風に遭って悲惨でした(笑)。オリンピックの拘束期間が長く、精神的にちょっと参っていたので、一切ボールにも触らず、トレーニングもしてこなかったです。2週間じゃ少ないくらいでした。

家族と過ごした時間が一番安らぎました。子供が今3歳なんですが、約2カ月離れていて、帰ってきたらめちゃくちゃ話せるようになっていて感動しました。子供ってすぐ成長するんだなって感じました。

──かなり競争が激しい中で代表の座を勝ち取りましたが、率直な感想を教えてください。

運が良かったと思っています。もちろん努力はしてきましたが、ヘッドコーチが求めている3番と4番を両方できる選手が代表にいなかったので、そこで選ばれたのかと。あとはリーグが終わった時点で3ポイントシュートが44%入っていたので、そこも評価されたと思います。

競争が本当に激しくて、寝る時に電気を消すとプレッシャーでお腹が痛くなるんですよ。いつ落とされるか分からないし、家族に会えずに孤独で、今までに感じたことがないくらいのプレッシャーでした。

──オリンピック出場を果たした喜びよりもそれまでの過酷さのほうが上に来る感じなんですね。

そうですね。イラン戦の3試合目は調子が良く、自分なりにアピールできたのですが、それでもホッとできなかったです。毎日の練習、試合が本当に戦争というか、自分の120%の力を出さないと生き残れない状況で、そういう競争が毎日あって大変でした。

張本天傑

「理解を深めれば、もっと強いチームになってくる」

──昨シーズンの名古屋Dではプレータイムが伸び悩みましたが、厳しい競争を勝ち抜き、代表の座をつかみ取ったことで何か思うところはありませんか?

僕はセルフィッシュな性格ではなく、どちらかというと言われたことにフォーカスして徹底するタイプで、コーチが好きなように使ってそれでチームが勝てばそれでいいというスタンスです。自分の役割がイマイチ分かっていなかった時もあり、3番も4番も中途半端になってしまい、それなりにストレスは溜まりました。もちろん、試合にもっと出たいという思いはありましたが、コーチと話し合ってコミュニケーションを取っていたので問題ではなかったし、プレーしたい気持ちは代表で発散できたと思います。

──今シーズンからショーン・デニスヘッドコーチが指揮を執ることになりました。名将と言われていますが、どうでしょう?

名将感、出てますね(笑)。本当に細かいですし、一つひとつの動きに対しての徹底がすごい求められていて、練習からヤバいです。でも全部はまだ理解できていないんですけど、ショーンさんのバスケットを全員が理解できたらすごいチームになるというのは感じます。練習中も競争が激しくて、みんなが良い雰囲気で練習できています。

──プレシーズンゲームで群馬クレインサンダーズに勝利しましたが、それでもまだまだな感じですか?

そうですね、まだトランジションしか取り組んでいなく、1割2割ぐらいしかやれてないんじゃないですかね。でもトランジションであれだけ点が取れたのは今まであまりなかったです。ディフェンスのコミニケーションミスは詰めていかないといけない部分ではありますが、オフェンスは今までやってきたことの結果が出た試合でした。理解を深めれば、もっと強いチームになってくると思いますね。

──張本選手が求められていることは何でしょう?

今は4番がメインで、これから3番でビッグラインナップもやっていくようなイメージです。ショーンさんは自由にやらせてくれるんですけど、チームとしてルールがある中で頭を使ってやりなさいという感じです。アドバンテージがないところで攻めると怒られます。チームにとって一番良いシュートを打つために何をするかを大切にしています。

張本天傑

「チームが徐々に強くなっていることを実感してます」

──個人的な目標は何になりますか?

まずはコーチの信頼を勝ち取ることです。どう使うかはコーチの判断ですけど、オリンピックに出たからにはそれに見合った活躍をしないと周りもガッカリすると思うので、「これだけできますよ」ということをコーチに理解してもらって、アピールしていきたいです。

オリンピックを経験して分かったことはみんな身体の使い方が上手く、頭を使ってバスケットしているということです。スペインのリッキー・ルビオみたいに緩急や身体の使い方で勝負する選手は止めづらく、上手い選手を見ながら成長していければと思います。

──名古屋Dは良い選手が揃っていながら、勝ち切れていない印象がありますが、自分ではどう受け止めていますか?

ドルフィンズに来て今シーズンで6年目になりますが、ファンの方からもそういうイメージで見られていたと思います。実際に僕たちも「なんで勝てないんだろう?」って、そういう印象を持っていました。今まではそうかもしれないですが、今シーズンはディフェンスもオフェンスも全員がルールに沿ったバスケットをやっていて、本当に期待できると思います。チームが徐々に強くなっていることを実感してますし、競争が激しい中で楽しく練習できています。

──では最後にファンへのメッセージをお願いします。

今年のドルフィンズはガラッとスタイルが変わりましたが、ショーンのバスケを体現できる選手が揃っています。最低でも地区優勝を目指します。強くなったドルフィンズが見られると思うので、ぜひ会場に足を運んでください。新しいドルフィンズの応援をよろしくお願いします!

──ありがとうございました。ちなみにロックダンスを踊っている動画が公式のほうで上がっていましたが、あれは何でしょう?

最近、ダンス動画を見ることにハマっているんです。『GOGO BROTHERS』というロックダンス界の伝説の人たちがいて、彼らのバトルを見てからハマり、踊れたらカッコイイと思って自分で勉強してます。ポップとかブレイクも挑戦してみたいですね。

──勝利者インタビューに期待ですね。

できたらいいですね。でもまだ全然踊れないです(笑)。

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