ドワイト・ハワード

写真=Getty Images

120kg、体脂肪率3.3%の屈強な身体へ変身

この夏ウィザーズに移籍したドワイト・ハワードは、マジック時代を頂点に、それから徐々に選手としての格が下がり始めた印象が強い。陽気な性格も災いし、レイカーズでは徹底的に勝負にこだわるコービー・ブライアントと衝突。ロケッツでもジェームズ・ハーデンとの関係が悪化したと言われ、2016年に退団してから、ハワードは毎年チームを変えている。

ウィザーズの入団会見で「40歳まで現役を続けたい」と語ったハワードだが、この発言を額面通りに受け止めたファン、メディアはどれくらいいただろう?しかし、彼の決意は本気だった。その背景には、2017年の春からハワードを指導するようになったトレーナーの力もあった。マイアミに拠点を構えるProTERF Trainingの設立者エド・ダウンズが、『Washington Post』に、ハワードの変化を語った。

ダウンズが指導を始めた当時、ハワードはホークスの一員として2017年春のプレーオフ・ファーストラウンドに臨んだ。しかし、ウィザーズとのシリーズでは動きに精彩を欠き、身体能力で彼より劣り、年齢も上のマーチン・ゴータットに圧倒され、プレーオフでのキャリア最低となる平均8.0得点、10.7リバウンドに抑え込まれた。その姿からは、現役最強ビッグマンと呼ばれた頃のハワードは微塵も感じられなかった。

ダウンズは、17年のオフからハワードの肉体改造に着手。当時は130kg、体脂肪率も12.5%だった身体が、トレーニングと食事の改善により、今では120kg、体脂肪率3.3%にまで絞られた。

ダウンズの指導で短距離のダッシュと、コアマッスルを鍛える方法に変えたことで、ハワードは慢性的に抱えていた腰痛から解放され、昨シーズンは81試合に出場。当初は、レギュラーシーズン全82試合出場を目標にしていたそうだが、累積テクニカルファウルにより1試合の出場停止処分を科されたため叶わなかった。だが、ハワードのパフォーマンスは明らかに変わった。その変化が如実に見て取れたのは、3月21日に行なわれたシーズン72試合目のネッツ戦だ。ハワードは、この試合で32得点に加えて、ホーネッツの球団記録となる30リバウンドの大暴れを見せ、NBA史上8人目の1試合30得点30リバウンド超えという快挙を成し遂げた。

トレーニング方法を改め、タンパク質60%、炭水化物20%、繊維質20%の食事を徹底した結果、ハワードはかつての身体能力を取り戻すことに成功している。ダウンズと出会うまで筋力トレーニングを中心に行なっていたというハワードは「自分がリーグでプレーするようになった頃は、シャック(シャキール・オニール)やアロンゾ・モーニング、ジャーメイン・オニールらを相手にした。当時は、『ペイント内で最強は誰だ?』みたいな感じだったし、まるで腕相撲で競い合っているようだった」と回想している。「でも、今は違う。進化して、今のスタイルに合わせるか、もしくは後退するかのどちらかしかない」

ダウンズは、トランジションを多用し、プレーのペースが格段に速くなっている現代型NBAにハワードが対応できるように指導している。ミッドレンジ、3ポイントシュートの習得にも余念がないハワードは、ウィザーズ入団会見に出席する直前までチームの練習施設でトレーニングを行い、128本中81本のシュートを決め、スポットアップからの3ポイントシュートも25本中15本(成功率60%)を成功させたという。

今年のオフ、ハワードは全ポゼッションにおいての判断力を高めるために時間を割いている。リバウンダー、そしてスクリーナーとしても適切な判断を下し、相手を圧倒するために必要なバスケットボールIQを手にするため、努力を重ねているそうだ。ダウンズとともにハワードを指導するジャスティン・ゾーメロは「彼はアンソニー・デイビスや、ケビン・デュラントのような選手に進化したがっている。彼なりの形でね」と言う。

入団会見での「40歳まで現役を続けたい」という台詞は、ハワードお得意の冗談ではなかった。32歳になった彼は今、マジック時代の圧倒的なパフォーマンスを復活させる土台を作り上げた。天から授かった身体能力に、努力する才能が合わさった2018-19シーズン版のハワードは、一味も二味も違う選手として、注目すべき存在だ。