アーロン・ゴードン

スピードとパワーを併せ持つゴードンはうってつけの補強

トレードデッドライン前に本人がマジックにトレード要求をしたアーロン・ゴードンには、多くのチームがオファーを出したようですが、最終的には優勝を目指すナゲッツが獲得に成功しました。ギャリー・クラークとジャベール・マギーの獲得も含め、ナゲッツの動きはプレーオフを見据えてチームの弱点を補う重要なものでした。

昨シーズンのプレーオフでは、ジャマール・マレーが大爆発したオフェンスに加えて、高いディフェンス能力を持つ選手を揃えたことで、西カンファレンスのファイナルまで進みました。しかし今オフ、エースキラー役だったジェレミー・グラントとトーリー・クレッグに加え、控えセンターのメイソン・プラムリーが移籍したことで、ディフェンスが崩壊しました。得点、リバウンド、アシストのすべてでチームハイのスタッツを稼ぎ出すニコラ・ヨキッチのMVP級の活躍により、オフェンスで打ち勝つことで好成績は残しているものの、このままではプレーオフで勝てないのは明らかでした。

チームディフェンスとしては見事なカバーリングやローテーションを見せるものの、ガードが多いためフィジカルな対応ができず、またリムプロテクト能力も欠いてブロック数はリーグ25位と苦戦しています。そのためインサイドの強化は必須でしたが、機動力に欠けるビッグマンを入れてもチーム戦術にフィットしません。その点でスピードとパワーを併せ持つゴードンはうってつけの補強でした。

また西カンファレンスのライバルを考えた時に、プレーオフで敗れたレイカーズにはレブロン・ジェームズとアンソニー・デイビスがいますが、ゴードンはどちらに対しても守れる貴重な選手です。他にもカワイ・レナードやルカ・ドンチッチなど、インサイドアタックが得意なエースに対してのディフェンダー役が期待されます。他にも複数のポジションを守れる利便性があるためスモールラインナップでも活用でき、またマイケル・ポーターjr.と組ませればサイズでも優位に立つことが出来ます。

ナゲッツにはジャマイカル・グリーンやポール・ミルサップがおり、クラークも含めてウイングディフェンダーが充実したことで、ファウルトラブルにも対応できます。プレーオフでは相手との相性も考えながら柔軟な選手起用をすることが重要になるだけに、ヨキッチとマレー以外の組み合わせが豊富になったことにも大きな意味があるトレードでした。

その一方で昨シーズンのファーストラウンドで激闘を演じたジャズ戦では、ドノバン・ミッチェルのスピードと3ポイントシュートに振り回され続けました。このシリーズで勝負を決めたのはケガからの復帰が間に合ったギャリー・ハリスがミッチェルを止めたことでしたが、ハリスは今回のトレードで放出されており、このタイプの選手を止めるディフェンダーには不安が残ります。

好調のサンズにはデビン・ブッカーがおり、また2年前のプレーオフで敗れたブレイザーズにはデイミアン・リラードとCJ・マッカラムがいます。チーム状況を考えればハリスではなくゴードンを選択したことは正しいものの、新たな課題が出てきてしまったのも事実です。今回のナゲッツの動きを脅威にとらえるチームもあれば、与しやすいロスターになったと考えるチームもあるでしょう。その意味では、プレーオフは組み合わせによって結果が大きく変わってきそうです。

強豪ひしめく西カンファレンスが面白いのは、それぞれのチームにタイプの異なる超ド級のエースがいることです。優れたディフェンダーを用意しても50%以上の確率でやられてしまいますが、普通の選手にマークさせると100%やられてしまうだけに、徹底した対策をしてダメージを最小限に抑える必要があります。

ヨキッチとマレーというタイプの異なるエースを揃えたナゲッツは、対戦相手からすると両方を抑えるのが難しいチームだけに、ディフェンスでダメージを減らすことができれば勝利が近づきます。優勝を目指すチームでプレーする希望をかなえたゴードンが、どこまでディフェンスで貢献できるかは、西カンファレンスのパワーバランスに大きく影響しそうです。