「しびれる場面でコートに立っているのは久々だなあ」
琉球ゴールデンキングスは12月27日の川崎ブレイブサンダース戦を72-63で制し、2020年最後の試合を白星で終えた。前日に敗れたリベンジを果たすのに大きく貢献した一人がルーキーの牧隼利だ。
フィジカルの強さを生かした激しいディフェンスで、前日には攻撃の起点になっていた辻直人のマークに奮闘。試合終盤にはチームに大きな勢いを与える値千金の3ポイントシュート成功と、攻守で大きなインパクトを残した。
牧は試合をこう振り返る。「昨日は失点が多かったですが、今日は強力なオフェンス力を持つ川崎さんを相手に強度が高いディフェンスを序盤からできたことが勝因だと思います。個人的には、相手がビッグマン3人を起用する時間帯で身体を張る役割を与えられて、そこで少しでも貢献できた。一番大事な場面でコートに立てていたことが良かったと思います」
『一番大事な場面』と言及するように、今シーズンの牧はここまで接戦で迎えた終盤の勝負どころでコートに立つことがなかった。それだけに、「第4クォーターのしびれる場面でコートに立っているのは久々だなあ、と試合中も感じつつ、そこを楽しめたと思います」と、大きな充実感を得た一戦となった。
現在の成功率16.1%と苦しんでいる3ポイントシュートをここ一番で決めたことをこう語る。「シュートは前半でも決められる場面で外してまだまだですが、そこを含めて練習をしています。あそこは決める自信があって、打ち切れたことが良かったです」
昨シーズンの牧は、特別指定選手として加入した2019年末にBリーグデビューを飾り、シーズン中断前の最後の10試合には先発と、主力選手の一員として琉球の西地区3連覇に寄与した。途中加入した昨シーズンに比べ、開幕前からチームと一緒に過ごし十分な準備を経て迎えた今シーズンに出番を減らしている現状には、少なからず動揺があってもおかしくない。
だが、牧は違う。「今シーズンは船生(誠也)さん、今村(佳太)さんが加入し、田代(直希)さんが故障から復帰しました。自分と似たようなポジション、タイプの選手が多い中、プレータイムを勝ち取らないといけないことは開幕前から分かっていました。焦りというより、地道にやっていくしかない思いです。常に準備をしていて、チャンスをずっと待っていました。そこで今日、1本シュートを決めて、ディフェンスで身体を張れたことで、少しはコーチの信頼を上げることができたと思います」
「最年少のルーキーですけど、リーダーシップを出していければ」
年内最後の試合で大きな結果を残せた牧だが、厳しいチーム内競争は当然のように続いていく。「今村選手ほど得点を挙げられるわけでもなく、船生選手ほど器用なわけでもなく、田代さんほどいろいろなことはできないです」とチーム内での立ち位置を客観的な分析をする中、彼は自分自身の武器もはっきりとイメージできている。
「自分のアピールポイントを出すのが難しい中で考えているのはバランスを取れることです。今日は(ジャック)クーリー選手がアドバンテージだと思ったのでそこを狙い続けました。個性の強いメンバーが揃っているのでバランスを取る。そして大学、高校とキャプテンをやらせてもらっていたので、最年少のルーキーですけど、試合中も声をかけたりリーダーシップを出していければと思っています」
そして2021年に向けて、このように意気込みを語る。「おごることなく地道に練習を重ねて、まずは前半、ベンチから出てきた時にインパクトのあるプレーをしないと最後にああいう場面でコートに立てないです。今年は良い終わり方ができたとので、次の試合に向けて準備をしたいと思います」
琉球が地区4連覇、その先にあるチャンピオンの座を狙うにはさらなるチーム力の底上げが欠かせない。そして、牧がこの試合のようなパフォーマンスを安定して出すことができれば、彼だけでなく琉球にとって大きなステップアップへと繋がっていくはずだ。
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