NBA

シーズン終了後もコミッショナーが抱える難題は多い

7月末からオーランドの『バブル』で再開したNBA2019-20シーズンもまもなく終わりを迎える。

NBAコミッショナーのアダム・シルバーは、2020-21シーズンについて2021年1月に有観客試合で開幕することを希望している。もちろん、新型コロナウイルス感染予防のための厳しいルールを設けた上でのプランではあるが、専門家の意見は「時期尚早」で一致している。

以前、NBAのスタッフだった医師のタレック・オマー・ソーヤルは「アダムはファンを会場に入れて試合を開催したいようだが、早すぎると思う」と『USA Today』の取材に答えた。

『バブル』のために1億5000万ドル(約159億円)という巨額の予算を投じたと報じられているNBAは、入場料収入によるリーグ全体の収入増加を望んでいる。しかし、感染者数だけで750万人、新型コロナウイルスによる死亡者数21万人を超えたアメリカで有観客試合を行えば、大規模なクラスターが発生してしまうリスクは高い。

今年2月、欧州サッカークラブの頂点を争うUEFAチャンピオンズリーグ・ラウンド16の一戦(アタランタvsバレンシア)がイタリアのミラノにあるサン・シーロで行われた。ホームチームのファンだけではなく、スペインからも遠征したファンがスタジアムで観戦したのだが、この試合の2日後にイタリア国内で初の感染者が確認され、ミラノを中心に感染者数が急増。同様にスペインではバレンシアが感染拡大の中心地になったため、この試合が伝染の媒介になった可能性が高いと見られている。

NBAのシーズン開幕は3カ月先だとしても、新型コロナウイルスを取り巻く状況に大きな変化は見られないだろう。治療薬やワクチンの完成時期は不明なままで、瞬時に陽性か陰性かを判別する検査キットの開発にも時間を要する。

NBAは今後、NFLなどの他競技がどういう手法を用いるかを参考にしつつ、政府やアメリカ疾病予防管理センターからの助言を聞きながら、有観客試合再開の時期を検討すべきだ。 ならば再び『バブル』環境で試合を開催すれば良いのかもしれないが、家族と離れることで選手たちが心身ともに受けるストレスは大きいため、2020-21シーズン開幕からの『バブル』は避けたいところ。シルバーは今後も情勢を見定めながら、最適な判断を下さなければならない。