タイラー・ヒーロー

「相手の強みは理解しているし、ミスからの自滅はしない」

ヒートとレイカーズが激突するNBAファイナル、その初戦はタイラー・ヒーローにとって屈辱とも言える結果となった。30分の出場で14得点4アシスト3リバウンドというのが彼のスタッツ。プレータイムが長かったため数字は残せたが、活躍したとはとても言えないパフォーマンスだった。フィールドゴールは18本中わずか6本の成功に留まり、彼がプレーしている間の得失点差は-35。チーム自体が完敗を喫したため、ルーキーの彼が戦犯と呼ばれることこそないものの、出来が悪かったのは間違いない。

休養日となった10月1日の会見で、ヒーローはNBAファイナル初戦の経験をこう語る。

「インテンシティはカンファレンスファイナルと変わらないと感じた。でも、もっとハードなプレーが求められるし、すべてのポゼッションにより重みがあった。レイカーズのようなチームが相手だとなおさらだね。ヒートらしくもっとフィジカルに戦って、次の試合ではバウンスバックしたい」

だが、チームは危機的状況に陥っている。ヒーローと同じセカンドユニット、その司令塔としてオフェンスにリズムをもたらしていたゴラン・ドラギッチがケガで出場できず、このシーズンにチームの大黒柱へと成長したバム・アデバヨもコンディションに問題を抱えている。

「ゴランがプレーできないのは大きな痛手だ。僕らは一緒にベンチから出ることが多かったから、僕にとってもダメージは大きい。でも、彼がどれだけ試合に勝ちたがっているか、その思いは分かっている。大きな損失だけど、代わりの選手が頑張るはずさ。バムは攻守に大きく貢献しているから、もし出られないとなればすべてを変えないといけない。その場合にどう戦うかは、その時になってみないと正直分からない」

NBAファイナルまで来てケガ人が続出している現状に「ガッカリしているというより、不運だと感じている。彼らがどれだけ頑張ってきたか見てきたし、僕らはここまでチーム一丸で戦ってきたんだからね」とヒーローは言う。

『代わりの選手』という意味ではケンドリック・ナンの活躍が光った。「彼とは去年の夏からずっと一緒だった。レギュラーシーズンでは先発ポイントガードで、プレーオフでローテーションを外れてからも練習態度を変えることなく頑張っていたんだ。彼の活躍はすごくうれしい。ロッカールームでも人気者だしね。彼が自信とリズムを取り戻してくれたのは初戦の収穫だね」

ヒーロー自身のステップアップも求められる。「僕は自分を追い込むタイプだ。プロとしてこの世界一レベルの高いリーグでバスケットボールをしている。チームとして必ずバウンスバックしてみせる。第2戦は激しくやるつもりだ」

「プレーオフを通じて僕らは適応能力を示してきた。第4クォーターに逆転して勝った試合もあったよね。相手の強みは理解しているし、ミスからの自滅はしない。ジミー(バトラー)も言っていたけど、オフェンスでもディフェンスでもパーフェクトな試合をしなければ勝てない。1試合だけじゃなくて、4試合そうするつもりだ。楽な戦いになんかならない。これまでで一番厳しい戦いになるけど、ヒートにはそれを勝つだけの選手とメンタリティがある」

ヒーローは自分のリベンジではなく、チームのリベンジについて話したがった。「これまでヒートが見せてきたスタイルを取り戻さないといけない。確率の高いシュートをクリエイトすること。シュートが入ればディフェンスをセットして守ることができる」

堅守からの速攻でレイカーズに圧倒された第1戦の再現を避けるには、まずシュートを確率良く決めることが大事ということだ。そこにはもちろん、彼自身のステップアップも必要となる。