ジョエル・エンビード

シーズンオフは「すべてにおいて自分を向上させる」

セブンティシクサーズは、セルティックスに1勝もできずにプレーオフファーストラウンドで敗退した。『バブル』でシーズンが再開した後にベン・シモンズがひざの故障で戦線離脱。その穴を埋める準備ができないままプレーオフに入り、絶好調のセルティックスにスウィープを食らった。

もともと43勝30敗で東カンファレンス6位という成績は、シクサーズの戦力からすれば物足りない成績だ。さらにプレーオフでも早期敗退。主力のケガという事情があるにせよ、結果を出せなかったことに変わりはない。敗退が決まった瞬間からメディアの興味は、ブレッド・ブラウンの解任とチームの解体へと向いた。

ジョエル・エンビードはファーストラウンド4試合で平均35.8分出場し、30.0得点、12.3リバウンドを記録。得点もリバウンドもセルティックのどの選手よりも多い数字だが、結果は4連敗。試合後の会見場でのエンビードは失望の色を隠すことなく、「悔しい。この時期にケガ人が多く出る不運に見舞われ、自分たちの力を出せなかったことにフラストレーションを感じる」と語った。

「昨シーズンの敗退とは悔しさの種類が違うよ。昨シーズンはメンバーが揃っていて、自分たちのプレーをして、勝つチャンスがある中で戦うことができた。でも今回は自分たちのリズムで試合ができなかった。絶対にもっと良い戦いができたはず。それが一番の後悔だ」

メディアの質問は、すでにセルティックスとの試合内容ではなく、ヘッドコーチの責任問題やチーム解体についてだった。エンビードにとってはこれも大きなフラストレーションだったに違いないが、彼は我慢強く言葉を選んで話し続ける。

シクサーズの弱点は何だと思うか、との質問を「馬鹿げた質問だ」とさえぎったが、声を荒げることはなかった。「良いシュートが打てなかったし、ディフェンスにも問題があったのは認める。誰かが復帰すればまた誰かがケガする状況で、オフェンスでもディフェンスでも確たるプレーを見いだせなかった。でも全員が勝利のために一生懸命戦った。ただ勝てなかっただけさ。それを弱点とは言いたくない」

彼自身にもトレードの噂があるが、「僕はずっとここでキャリアを終えたいと言っている。そうなれば良いし、そうならなければそういうこと」と語るに留めた。「僕はGMじゃないから、そんな判断はしない。ウチには素晴らしい選手が揃っていて、それ以上の評価をするつもりはない。オーナーもフロントもコーチングスタッフも、素晴らしい人たちの集まりだ」

それでも、ブラウンヘッドコーチの解任は決定的と見られている。エンビードは否定も肯定もせず「彼は素晴らしいコーチだし、人間としても素晴らしい。彼の去就を決めるのは僕じゃない。でも、何があろうと僕らは友人だ」と語る。

新型コロナウイルスの影響によりシーズンのスケジュールは大きく狂った。8月下旬は例年であれば新シーズンに向けた準備が進んでいるところ。そして12月上旬と見られていた来シーズンの開幕は遅れそうだ。スケジュールが決まらない曖昧な状態で迎えるオフについて、エンビードは「すべてにおいて自分を向上させる時間にしたい」と語る。

「ケガがない状態でオフシーズンに入るのは僕にとって初めての経験だ。家族と少しゆっくりするけど、その後はトレーニングに打ち込むつもりだ。このシリーズで自分が見せたパフォーマンスでは、プレーオフを戦うには十分じゃないって分かったから、やらなきゃいけない。シーズン中もあらゆる面で成長したいと思っているけど、このオフは特にそうだ。すべての面で自分を成長させて、チームが僕にこうあってほしいと望む自分になりたい」

「ポストアップもハンドリングもシュートも、すべてを向上させる。僕は完全なバスケットボールプレーヤーになりたいんだ」。そんな言葉とともに、エンビードの2019-20シーズンは終わった。来シーズンの彼は、一回り大きく成長しているに違いない。