川崎デビューの連戦で天国と地獄を味わう
川崎ブレイブサンダースの特別指定選手である司令塔の水野幹太はリーグ中断前の2月15日、16日の島根スサノオマジック戦にて、川崎での公式戦デビューを果たした。この2日間は彼にとって天国と地獄、あらためてプロの厳しさと醍醐味を味わった実り多いものだった。
15日の試合、水野は第1クォーター終盤にコートに立った。だが、直後に守備でミスを犯し、相手に連続得点を許すきっかけを作ると、そのまま見せ場なくベンチに下がるほろ苦いものだった。
実績のない特別指定選手だけに、翌日はこのまま出場機会なしで終わってもおかしくなかったが、川崎の佐藤賢次ヘッドコーチは翌日も第2クォーターのまだ勝負の行方が分からない状況で水野を投入した。
この指揮官の信頼に、大学3年生の若武者はしっかり応えた。佐藤ヘッドコーチが「もともとオフェンスの精度はすごく高い選手です」と言うように、ゴール下へのドライブで相手ビッグマンを引き付けてジョーダン・ヒースのダンクを演出するなど持ち味を発揮した。アシストだけでなく、ドライブからそのままレイアップを決めて勢いに乗ると、3ポイントシュートの連続得点。リードを大きく広げる原動力となった水野は、この試合で10得点2アシストを記録し106-74の圧勝に貢献した。
「今日こそ、という気持ちが良いプレーに繋がった」
デビュー戦が厳しい内容だった時、次の試合で多少萎縮してもそれは仕方のないこと。だが、水野には良い意味での図太さがあった。
「昨日、初めてコートに立たせてもらいました。ベンチから見るのと、実際にコートに立つのでは大きな違いがありました。その中でチャンスをいただいてミスはしましたけど、雰囲気に慣れることができました。だから今日はガンガン行こうと思いましたし、昨日のミスから切り替えてやりたいことができました」
この強気なメンタルで挑めたのは指揮官の後押しも大きかった。「試合前、佐藤さんからチャンスを作るから行ってこいと言われていました。もう終わったことは後戻りできないので、今日こそという気持ちが良いプレーに繋がったと思います」
そして水野は言う。「ホッとした気持ちがありましたが、それよりも『やってやったぜ!』という思いでした」
さらに自身の3ポイントシュート成功で島根がタイムアウトを取った時には、チームのお祭り男、辻直人を彷彿とさせる決めポーズを披露したが、これは意図したものではなかった。「歓声につられて自然と出ました。大学の試合でああいうポーズを取ったことはなかったです」
「練習で少しでも倒せるようになっていきたい」
プロ向きの物おじしないメンタルの強さを見せている水野だが、それは普段の練習の賜物でもある。チーム練習でマッチアップするのは今、リーグ随一の活躍を見せている藤井祐眞。当然ではあるが指揮官曰く、練習ではガンガンにやられている。
しかし、藤井以上の相手と試合でマッチアップすることがないと思えば、余計な緊張もない。「どのチームも祐眞さんは止められないです。そこで少しでも止められるようになれば試合でも相手を止められる。そういう意味でもどんどん挑んでいこうと思っています」
また、やられっぱなしではいられないと、負けん気の強さを見せる。「いきなり年上の人たちと張り合うことはできないです。ただ、僕も試合に出たいので、練習で少しでも倒せるようになっていきたい。そこは挑戦です」
これからシーズン終盤に向け、川崎のポイントガード陣はいずれ篠山竜青も故障から復帰し、コンディション不良で離脱していた青木保憲も回復している。そうなると、水野にとっては引き続きプレータイムを得るのも簡単なことではない。
しかし、これからの過密日程において、戦力はいくら豊富でも困ることはない。また、激しい競争こそチーム力アップには欠かせない。そこで「プロの舞台では何もできなかったら、そのまま終わってしまう」と、現役の大学生にして危機感を強調する水野の存在は、他のベンチメンバーにもいい刺激となる。リーグ再開後、水野がどんな立ち位置にいるのか興味深い。
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