
川崎ブレイブサンダースの新戦力アレックス・カークは、2017年からBリーグで活躍を続けている。リーグの変遷を知る彼に、オン・ザ・コートフリーの新ルールが外国籍選手に及ぼす影響を聞いた。さらに、欧州バスケットボール界にも精通することから、海外から見たBリーグの評価がどのように変化しているのかについても語ってもらった。
「Bリーグに決定的な変化をもたらすことは間違いありません」
――今シーズンの川崎にどんな印象を抱いていますか?
チームメートは長年対戦してきた選手ばかりです。(篠山)竜青やマット(ボンズ)など、何度も対戦経験があり、彼らのプレースタイルは頭に入っています。一方でチームメートになることで見方が変わることもあります。例えば、荒谷(裕秀)のことは『シュート力があり、プレーメークができる大型ウイング』として、ずっと一緒にプレーしたいと思っていました。それが実際に同僚となって、想像以上に多彩なスキルを持っていて驚かされました。お互いの特徴を学んでアジャストしていく作業が必要となります。
――琉球でも一緒だった桶谷大ヘッドコーチのやりたいバスケットを、よく知る選手としての役割について意識しますか?
意識している部分はあります。僕にはヘッドコーチのシステムを熟知している強みがあります。メンバーにあわせた調整は入りますが、戦術面でチームメートを助けることができます。こういうコーチング的なアプローチや、どれが良いのか選手の組み合わせを考える作業も好きなので楽しいです。例えばジェイデン・リディは、サンディエゴ州立大でNCAA屈指のパワーフォワードでした。BリーグのスタイルはNCAAと共通する部分が多いので、彼が大暴れする可能性は高いと思います。「コーチ陣はこれを求めている」、「日本のバスケにはこういう傾向がある」といったアドバイスをすることで、彼とチームの助けになれると思います。
――新ルールのオン・ザ・コートフリーは、大きな影響を及ぼすと思いますか?
外国籍選手のプレー可能時間が全体で40分増えることになるので、リーグ全体として戦い方が大きく変わるのは各チームのロスターを見ても分かります。昨シーズンの琉球では、僕とジャック(クーリー)がツーセンターとして15分くらい同時出場することもありました。しかし、個人的な考えですが、今シーズンはビッグマン2枚を並べる起用法を長く使うチームはほとんど見られなくなるのではと思っています
リーグとして格段にスピードアップし、よりアスレチックになって、サイズも上がっていくでしょう。どのように新ルールが機能していくか注目ですし、Bリーグに決定的な変化をもたらすことは間違いありません。僕はこの変更について賛成、反対という意見を言うことはないです。ただ、日本に長く住んでいて、日本代表の成功を心から願っていますし、若い日本人選手の成長を応援しています。日本人の友人も多いですし、日本人選手のためになっているのか、という視点をこれからも大切に見ていきたいです。

「僕に残されている目標は『勝ち続けること』のみ」
――カーク選手は長らくBリーグで活躍を続けています。現在、ユーロリーグなど欧州バスケ界で実績を残す選手たちがどんどんBリーグに来ていますが、活躍できる選手もいれば、上手くフィットしきれない選手もいます。その違いは何が影響していると思いますか?
僕はユーロリーグの試合をたくさん見ています。昨シーズンも「この選手がBリーグに来たら活躍しそうだ」と考えながら視聴したこともあります。ユーロリーグで大切なことは、タレントが揃ったロスターの中で、1つか2つの傑出した武器を持っていること。一流のシューターやスコアラーであれば、1試合10分から15分の出場でも持ち味を発揮してチームに貢献すれば高額な年俸を得られます。
しかし、Bリーグで外国籍選手としてプレーする場合、いろいろなことをこなせる多才さが必要です。センターであればゴール下で得点し、リバウンドを取るだけでなく、パスを上手く捌いてゲームを作る能力も求められたりします。例えば三河のダバンテ・ガードナー選手は、この多才さによって自分のペースでプレーし、試合を支配できる存在です。アルティーリ千葉のD.J・ニュービル選手もいろいろなスキルレベルが高いことで、無類の強さを誇っています。新しいルールが、このBリーグで活躍するための条件に変化をもたらすのかを含めて、誰が日本のバスケットボールに適応していくのか興味深いです。
――カーク選手から見て、欧州バスケ界のBリーグに対する評価に変化を感じますか?
日本が八村塁選手、ニック・ファジーカス選手を擁して『FIBAワールドカップ2019』に出場した頃から日本のバスケットボールに対するリスペクトは一気に高まり、今も右肩上がりだと思います。その上で、河村勇輝選手のNBAでの成功を願っていますが、彼のような選手がユーロリーグやユーロカップでプレーしてくれたら、『日本人選手は、こんなに活躍できるのか』と、さらに多くのヨーロッパの関係者たちの評価を根底から変えられると思います。
以前は、Bリーグに来ると「ヨーロッパで戦っていくことをあきらめてアジアにお金を稼ぎに行った」と見下される風潮があり、僕が日本でプレーし始めた時もそういった声を聞きました。だが、今ではBリーグでプレーした後、再び欧州に戻るケースは珍しくないです。韓国や台湾に行く選手もいますが、今オフも数名が欧州復帰を果たしています。昨シーズン、川崎に所属していたエマニュエル・テリー選手は、トルコのトラブゾンスポル・クラブに加入しています。ひと昔前だとハッサン・マーティン選手が琉球を経てユーロリーグへのステップアップしたくらいでしたが、状況は変わりました。今や世界中がBリーグをスカウティングし、高い評価を与えています。間違いなくリスペクトは確立されています。
――最後に今シーズンの目標とファンへのメッセージをお願いします。
目標はケガなく過ごして日々向上し、このチームの勝利に最も貢献できる方法を見つけることです。スタッツを追い求める段階はとっくに過ぎ去っています。僕に残されている目標は『勝ち続けること』のみです。そのために必要なことは何でもします。フロントも桶谷ヘッドコーチがチームを大きく好転させることを求めています。昨シーズンの仙台89ERSのように前年から勝利数を大幅に上乗せする(11勝から35勝)チームになりたい。東地区にどれだけ強豪がいても関係ないです。勝つことを当たり前ととらえるメンタリティが僕には染み付いています。今シーズンの川崎はその目標を達成できる戦力を揃えてくれましたし、頂点のみを目指すことに変わりはないです。
温かく迎え入れてくれたサンダースファミリーの皆さんには心から感謝しています。移籍の噂が出ていた頃から温かい声をかけてもらっていました。皆さんの前でプレーし、サンダースファミリーの一員としてクラブや桶谷ヘッドコーチが僕を必要としてくれる限り、この街に多くの勝利と栄冠をもたらしたいと思っています。熱い応援をよろしくお願いします。