
今オフの川崎ブレイブサンダースは低迷からの脱却を図るため、日本代表で指揮を執る桶谷大を新ヘッドコーチに招聘。ロスターも大幅に入れ替え、多くの新戦力を迎え入れたが、その中でも一番の実績を誇るのはアレックス・カークだ。これまでアルバルク東京、琉球ゴールデンキングスで数々の栄光をつかんできたリーグ屈指のベテランセンターに新天地での意気込みを聞いた。
「川崎を勝たせるために全力を尽くすだけです」
――新天地に川崎を選んだ理由を教えてください。
リーグとしてサラリーキャップやオン・ザ・コートフリーの導入などといったレギュレーションの変更も重なることで、これまでと状況は大きく変わり、改革を推し進めていた琉球からもオファーが届きませんでした。各チームがサラリーキャップをどのようにやりくりするのか模索していたからだと思いますが、移籍市場が動き始めるのが遅く少し焦りを感じていました。新シーズンを迎えられるかナーバスになっていた時に川崎からオファーがあり、そこからは契約締結までトントン拍子に話が進みました。
A東京にいた時、川崎は優勝を争うライバルとして6年、7年と対戦してきたチームで、素晴らしい歴史があることはわかっています。選手への待遇やサポートが手厚いクラブという評判は常に耳にしていましたし、契約面でも僕の希望を満たしてくれました。そして、家族が川崎で快適に生活していくための環境もすべて整えてくれたので、迷わずに加入を決断できました。A東京も琉球も自分から望んで離れたわけではないですが、新しい環境でプレーできることはエキサイティングですし、自分のキャリアを活性化してくれます。今は川崎を勝たせるために全力を尽くすだけです。
――琉球で一緒だった桶谷ヘッドコーチがいることは心強いですか?
もちろんです。僕はこれまで腰の手術を3度受けて、11月には35歳となりますが、ここ2シーズンで欠場したのは2試合のみです。日本代表としてプレーした昨シーズンは、合計で85試合くらい出場しました。そして練習も一度も休んでいません。これも桶谷ヘッドコーチが、僕の体調をしっかり管理してくれて、プレータイムで過剰な負担をかけ過ぎないように配慮してくれていることが大きいです。
そしてこれまで、彼と一緒にBリーグファイナル進出、天皇杯優勝、EASL(東アジアスーパーリーグ)ファイナル4進出に日本代表への招集と多くの結果を残してきました。だから彼の下でプレーを続けるのは自然な選択でした。僕のようなベテランにとって、チームのやりたい戦術やシステム、日々の練習で求められる基準をわかっていることは本当に重要です。
――桶谷ヘッドコーチだけでなく、A東京でチームメートだった菊地祥平さんがコーチとして加入し、再会となりました。
このニュースを知る前、A東京にいる大親友のザック(バランスキー)から、「祥平が君にサプライズを用意している」と聞かされていました。『引退したばかりの祥平がどんなサプライズを?』と思っていたら、川崎のコーチになると知って最高の気分になりました。彼からは「昔、川崎にいた時にヤンチャをしていたのでチームに戻れない」と冗談を聞かされていたので、全く予想していなかったです(笑)。
僕にとって、知っている顔がいるのは心強いです。誰だって安心できる存在が周りにいてほしいものですよね。祥平は5シーズンに渡り苦楽をともにしてきた仲で、自分の背中を預けられる人物とまた一緒に戦えるのはうれしいです。

「最低でもあと5年はプレーしたい」
――腰の手術はキャリアに影響を与えたと思います。手術を受けた当初、今のようなコンディションを取り戻せると想像できましたか?
手術直後は本当に怖かったです。体調がすぐれず、激しい痛みが続いていました。執刀医からは「想定していたより状態はかなり悪くて、広範囲の処置をしなければいけなかった」と告げられました。退院しても痛みが引かず、A東京のメディカルトレーナー陣と地道なリハビリを重ねることでようやく状態が良くなってきました。特にあの時はコロナ禍でもあって『この先どうなってしまうんだろう』と先が見えず、気持ちが落ち込むこともありました。今も手術前と同じ状態に戻ったわけではないですが、満足しています。
――再発の心配をすることなくプレーできていますか?
このようなケガにおいて『絶対に大丈夫』ということは、ないと思います。特に僕は211cmで体重もある重量級のセンターで、『また、痛めるんじゃないか』という不安は常に頭の片隅にあります。だからこそ日頃から体幹や腰の周りの筋肉を強化するトレーニングを怠らないようにしています。琉球のスタッフも素晴らしいですが、川崎のメディカルスタッフはとても能動的で「今日はこの治療をやろう」、「この運動を取り入れよう」と、いろいろな提案をしてくれています。「川崎は選手を本当に大切にしてくれる」とみんなが言っている理由がよくわかりました。これだけ手厚いケアを受けられる環境で、自分のコンディションをどれだけ上げることができるのか楽しみです。
――将来のキャリアについて目標を教えてください。
年齢とともにコンディションの維持は確実に大変になっていますが、最低でもあと5年はプレーしたい。妻が許してくれる限りですけど(笑)。できるだけ長く現役を続けたいです。また、引退後は日本のチームでフロントオフィスに入ることができれば、それは楽しいと思いますし、コーチもやってみたいです。リーグのこれまでの動向をずっと見てきて、理解していることは自分の強みとして生かせますし、家族にとってもプラスだと思います。ただ、それは40代になってからの話で、まだまだ現役を退くつもりはありません。