
「アーリーバスケットが良いスパイスになっている」
2月1日に川崎ブレイブサンダースvsサンロッカーズ渋谷の第2戦が行われた。SR渋谷は主力の田中大貴が後半をプレーできないアクシデントに見舞われたが、チームはディフェンスにフォーカスし、今シーズン最少失点の73-58で勝利。ゾラン・マルティッチ新体制になってから5勝1敗と好調をキープしている。
この守備的展開を支えたのは、川崎に昨シーズンまで在籍していた野﨑零也だ。野﨑は前半のプレータイムは約6分だったが、後半は11分間プレーして田中の穴を埋めた。後半にプレータイムが伸び、「(田中が後半に出場しなかったことで)『自分がやってやろう』という気持ちはありました」と言うが、自身が持ち味にしているディフェンスを心がけた結果だと語った。
「でも自分が大事にしているのはディフェンスなので。今日もディフェンスが良かったからプレータイムを与えてもらえたのかなと思っています。もちろん、オフェンスで脅威にならないといけない気持ちはありますが、58点に抑えられている数字が出ているので、そこをベースにやっていきたいです」
チームはオフシーズンに積極的な補強を行い、開幕前は優勝候補の一角とも言われていた。しかし、結果は伴わずシーズン途中にヘッドコーチが交代する事態に陥った。日本代表では先陣を切って走りファストブレイクに貢献するジョシュ・ホーキンソン、そしてトランジションオフェンスを得意とするベンドラメ礼生やジャン・ローレンス・ハーパージュニアといった優れたガードがいながらも、ポゼッションペース(1試合の平均ポゼッション数)はリーグワースト2位と上がらない状況だった。
だが、この試合では野﨑がランニングプレーを成功させるなど、トランジションへの意識が変わりつつあることが見受けられた。野﨑もその変化に手応えを感じている。「(カイル・ベイリー前ヘッドコーチの時は)ベンチからこのセットをやらないといけないと(指示が)よくありました。今はまず、ファストブレイクを出して、出せなかった時にハーフコートオフェンスを仕掛けるという方針になっています。ヘッドコーチが代わって、ブレイクに対してのフォーメーションが増え、アーリーバスケットが増えてきているので、そこはすごく良いスパイスになっているんじゃないかなと思います」

「自分たちのやるべきことを体現しよう」
マルティッチヘッドコーチ体制は野﨑にとってプレーしやすいスタイルなのだろう。ディフェンスに重きを置く野﨑はピックアップポイントを早めてプレッシャーをかけ、ファストブレイクで走り切るのは得意だ。
この成長を川崎で見せられたことは、野﨑にとって少なからず意味がある。試合前には懇意にしていた美容室を訪れて髪をカットした。「久しぶりに会いたいなと思ったので、寄らせてもらって、カッコよくしてもらいました」。そう語るように、『久しぶりに会いたい』と思わせる川崎の心地良さは野﨑の心の奥に残っている。川崎時代のタオルを振ってくれているファンも会場に駆けつけ、マスコットのロウルは野﨑を歓迎した。在籍したのは2シーズンという短い期間ではあったが、野﨑にとっては特別な場所であるに違いない。それでも、「試合になれば別です」と言い切る。
「言葉は悪いですが、敵であることに違いはない。別に古巣だからといって気にすることはないので、自分たちのやるべきことを体現しようと思っていました」
タオルを振ってくれる観客の存在に喜びと感謝をしながらも、プロとしてあるべき姿を表現し続ける。成長し、プレータイムを得て多くのプレーを見せることが所属していたチーム、応援をしてくれているファンの方々への最大の恩返しとなる。野﨑は最後に「ヘッドコーチが変わろうが、自分はブレずにプレーをしていく」と力強い言葉を残し会場を後にした。