
ピストンズ戦でエースキラー&エースの役割を担う
ディロン・ブルックスはNBAキャリア9年目にして全盛期を迎えた。2017年のNBAドラフト2巡目指名でグリズリーズに加入した彼は、相手のキーマンを無力化する苛烈なディフェンスで頭角を現したが、その表向きのイメージの裏でシュート力を向上させる地道な努力を続けてきた。その成果が30歳になった今シーズンに形となってきた。
昨年オフにケビン・デュラントのトレードの対価の一部としてロケッツからサンズへ。デュラントの退団でサンズの得点力は大幅に落ち、ブルックスとともに移籍したジェイレン・グリーンもケガでほとんどプレーできない状況で、デビン・ブッカーに続くスコアラーが必要だった。攻撃的から守備的へとスタイルを一変させたサンズで、ブルックスはその守備を先頭に立って引っ張りつつ、得点面でも力を発揮している。
サンズはブッカーが攻撃の全権を握るが、そこから展開してブルックスにフィニッシュが託される場面が増えた。ロケッツ時代は11.2だったフィールドゴール試投数が17.1と急増し、フリースローの試投数3.6もキャリアハイの数字。こうしてキャリアハイとなる平均20.5得点を彼は稼ぎ出している。
現地1月29日のピストンズ戦、激しいディフェンスが持ち味の相手にサンズは一歩も引かず、堅守からトランジションへと繋いでいく。激しいコンタクトの応酬はブルックスの大好物。相手の接触を跳ね返し、得点を決めてはマッチアップする相手やピストンズのベンチを挑発し、自らテンションを上げていく。ブッカーを欠くサンズは、そうやってゾーンに入ったブルックスにボールを集め、彼はキャリアハイの40得点でサンズを勝利に導いた。
この日はファンに『ディロン・ザ・ヴィラン』(ディロンは悪役)とプリントされたTシャツが配られた。ヘッドコーチのジョーダン・オットはそのTシャツを着て試合後の会見に現れ、「これだけ活躍してくれるなら、毎試合で配布しよう」と冗談を言い、こう続けた。「40得点を挙げただけじゃない。守備ではMVP級の活躍をしているケイド・カニングハムを抑えていた。ディロンの闘志とエネルギーがチームに伝わった。状況判断も良かったし、リバウンドでも身体を張った。そのすべてが今日の勝利に必要だった」
THE BUCKET FOR 40 💥 pic.twitter.com/urqufTmXfX
— Phoenix Suns (@Suns) January 30, 2026
ブルックス本人は、Tシャツが配られたから特別に気合いが入ったわけではないと考えており、「これまでも40得点は可能だったと思うけど、アテンプトが足りなかったり、僕自身が決められなかったり。自分の得意な形でシュートを打ち続ければ、毎試合で30点や40点を取れる」と語る。
それでも『守備の男』が得点でもチームに貢献できる選手へと変わるきっかけを問われて、「昨シーズンのウォリアーズとのプレーオフで、自分も得点できる選手の一人にならなきゃいけないと痛感した。だからオフは今まで以上にシュートを打ち込んだし、トレードが決まった時点で『得点面で存在感を見せる時が来た』と思った」と答えている。
キャリアハイの数字で勝利の立役者になっても、彼の表情や口調は淡々としたものだ。しかし、記念となる試合球を大事そうに抱える姿からは喜びが伝わってくる。「僕は多くの批判を浴びた選手だけど、今もこうして頑張っている。その姿を見せることが、同じような境遇にいる選手のモチベーションになればうれしい」と彼は言った。
いつもは対戦相手にはリスペクトではなく敵意を見せるブルックスだが、この日は少し様子が違った。ピストンズを率いるJ.B.ビッカースタッフとは試合中に挑発の言葉の応酬となっていたが、試合後には固く抱き合う姿があった。
「ルーキー時代のヘッドコーチなんだ。『お前を先発に抜擢したのは俺だ』と言われたから『先発じゃなかっただろ!』と言い返したよ。バックドアのパスを1本通されただけで交代、惨めな気分にさせられたよ。でもそれは冗談で、彼は本当に厳しいコーチだったけど、彼に鍛えられて一つのプレーも疎かにしない選手になれた。彼は僕を息子のように迎え入れてくれた。キャリアの最初で彼と一緒だったことに感謝している」
そして、『ディロン・ザ・ヴィラン』の試合を大歓声で盛り上げたフェニックスのファンにも感謝を忘れなかった。「熱気がすごくて楽しかったよ。主力選手を欠いた中での価値ある勝利であり、あの激しさで戦い続けるモチベーションになった」