「自分の意識が改革されている。当たり前の部分が変わっていると思います」
アルバルク東京は11月のバイウィーク前までリーグ最高勝率(タイ)の12勝2敗と順調なスタートを切った。昨シーズンの中心選手が揃って残留してより成熟度を増したチームは、持ち味であるリーグ随一の堅守を基盤にした、質の高いハーフコートバスケットボールに磨きをかけている。
このスタートダッシュ成功は、先発を務める中心メンバーに加えセカンドユニットの充実ぶりも大きい。実績十分の安藤周人にアルトゥーラス・グダイティス、新加入の大倉颯太もチームスタイルにしっかりフィットしている。そしてもう一人、ベンチメンバーで注目したいのが福澤晃平だ。
昨シーズンにA東京に加入した福澤は、茨城ロボッツ時代の2021-22シーズンに平均12.2得点を挙げたシューターだ。だが、昨シーズンは34試合に出場も、平均6分27秒のプレータイムに留まり、出番の大半は勝敗の決したガベージタイムという試練の1年となった。
しかし、今シーズンは前半からコートに立つなど、ローテーションの一角へと食い込みつつある。福澤が出番を増した一番の理由は、デイニアス・アドマイティスヘッドコーチの求める強度の高いディフェンスを見せられるようになったことだ。福澤本人は、自身のディフェンスに対する変化についてこう語る。「ディフェンスは茨城の時から、ずっと自分の課題だったと思います。それがアルバルク入ってより明確になりました。『これくらいやって当たり前』という基準のところで、自分の意識が改革されている。当たり前の部分が変わっていると思います」
そして「(オフの肉体改造で)身体を変えたことで動けている。去年に比べたらディフェンスは良くなっている実感はあります」と手応えを語るが、「これまでやってきたことが正解というか、良かったとは思います。少しずつ試合に出られていますけど、自分的にはまだまだです」と現状に満足していない。
このように福澤が語るのは、苦い思い出があるからだ。11月6日の横浜ビー・コルセアーズ戦で、福澤は第1クォーター途中に出場したが、求められる強度のディフェンスができなかったことですぐにベンチに下げられ、再び出番が訪れることはなかった。だからこそ福澤は「安堵することはないですね。横浜BC戦では、出てすぐに2回連続でやられて、そこから出られなかったです」と語り、一瞬の気の緩みも許されないのが自分の置かれている立場と危機感を強調する。
「チームが勝つのが一番ですが、自分はいちバスケットボール選手としてやっぱり試合に出たいです。こういう緊迫した状態の中でどれだけ結果を出せるかが、すごく大事だと思います。少しでも油断したら、また同じように出られなくなったりすることも十分にあり得る。安定して出させてもらっているわけではないので、本当に1秒たりとも気が抜けない状況です。そこは自分との戦いでもありますし、気を抜かないで、しっかり頑張っていきたいと思います」
「シューターと結構言われていますけど、シュートだけと思われるは嫌です」
ディフェンスの成長でプレータイムを増やしている福澤は、元々の持ち味である外角シュートでは苦しんでいた。それでも11月9日、10日の広島ドラゴンフライズ戦では、2試合続けて3ポイントシュートを3本成功と結果を残したのは明るい材料だ。
「味方がしっかりノーマークを作ってくれてパスをくれたので、あとは僕が打つだけでした。そこを決められたのは良かったです。ライアン(ロシター)が、一緒に出ている時は『シューターになっていいよ。空いたら思いき打ってほしい』と言ってくれたりもしています」
このように味方のサポートがあってこそのシュート成功と福澤は語る。また、「シューターと結構言われていますけど、シュートだけと思われるは嫌です」と、武器を増やす必要があると続ける。「ドリブル、パスもできるようにならないといけない。自分のサイズでは、最終的にポイントガードもできるようにならないと、リーグのレベルがどんどん上がっていく中で生き残っていけないと思っています」
ちなみに福澤に話を聞いたのは、広島との初戦である9日の試合後だったが、その前に彼はワークアウトを行っていた。しっかりとプレーし、翌日も試合がある中でもシュートを打ち込んだ理由をこう明かす。「最近、自分の中でシューティングの数を思い返すと、絶対数が減っていたので数を増やそうとやっていました。僕の性格的に数をこなしたことを自信にしないといけない。そこは絶対にブレてはいけないところです。僕は根拠のない自信を持てず、これだけシューティングをしたから今日の試合は自信を持ってシュートが打てるというタイプです」
これからシーズンはより過酷なスケジュールとなり、各チームの総合力が問われてくる。その中で、慢心なく研鑽を続ける福澤の存在はより大きくなってくるはずだ。これから彼がデイフェンスに加え、3ポイントシュートなどオフェンスでも存在感を発揮する試合が増えても驚きはない。