桶谷HC「間違いなくコンディションが良くなっています」
琉球ゴールデンキングスは10月13日、アウェーで越谷アルファーズと対戦。高いプレー強度と集中力を40分間継続することで87-59と快勝した。これで琉球は前日の87-65に続く同一カード連勝を達成している。
試合の出だし、琉球はジェフ・ギブス、ティム・ソアレス、カイ・ソットを同時起用するビッグラインナップを先発で使ってきた越谷のフィジカルに苦戦し、オフェンスが停滞してしまう。しかし、ディフェンスで踏ん張ることで14-16と互角の展開で終える。そして第2クォーターに入ると、琉球はこの日24得点を記録したヴィック・ローがトランジションから得点を重ねることでリズムを作り出す。さらに岸本の4点プレーなどビッグプレーも飛び出すことで、このクォーターを25-14と圧倒して9点リードでハーフタイムを迎える。
後半に入っても第2クォーターでつかんだ流れをキープした琉球は、一つひとつのプレー強度と遂行力で越谷を圧倒。第3クォーター終了時点でリードを18点に広げると、第4クォーターでもさらに突き放す危なげない展開で勝利した。
琉球の桶谷大ヘッドコーチは、「試合の内容的に言ったらトントンでも良かった前半で、9点のリードを奪えたのは大きい貯金でした。選手たちが昨日と違ってシュートが入らない時間帯もトランジションディフェンスを頑張ったり、ポストでしっかりファイトしたり、ヘルプで早く寄っていった。そこは昨日の課題から良くなったところで遂行力は素晴らしいと思います」と、内容面でも好感触を得たと総括している。
この試合、琉球の帰化選手アレックス・カークは24分53秒の出場で13得点6リバウンド1ブロックを記録。ジャック・クーリーとのツインタワー、ヴィック・ローを3番起用し、ケヴェ・アルマやクーリーと一緒にプレーする3ビッグなど様々な起用法をなんなくこなし、スタッツに残らない貢献も大きかった。
「昨年のようなリハビリの必要がなく、試合に向けた準備をしてゆっくり休むことができます」
32歳のカークは、2017年から日本でのプレーを続けているリーグ屈指の実績を誇るビッグマンだ。2017-18シーズンにアルバルク東京に加入すると、中心選手としてリーグ連覇に大きく貢献するなど、6年間に渡って在籍した。そして昨シーズンに琉球に加入すると、今年の1月末に日本国籍を取得した。
カークの帰化枠は琉球にとって大きな補強となったが、一方で昨シーズンはカークと外国籍2人を同時起用するビッグラインナップ、クーリーとのツインタワーともにうまく機能したとは言い難かった。それが今シーズンは昨シーズンと比べるとかなりフィットしている。桶谷ヘッドコーチはこの変化の主な要因を「間違いなくコンディションが良くなっています。練習量は去年と変わらないです」と語る。
そしてA東京時代のカークの大きな武器だが、昨シーズンは中々見られなかった外角シュートが増えている理由をこのように見ている。「アルバルクにいた時はピックからのポップが入っていましたが、昨年はシュートフォームが変わっていました。それを元に戻して、夏に帰っこれたのが良いところです。そして今、朝一番早くきてシュートの練習をするなどハードワークを欠かさないでいてくれる。アレックス個人のよい状態がチームにも還元されています」
カーク本人も、コンディションの良さに確かな手応えを得ている。「昨年に比べるとコンディションは良くなっています。昨年は背中の痛みに加え、左足にも少し問題があって十分なトレーニングをするのは難しかったです。でも今は、とても力強く動ける感覚です。昨年よりもよく動けてスーパーハッピーですし、シーズンを通してもっと良くなっていきたいです」
さらに「昨年のようなリハビリの必要がなく、試合に向けた準備をしてゆっくり休むことができます。その部分でも昨年は調整が難しかったです。今は試合でより多くの時間プレーすることで、身体を絞ることもできます」と、体調が問題ないことによる好循環を語っている。
また、シュートフォームについて聞くと、次のようにオフシーズンにじっくりとトレーニングできたことが大きかったと教えてくれた。「A東京の時、多くのシュートを打っていました。それが打つ回数が減っていき、故障からトレーングの量も減ってシュート練習も今までのようにできなくなっていました。その影響か、フォームが変わってしまったところがあったと思います。それが今夏は、ジムにいってシュートマシンで打ち続けることができました。それにより、スムーズに安定した形でシュートを打てるようになっていった結果、フォームが昨年から変化していると思います」
「日本に来た当初のような状態に戻りつつあります」
桶谷HCも言及したように今のカークは、この良い流れをさらに加速させていくためハードワークに励んでいる。そしてトレーニングの質を高めるのに欠かせないのが、アンソニー・マクヘンリーコーチだ。「僕たちには、コーチ・マックという本当に優れたスキルコーチがいます。彼は僕のトレーニングをサポートしてくれていて、日本に来た当初のような状態に戻りつつあります。ミッドレンジのシュート、ドライブにアリウープのダンクを決められるようになっている。引き続き調子を良くしていきたいです」
こうカークは、マクヘンリーへの絶大な信頼を寄せ、日本で長くプレーを続けていた先人への敬意を強調する。「マックは本当に素晴らしいです。彼は琉球だけでなく、日本バスケ界のレジェンドです。また、(今回対戦した越谷の)ジェフ(ギブス)もアルバルク、宇都宮で活躍を続けたレジェンドです。僕も歳をとり、日本で8年目とプレーすることで、彼らの貢献の大きさをより意識するようになりました」
ただ、ファンからすれば、Bリーグ創世記から日本でプレーを続けているカークもレジェンドの域に入りつつある認識だろう。そのことを伝えると、彼は「うーん、自分がレジェンドになってきているかはわらかないよ(笑)。例えば僕がアルバルクから、マックが琉球や信州で受け取ったリスペクトを得られるかはわからない。ただ、日本でできる限りプレーしてより良いキャリアを送りたい」と謙遜する。
今のカークはここ数年、苦しんできたコンディションの悩みから解放されつつある。「今、僕は32歳で背中の手術を3度したセンターなので、コンディションが良い時もあれば悪い時もあります」と慎重な姿勢を崩さないが、同時に確かな自信もある。
「僕たちには素晴らしいスタッフがいて、ウェイティングルームがあり、コーチは体調に気を遣ってくれています。このチームにいることができて幸運です。昔のようにダンクを連発することはできないかもしれないですが、そんなことはどうでもいいです。僕が気にするのは勝利のみです」
琉球は、新戦力の伊藤達哉が開幕戦で右肘を負傷し全治2カ月から3カ月の離脱となった。現在、出場可能なメンバーが10名と限られた中、起用法のバリエーションを広げてくれるカークこそ、少ない人数でタフスケジュールを乗り切るキーマンとなる。
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