お互いのことを思ってのコミュニケーション不足が原因
今でこそトレイルブレイザーズの顔はフランチャイズプレーヤーのデイミアン・リラードだが、彼がドラフトで指名される以前までは、ラマーカス・オルドリッジが中心選手の一人だった。両者は、オルドリッジが2015年のオフにスパーズに移籍するまで3シーズン共闘したのだが、2人の間には微妙なテンションが発生していたと言われている。
その結果、オルドリッジはフリーエージェントになって新天地を求め、ブレイザーズはリラードのチームになった。だが、時を経て、2人は間違いを犯していたことに気づく。リラードもオルドリッジも、互いのことを気遣うあまりに十分なコミュニケーションを取らず、それが微妙な空気を作る原因になったのだ。
『The Athletic』とのインタビューで、リラードは「彼との間には何の問題もなかった。ただ、彼は物静かな性格で、自分は当時若かった。自分は、踏み入ってはいけない領域に足を入れたくはなかったから、彼とはほとんど話さなかった。その結果、彼の周りが色々と言い始めて、彼の思考をコントロールするようになった」と、当時を振り返った。そしてオルドリッジも「彼(リラード)と僕は、周りの人間に自分たちを仲違いにさせてしまった」と悔やんだ。
そんな2人の間を取り持ったのは、以前ブレイザーズに所属したジャマール・クロフォードだった。リラードのことも、オルドリッジのことも認めているクロフォードは、クリッパーズに所属した2016年12月にブレイザーズと対戦した際、2人が話をすれば問題は解決するとリラードに伝え、オルドリッジにもメールで同じ旨を伝えたという。そしてリラードとオルドリッジは、簡単なメールのやり取りから始めた。コミュニケーションを重ねるに連れて、2人はお互いが真面目な性格だということを知り、電話で話をするまでに。そして、勘違いが互いの関係をこじらせたことに気が付いた。
オルドリッジは、リラードが新人としてチームに加わった時の心境を、こう語った。
「自分はベテランだったのに、新人の彼に上手に接してあげられなかった。自分は、彼の成長を妨げることはしたくなかった。嫌っているとも思われたくなかったから、何も言わなかったんだ。でも、それが間違っていた。彼は先輩からのガイダンスを好む選手で、兄のような存在が欲しかったと言っていたよ」
NBA1年目から台頭したリラードも、オルドリッジを気遣っていたことを告白している。
「自分は彼に、チームを引っ張るつもりがないことを知ってもらいたかった。自分は、誠実な人間ではないと周りに思われたくなかった。だから、もし彼に『このチームを引っ張るのは俺じゃない。リーダーは君だ。気分を害するつもりはないよ』と言ったとして、それで試合終盤にハドルで『ボールをくれ』と言ったら、どう思われていたか。何というか、リーダーになる気はなくて、彼のサポート役になれたら、というようなことを上手く伝えられなかった。当時こういう話をして、彼が本当に理解してくれたかどうか分からない。だから、何も言わなかったんだ」
数年ぶりに話をするようになって、2人はお互いにリスペクトの気持ちを持って接していたことを知った。繰り返しになるが、コミュニケーションの不足が、彼らにとって最大の過ちになってしまったのだ。
リラードは「電話で話せて良かったし、彼も自分も、お互いの本当の気持ちを伝えられた。話の最後の方には、『なぁ、戻って来ないか?戻って来なよ』と言えるまでになっていたよ」と言う。そしてオルドリッジも「これから先、どうなるかなんて誰にも分からないけれど、もし当時からコミュニケーションを取れていたら、結果は違っていた。今のように話せていなかった時期に歴史を変えられていたかもしれないと思うと、残念でならないよ。でも、あらゆる事象には理由が存在するわけで、彼はチームリーダーとして花を咲かせた。彼には、いつか(ブレイザーズに)戻って、キャリアを終えたいと伝えているんだ。また一緒にやることを話し合っているんだ」と、呼応している。
今年2月のオールスターゲームでは、チーム・レブロンの一員として久しぶりに共闘。「今年のオールスターウィークエンドでは、自分たち2人が誰よりも繋がっていたと思う」とリラードが言えば、「彼と一緒にいるのが自然なことだと思ったし、ロッカールームでジョークを言い合っていたよ。彼とのピック・アンド・ロールの話で笑い合ったり、また一緒にやりたいねってね」と、オルドリッジも充実した時間を振り返った。
オルドリッジは、2020-21シーズンまでスパーズとの契約が残っている。つまり、早くても36歳になる2021年までブレイザーズ復帰は実現しない。その時にリラードは31歳で、全盛期の真っ最中だろう。オルドリッジが良好なコンディションを維持していれば、2年後のオフ、彼らが再び同じチームでプレーする可能性もある。
もし、2人のデュオが解散に至っていなかったら、どうなっていただろう?だがおそらく、もし2人が共闘を続けていたら、今のリラードも、今のオルドリッジもない。
リラードにはブレイザーズを離れる意思がないため、復帰が実現するかはオルドリッジと球団次第。気の早い話だが、このエピソードを知って、2年後のオフが楽しみになった。